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小型セラミックガスタービン

[コードNo.03NTS075]

■体裁/ B5判 上製 432頁
■発行/ 2003年 5月26日
(株)エヌ・ティー・エス
■定価/ 29,920円(税込価格)


セラミックス技術者とガスタービン技術者の交流から生まれた新たな知見を詳解した決定版。
高効率で低CO2排出・低NOx排出を実現するエンジン開発の全貌を網羅し、さらに現場の研究者・技術者による開発秘話を臨場感あふれる座談会に収録。


発刊にあたって

 1988年から1999年にかけて我が国では2つのセラミックガスタービンの研究開発プロジェクトが実施された。 1つは300kWのコージェネレーション用および可搬式発電用のセラミックガスタービンに関するものであり, ほかの1つは100kWの自動車用セラミックガスタービンに関するものである。
 ガスタービンは,もともと熱機関の特性として,タービン入口温度(サイクル最高温度)が高くなるほど熱効率が高くなるという特徴を有している。 大出力の大型ガスタービンでは,今日,このタービンの高温化は高級な耐熱金属材料と高度な空気冷却により達成されている。 これに反して,小出力の小型ガスタービンでは,小型であるがゆえにタービンに複雑な内部構造を有する高級な空気冷却法を適用することができず, したがって高温化が困難であるため,低い熱効率の値にとどまるというのが従来の常であった。
 セラミックガスタービンは,ガスタービンの高温部材として,高温で強度の高いセラミックスを用いることによって無冷却でタービン入口温度の高温化を実現し, これによって熱効率を飛躍的に高めようとするものである。 しかし,このためには優れたセラミック材料とセラミック部品の製造技術の開発が必要であり, また高温で強度が大きいかわりに脆性であるというセラミックスの特性に適合したガスタービン設計技術の開発が必要であった。
 このようなガスタービンが開発されれば,それは当然全地球的な要請である排出の低減に貢献するであろうし, またガスタービンの特性としてNOx排出の低減や燃料多様化の要請にも対応しやすいという特徴をもっている。
 我が国におけるガスタービン高温構造材としてのセラミックスに対する関心は,1978年にスタートした通商産業省工業技術院(当時)のムーンライト計画による 「高効率ガスタービン」のプロジェクトに始まる。 その後,通商産業省工業技術院は別の研究開発制度による「ファインセラミックスの研究開発」を経て, さらに1985年から1988年ごろにかけていくつかの予備的な調査研究を実施したのち,ムーンライト計画(のちにニューサンシャイン計画に制度変更)の一環として, 1988年に前述のコージェネレーション用及び可搬式発電用の300kWセラミックガスタービンの研究開発を新エネルギー・産業技術総合開発機構を実施機関としてスタートさせた。 ガスタービンとしてはタービン入口温度1,350℃,熱効率42%という画期的に高い目標が掲げられた。 計画は当初9年間の予定でスタートしたが,途中で2年間延長されて1999年3月に目標を達成して終了した。
 一方,調査研究の段階では並行して検討されていた100kWの自動車用セラミックガスタービンの研究開発は,石油産業活性化センターにおいて1988年および1989年の2年間, さらに詳細な調査研究が行われたのち,1990年に同じ通商産業省ながら資源エネルギー庁からの石油産業活性化センターに対する7年間の補助事業として開始された。 そして,このうちエンジンシステムの試作研究は,タービン入口温度1,350℃,熱効率40%を目標として日本自動車研究所が担当し,1997年3月にほぼ目標を達成して終了した。
 これら2つのプロジェクトの経過および成果はすでに多くの成果報告書,評価報告書や学会発表論文などに公表されているが, 本書でもその主要なものを巻末に付録として掲載している。
 概して,この両プロジェクトは非常によい成果をあげて終了したということができよう。 すなわち,300kW2機種,100kW1機種の合計3機種のセラミックガスタービンは, ともに計画された全セラミック部品を組み込んだ状態でタービン入口温度1,350℃の運転試験が実施されるにいたっており,熱効率も機種によって42%の開発目標を達成, あるいは目標に一歩及ばなかったとしても35%前後という結果を得て,無冷却で高温・高効率のセラミックガスタービンというものの技術的成立性を実証した。 ここに得られた熱効率の値はこの出力クラスのガスタービンとしては世界最高レベルのものであり, またこの研究開発に先行して行われた欧米のセラミックガスタービンの試験研究が多くはエンジンとしての運転にすらいたらなかったことなどを考えあわせると, 我が国のこの成果は世界に誇るに足るものであろう。
同時にセラミック燃焼器によるNOx排出低減に関しても非常によい成果が得られている。
 しかもこの間,次第に優れたセラミック材料が供給されるようになるとともに,セラミック部材の製造技術やセラミックスを用いるためのガスタービン設計技術もおおいに進歩した。 大型部品や大きさの割に薄肉の部品,複雑な形状のセラミック部品も作られるようになった。 非常に高い形状精度の要求にも応えられるようになった。 セラミックスと金属の接合技術や嵌合技術,セラミック部材間のシール技術,セラミックばねを用いる弾性支持構造,アブレーダブルシールの適用など, セラミックスの特性に適合した設計手法にも著しい進歩があった。
 以上のごとく今回のプロジェクトはたしかに優れたセラミックスを生み出し,またエンジンとしても世界をリードする性能を実証した。しかしながら, この成果を実用につなげるためにはセラミック材料やガスタービンシステムの長時間信頼性の確立とセラミック部材のコスト低減という, 非常に重要であるとともに困難な課題が残されている。

 本書は日本ガスタービン学会に設けられた「小型セラミックガスタービン」編集委員会の企画のもとに,上記の研究開発に直接関与した研究者・技術者の手によって, プロジェクトの経過と成果を振り返り,さらに将来への期待を込めて執筆されたものである。
 我が国の300kWおよび100kWのセラミックガスタービンのプロジェクトが世界に誇る立派な成果をあげて終了してから今日まですでに約4年を経たが, 残念ながらその後,セラミックガスタービン,特に小型セラミックガスタービンの具体的な研究開発の動きは,国内的にも世界的にもあまりみえていない。
 このような時期にあたり日本ガスタービン学会は,現時点で最も技術的に進んでいる我が国の小型セラミックガスタービンの技術を, 単にプロジェクトの成果だけではなく開発途上に得られた知見などをも含めて,1冊の記録にまとめて出版することはきわめて重要であり, また意義深いことであろうと考えるにいたった。 ここには,予想されるマイクロガスタービンのセラミック化も含め,小型から大型にいたるすべてのガスタービンにおけるセラミックスの利用において, この技術を有効に役立てたいという願いも込められている。
 この方針にしたがって,本書ではそれぞれの担当者にそれぞれの分野での開発経過,設計にあたっての考え方,開発途上の改良事項,問題点とその対応策などを書いていただき, それらをエンジン全体および圧縮機,タービンなどの各構成要素ごとに,なるべく機種間の相違を超えた共通技術としてまとめるように試みた。 また,この分類ごとに関連する各担当者間で座談会を開いていただき,上記の各事項その他についてフランクに話し合ってもらった。 そして,この座談会の内容には公表された資料にはない貴重な意見や知見などが含まれているので,なるべく詳細に収録することにした。
 本書が今後,セラミックガスタービンの開発に役立てば幸いである。
                                        2003年5月   監修者 東京大学名誉教授 高田 浩之


(社)日本ガスタービン学会編


監修・編集顧問

高田 浩之 東京大学名誉教授

編集委員長

伊藤 高根 東海大学

編集幹事

西山  圜 (元)(株)豊田中央研究所

編集委員

江田 隆志 住友精密工業(株)
佐々  正 石川島播磨重工業(株)
佐々木正史 北見工業大学
島森  融 日本特殊陶業(株)
巽  哲男 川崎重工業(株)
筒井 康賢 (独)産業技術総合研究所
鶴薗 佐蔵 京セラ(株)
中澤 則雄 筑波技術短期大学
山本  力 日本ガイシ(株)
吉識 晴夫 東京大学

執筆者(五十音順)

青柳  稔 石川島播磨重工業(株)
伊地知伸彰 石川島播磨重工業(株)
和泉 隆夫 日産自動車(株)
伊藤 勝規 石川島播磨重工業(株)
伊藤 高根 東海大学
江田 隆志 住友精密工業(株)
大久保陽一郎 (株)豊田中央研究所
奥戸  淳 川崎重工業(株)
小野 博基 石川島播磨重工業(株)
川久保知己 石川島播磨重工業(株)
木村 武清 川崎重工業(株)
斎藤  司 石川島播磨重工業(株)
佐々  正 石川島播磨重工業(株)
佐々木正史 北見工業大学
島森  融 日本特殊陶業(株)
杉山 勝彦 (株)豊田中央研究所
高田 浩之 東京大学名誉教授
竹原 勇志 川崎重工業(株)
田岡 智毅 石川島播磨重工業(株)
龍澤  正 石川島播磨重工業(株)
巽  哲男 川崎重工業(株)
筒井 康賢 (独)産業技術総合研究所
鶴薗 佐蔵 京セラ(株)
東部 泰昌 川崎重工業(株)
中澤 則雄 筑波技術短期大学
西山  圜 (元)(株)豊田中央研究所
山本  力 日本ガイシ(株)
吉識 晴夫 東京大学
吉田 祐作 (財) 日本自動車研究所
芳村 幸宏 石川島播磨重工業(株)

詳細目次

第1章 セラミックガスタービンの開発経過
1. 欧米における開発経過  1.1 米国における開発経過  1.2 欧州における開発経過   1)ドイツにおける開発経過  2)スウェーデンにおける開発経過   3)AGATAプログラム 2. 日本における開発経過  2.1 ファインセラミックスに関する開発プロジェクトの概要   1)「ファインセラミックス」のプロジェクトにいたるまで   2)次世代産業基盤技術「ファインセラミックス」プロジェクト   3)「シナジーセラミックス」プロジェクト  2.2 コージェネレーション用300kW CGTプロジェクトの概要   1)プロジェクトの発足    2)中間評価   3)研究開発成果の概要  2.3 自動車用100kW CGTプロジェクトの概要   1)エンジンシステムの開発  2)関連技術の開発
第2章 小型セラミックガスタービンの技術
1. エンジン技術  1.1 まえがき  1.2 CGT301   1)基本設計  2)エンジン試験  3)まとめ  1.3 CGT302   1)基本設計  2)エンジン試験  3)まとめ  1.4 100kW CGT   1)基本設計  2)エンジン試験  3)まとめ  1.5 座談会’CGTエンジン開発秘話  1.6 まとめ 2. 圧縮機技術  2.1 まえがき  2.2 CGT301圧縮機   1)開発目標              2)圧縮機形式の選定   3)各段の開発(空力設計,強度設計)  4)試験・評価   5)まとめ  2.3 CGT302圧縮機   1)開発目標   2)開発の進め方と経緯   3)設計   4)試験・評価  5)まとめと課題  2.4 100kW CGT圧縮機   1)開発目標   2)開発の進め方   3)設計   4)試験・評価  5)まとめと課題  2.5 座談会’CGT圧縮機開発秘話  2.6 まとめ 3. タービン技術  3.1 まえがき  3.2 CGT301タービン   1)開発目標     2)設計の考え方     3)設計   4)製造・組み立て  5)試験・評価  3.3 CGT302タービン   1)開発目標     2)開発の進め方と経緯  3)設計   4)試験・評価    5)まとめと課題  3.4 100kW CGTタービン   1)開発目標     2)開発の進め方と経緯  3)設計   4)試験・評価  3.5 座談会’CGTタービン開発秘話  3.6 まとめ 4. 燃焼器技術  4.1 まえがき   1)CGT用燃焼器の開発課題   2)低NOx燃焼技術  3)セラミックス適用技術   4)触媒燃焼技術       5)本章の構成  4.2 CGT301燃焼器   1)開発課題と開発ステップ  2)燃焼器の特徴と構成   3)燃焼特性         4)まとめと残された課題  4.3 CGT302燃焼器   1)研究開発概要   2)技術課題   3)低NOx燃焼器   4)研究開発の成果  5)まとめと残された課題  4.4 100kW CGT燃焼器   1)開発課題          2)PPL燃焼器の構成   3)排気性能          4)その他の要求性能   5)セラミックス化と耐久性能  6)アドバンスPPL燃焼システム   7)将来に向けた技術課題  4.5 触媒燃焼器 (1)触媒燃焼技術の開発   1)まえがき     2)実験装置と実験方法   3)燃焼特性     4)排出特性    触媒燃焼器 (2)複合触媒燃焼器の開発   1)研究開発概要   2)技術課題   3)低NOx燃焼器   4)研究開発の成果  5)まとめと残された課題  4.6 座談会’CGT燃焼器開発秘話 5. 熱交換器技術  5.1 まえがき  5.2 CGT301熱交換器   1)仕様・設計  2)製造・組み立て  3)試験・評価  4)技術課題  5.3 CGT302熱交換器   1)仕様・設計    2)試験・評価  5.4 100kW 熱交換器   1)仕様・設計    2)試験・評価  5.5 座談会’CGT熱交換器開発秘話  5.6 まとめ
第3章 セラミック材料と部品化の技術
1. まえがき 2. CGT301セラミック部品  2.1 タービン動翼   1)CGT301動翼の開発目標   2)高圧段動翼の開発   3)低圧段動翼の開発     4)耐異物衝撃性の評価   5)耐エロージョン性の評価  6)耐水蒸気腐食性の評価  2.2 セラミック熱交換器   1)伝熱管   2)多孔管板   3)熱交換器ブロック 3. CGT302セラミック部品   1)材料の選択と適用        2)セラミックスの適用部品   3)各種セラミック部品の開発経緯  4)評価試験(スピンテスト) 4. CGT303セラミック部品   1)スクロール  2)ガスジェネレータータービン(GGT)ローター 5. 100kW CGTセラミック部品  5.1 セラミック部品の評価   1)静止部品の強度評価  2)タービンローターの強度評価  5.2 タービンローター   1)はじめに   2)1次設計ローターの回転強度評価   3)各種窒化珪素材料の円盤形状での評価と新材料の開発   4)1次設計ローターの破壊起点調査   5)2次設計ローターの開発と評価 6. エンジン技術者からセラミックス技術者への要望 7. セラミックス技術者からエンジン技術者への要望
第4章 小型セラミックガスタービン技術のまとめ−実用化に向けて
1. CGT研究開発技術はどこまで進んだか  1.1 セラミックスの適用で,小型ガスタービンの性能は本当によくなるか?   1)エンジン熱効率   2)排気特性  1.2 「もろい」といわれるセラミックスは,ガスタービンエンジン用部材として     本当に使えるのか?   1)設計技術  2)強度,信頼性  3)FOD問題  4)検査技術,評価技術  1.3 セラミックスは製造,加工がしにくいといわれているが,    どの程度の部品が製造できるのか?   1)部品形状,大きさ   2)寸法精度  1.4 セラミックスは,長時間の使用に耐えられるか?  1.5 どの程度の温度まで使えるか? 2. 実用化に向けて  2.1 国内,国外のCGT研究開発の現状   1)国内での開発状況   2)米国での開発状況   3)欧州における現状  2.2 小型CGTの実用化に向けて
関連文献一覧
索引



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