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感覚重視型技術の最前線
〜心地良さと意外性を生み出す技術〜  
 
Frontier of Sensation-oriented Technology - Creation of Comfort and Amusement -
[コードNo.2018T072]

※ 本書籍はご試読頂けません ※

■監修/ 秋山庸子
■体裁/ B5判 218ページ
■発行/ 2018年3月13日 (株)シーエムシー出版
■定価/ 77,760円(税・送料込価格)
■ISBNコード/ 978-4-7813-1322-1

 
★今注目の「触感」「心地良さ」を追求した研究開発!
★五感のメカニズムを徹底解明!
★感覚の評価や計測に基づいたものづくり・ことづくりを紹介!

キーワード

感覚重視型技術 / 五感 / 快・不快 / 感覚のオノマトペ / 触覚 / 心地良さ / 感性設計 / 福祉工学


刊行にあたって

 近年のデジタル社会では、大量の電子情報を遠隔で送受信することが可能になった、このことにより、物や人の実感が湧かないまま互いに繋がり合い、自由に情報をやり取りすることができる世の中になってきている。それに対して、人間の感覚すなわち視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚等は、究極のアナログ情報であるといえる。感覚受容器が受け取るこれらの刺激のアナログ情報は脳内で処理されるが、ほとんどの情報はアウトプットされることなしに各個人の脳内にとどめられ、その中のごく一部が感覚的な言葉で表現されるのみである。しかし、人間はこれらの感覚なしには生きているという実感を伴った生活を営むことはできない。逆に考えれば、もしも何らかの事情により電子情報が一切やり取りできなくなったとしても、五感を頼りに心身共に豊かな生活を送ることができるであろう。これは、人が生活していくうえで感覚がいかに重要であるかということを示している。

 本書は、このようなアナログ情報である感覚の重要性を再認識することから出発し、工学的観点からこれを捉えようとするものである。今回は感覚の中でも特に触覚に重点を置いている。この理由は3つ挙げられる。まず、人の感覚の中で最も定義や数値化が困難な感覚であるため。次に、現在の情報通信技術においては視聴覚情報のやり取りが先行しており、それに続くものとして触覚情報のやり取りが期待されているため。最後に、人は日常の生活環境の中で、室内の温度、明るさ、音、食事、香りには配慮していても、手ざわりに気を配ることはあまりない。しかしこの触覚にこだわりを持つことで、より生活を豊かにすることができると考えられ、現在幅広い業界で注目されている分野であるためである。特に現代のストレス社会、超高齢社会では、五感のすべてに対して日常的に心地よい刺激を与えることが、快適な生活を送るうえで重要であると考えられる。デジタル情報とアナログ情報の混在した環境で心地よく、さらには楽しく生活するためにはどのような要素技術が必要かということに焦点を当て、“心地よさと意外性を生み出す技術”という副題とした。

 第I編ではまず人間の持つ五感のメカニズムと、その中での各感覚の位置づけ、および快・不快との関係について取り上げた。第II編では、オノマトペや形容詞などの言葉で表される感覚の定量化の手法、さらには人の感覚をセンサーとして高度な計測を行う試みについて取り上げた。第III編では、感覚を人工的に作る、あるいは他の感覚で特定の感覚を代替する取り組みについて取り上げた。最後に第IV編では、様々な分野における、感覚に着目した材料や生活環境の設計について取り上げた。対象となる感覚や製品が多岐にわたり、それぞれの分野における感覚の評価や計測の方法が異なるため、ここではできる限り幅広い分野を網羅できるようにした。

本書のテーマである感覚重視型技術、すなわち感覚を計測・制御する技術は、例えば物理学のように汎用的な基礎理論や法則がまだ存在しない。すなわち、ある基礎的な理論や法則を見いだして、それをさまざま感覚や対象に応用できるようなればよいのであるが、現状ではそこまで至っていない。そのため総論となる第I〜III編に対して、各論である第IV編に多くのページを割く形となっている。その分、実例が多く、具体的なヒントが多く得られる書籍となったが、本書を礎として、あらゆる感覚や対象を網羅する基本的な概念を作り上げたいと考えている。

 また今回の構成は、大阪大学大学院工学研究科環境・エネルギー工学専攻博士前期課程の「福祉工学」の講義での学生のディスカッションを通じた感覚重視型技術の系統化が土台になっており、そこから触覚に焦点を当てた構成に練り直したものある。引き続きこのような議論を学生と継続することで、感覚とそれに関わる技術の系統化を進めていきたいと思っている。

最後に、本書の発行にあたりご多忙の中ご協力くださいました執筆者の先生方と、このような新しい概念の書籍を出版する貴重な機会をくださいましたCMC出版の皆様に心より感謝申し上げます。

大阪大学
秋山庸子

著者一覧

秋山庸子大阪大学
岩村吉晃東邦大学
坂本真樹電気通信大学
渡邊淳司日本電信電話(株)
早川智彦東京大学
望山洋筑波大学
藤本英雄名古屋工業大学
岩木直(国研)産業技術総合研究所
原田暢善フリッカーヘルスマネジメント(株)
山口明彦東北大学
近井学(国研)産業技術総合研究所
井野秀一(国研)産業技術総合研究所
石丸園子東洋紡(株)
金井博幸信州大学
早瀬基花王(株)
松江由香子クラシエホームプロダクツ(株)
西村崇宏国立特別支援教育総合研究所
土井幸輝国立特別支援教育総合研究所
藤本浩志早稲田大学
長谷川晶一東京工業大学
三武裕玄東京工業大学
井上真理神戸大学
仲村匡司京都大学
木村裕和信州大学
岡本美南TOTO(株)
白井みどり大阪市立大学
瓜ア美幸淀川キリスト教病院
山本貴則(地独)大阪産業技術研究所
山田憲嗣大阪大学
武田真季大阪大学
大野ゆう子大阪大学

目 次

【第I編 感覚のメカニズム】
第1章感覚の分類と触覚
1はじめに
2触覚、特殊感覚、一般感覚、体性感覚
2.1アリストテレスの五感と触覚
2.2Weberの触覚と一般感覚
2.3感覚点の研究に始まる皮膚受容器同定の試み
2.4体性感覚
3体性感覚の生理学
3.1触圧覚の受容器
3.2温度受容器と痛覚受容器
3.3皮膚の無毛部と有毛部
3.4深部感覚
3.5深部受容器
3.6自己受容感覚、固有感覚
3.7運動感覚
3.8単一神経活動電位記録による皮膚受容器の同定
3.9体性感覚を伝える末梢神経の種類と伝導速度
3.10Microneurogramにより同定されたヒトの触覚受容器
3.11原始感覚と識別感覚:Headの2元説
3.12識別感覚の中枢
4無髄(C)線維の生理学:快楽的(hedonic)触覚
4.1無髄(C)線維の活動電位記録
4.2ヒトの触覚にかかわる無髄線維活動の記録と同定
4.3ヒトの触覚にかかわる無髄線維興奮の最適刺激
4.4有毛部の低閾値無髄線維の役割:有髄線維を失った患者での観察
4.5触覚を伝える低閾値無髄線維は島皮質に投射し、体性感覚野には投射しない
4.6GLでは島皮質が厚くなり、体性感覚野が薄くなっている
4.7快楽的触覚を処理する脳部位は島
5おわりに
第2章五感と快不快
1感覚を表すオノマトペ
2オノマトペの音に反映される手触りの快不快
3食べたり飲んだりした時の感覚もオノマトペの音に反映される
4オノマトペの音に反映される手触りと味の快不快の共通性
5オノマトペの音から感覚的印象を推定するシステム
【第U編 感覚をはかる・感覚ではかる〜計測技術】
第3章感覚のオノマトペと官能評価
1感覚イメージとその表象
2オノマトペによる触り心地の可視化
3触覚オノマトペの分布図の作成
4オノマトペ分布図と想起される素材・質感
5オノマトペ分布図の音韻論による分析
6オノマトペの分布図を利用した触相図の作成
7触相図の利用法
第4章快・不快をはかる〜触覚の官能評価と物理量の関係〜
1快・不快とは
2触覚の快・不快の決定因子の検討
3触覚を表す言葉と触対象の系統化
3.1触覚を表す言葉の快・不快への分類
3.2触対象の系統化
4快・不快と物理量の関係づけ
4.1触対象による快・不快の官能評価の特徴
4.2快・不快と物理量の関係
5快・不快の物理モデル構築と妥当性評価に向けて
第5章触覚ではかる
1はじめに:微小面歪の検出
2触覚コンタクトレンズ
3Morphological Computationという視点
3.1Morphological Computationとは
3.2Morphological Computationとしての触知覚
3.3ゴム製人工皮膚層メカトロサンド
3.4典型例としてのひずみゲージサンド
4ひずみゲージサンドによる微小面歪検出
4.1ひずみゲージサンドの基本特性
4.2機械学習の利用
5おわりに
第6章視覚ではかる―ちらつき知覚の変化に基づく簡易疲労計測技術―
1はじめに
2ちらつき知覚のコントラストによる変化を用いた疲労検査
3強制選択・上下法によるちらつき知覚閾値の決定方法
4ネットワークを用いた日常疲労計測のためのプロトタイプシステム
5まとめ
【第V編 感覚をつくる・つかう〜提示・代行技術〜】
第7章ロボットハンドへの触覚導入
1はじめに
2ロボットハンドで使われている触覚センサ
2.1光学式触覚センサ
2.2触覚のモダリティ
3触覚センサを搭載したロボットハンドの応用事例
3.1触覚センサを使った対象物・環境認識
3.2触覚センサを使った物体操作
4触覚は本当に必要か?
4.1触覚と行動学習
5オープンソース触覚センサプロジェクト
第8章感覚代行
1はじめに
2感覚代行研究の歴史
3視覚に障害がある人たちへの福祉技術(視覚の代行技術)
4聴覚に障害がある人たちへの福祉技術(聴覚の代行技術)
5楽しみを分かちあう福祉技術
6おわりに
【第W編 感覚を重視したものづくり・ことづくり〜生活環境設計からロボットまで〜】
第9章繊維製品における心地良さの計測技術
1はじめに
2心地良いと感じられる商品の開発手法
3熱・水分特性に関する心地良さの数値化
4肌触りに関する心地良さの数値化
5圧力特性に関する心地良さの数値化
6生理計測による心地良さの数値化
7おわりに
第10章健康と快適を目指した衣服における感性設計・評価
1はじめに
2熱中症リスク管理に貢献するスマート衣料の開発
2.1産学連携による包括的な課題解決策の提案
2.2実効性を担保する設計・評価サイクルの実践
3肥満症予防を目指した運動効果促進ウェアの開発
4高機能ウェア開発における「着心地」という障壁
第11章感性を考慮したスキンケア化粧品設計
1はじめに
2感性価値の評価
3感性価値を化粧品へ付加するために必要な処方ポイント
3.1五感へアプローチする方法
3.1.1視覚へのアプローチ
3.1.2嗅覚へのアプローチ
3.1.3触覚へのアプローチ
3.2意識へアプローチする方法
4おわりに
第12章ヘアケア製品における感性設計―シャンプーのなめらかな洗いごこちを生み出す技術―
1シャンプーの基本機能
2シャンプーの組成
3心地良さを感じる機能
4なめらかな指どおりとは
5なめらかな指どおりを生み出す技術
6コアセルベート
7反力積分値による毛髪すべり性測定
8シャンプーの感性機能設計
9今後の展望
第13章ユーザの特性に合わせた操作しやすいタッチパネル情報端末のGUI設計
1はじめに
2ユーザの特性評価と設計への応用
2.1ユーザの身体寸法を考慮したGUI設計
2.2画面表面での指先の滑りやすさを考慮したGUI設計
2.3操作方法や手指の姿勢を考慮したGUI設計
3タッチパネル情報端末のアクセシビリティ
4おわりに
第14章柔らかいロボットの開発
1はじめに
2人を傷つけず、自らが壊れないロボット
2.1力や圧力を拡大する機構
2.2慣性力
2.3コンプライアンス性の高い関節、ロボット
2.4全体が柔軟な機構
3ぬいぐるみによる屈曲機構
3.1素材等の選定
3.1.1綿
3.1.2
3.1.3
3.1.4外皮とクッション
3.1.5糸を巻き取るアクチュエータ
3.2糸の組み合わせと配糸
3.3長軸回りの回転関節
3.4繰り返し精度と提示可能な力の範囲
4ぬいぐるみロボットの制御
4.1計測データに基づく運動学・逆運動学計算
4.2力制御
4.2.1力計測
4.2.2制御計算の分散処理
5ぬいぐるみロボットの動作生成
5.1キーフレームの再生
5.2外界センサ入力に応じた動作生成
6ぬいぐるみロボットの機能と性能
6.1運動性能と力制御の効果
6.2耐久性
7今後の展望
第15章自動車における感性設計
1はじめに
2布の触感
2.1人の皮膚特性と布の特性
2.2触感の主観評価
2.3布の触感の客観的評価に用いられる物理特性
2.4客観評価式
3自動車シート用材料の触感
3.1試料と主観評価
3.2主観評価
3.3物理特性の測定
3.4主観評価結果
3.5物理特性と主観評価の関係
3.6既存式(秋冬用紳士スーツ地)の客観評価式への応用
3.7シート用材料の客観評価式の誘導
3.8評価式を用いた客観評価と主観評価との関係
3.8.1秋冬用紳士スーツ地の既存式による客観評価
3.8.2誘導された自動車シート用皮革の式による客観評価
4おわりに
第16章木材の見えの数値化と印象評価との関係
1はじめに
2画像解析による材面の特徴抽出
3木質床材の外観特性の抽出と表現
3.1木質床材の収集
3.2材鑑画像の取得
3.3画像解析
3.4画像特徴量の設定
4材面の印象評価
5おわりに
第17章住環境の快適条件―温熱環境と音環境―
1住環境の快適条件
2住環境の温熱的快適性
3居住空間における快適な音環境
第18章住環境における感性設計(浴室用シャワーヘッド)
1背景、目的
2シャワー吐水の浴び心地に影響する心理的要因の分析
2.1評価形容語の抽出
2.2浴び心地に対する心理構造の分析
3シャワー吐水のすすぎやすさに対する心理構造分析
3.1実験@ すすぎやすさとすすぎ時間の関係検証
3.2実験A すすぎやすさの心理構造分析
3.3すすぎ時のシャワー水流観察
3.4すすぎやすさを高める心理的、物理的要因の考察
4おわりに
第19章認知症高齢者の「心地良さ」と環境づくり
1はじめに
2認知症高齢者の特徴
2.1認知症とは
2.2認知症の症状
2.2.1中核症状
2.2.2BPSD
2.3加齢に伴う変化
3認知症高齢者の環境づくりに関する研究
3.1認知症高齢者の環境づくりの意義・目的
3.2認知症高齢者への環境支援のための指針(PEAP日本版3)
3.3環境づくりに関する介入研究の紹介
3.3.1事例1
3.3.2事例2
4おわりに
第20章褥瘡予防寝具に求められる性能―シープスキン寝具の検討例―
1はじめに
2倫理的配慮
3高齢被験者による実証実験と官能評価
4高齢被験者から得られた仙骨部接触圧および組織血流量と官能評価の関係
5高齢被験者の身体的特徴と仙骨部接触圧および組織血流量との関係
6おわりに
第21章看工融合領域におけるロボットによる心地良さへの試み
1はじめに
2看工融合領域
3看工融合領域とロボット
3.1洗髪ロボット
3.2心地よさを評価するポイントについて(洗浄効果に着目)
4おわりに



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