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有機EL素子とその工業化最前線

[コードNo.01NTS007]

■体裁/ B5判 上製 320頁
■発行/ 1998年11月30日
(株)エヌ・ティー・エス
■定価/ 46,640円(税込価格)


有機EL素子の基礎から応用までを解説した、研究者必携書籍。
寿命・効率・色調・ファブリケーションプロセスなど改良する点を明らかにし、それらを克服可能な知見を紹介する。


有機EL素子発刊によせて

 マン・マシーンインターフェイスとしての表示素子デバイスの重要性は,今まで以上に大きくなってゆくと考えられる。 この流れは大別して2種に分類される。一つは公共の場や家庭内における表示デバイスである。 例えばテレビジョンに代表されるものであるが,これは大画面,高品位化への指向である。 一方は今後爆発的に伸びる分野で,パーソナルユーズである。 この場合はコンパクトで軽いという特徴が必要不可欠である。
 いわゆるテレビと呼ばれているCathode Ray Tube(CRT)は高真空下で電子を蛍光物質に当てることにより発光させている。 したがって大画面とするためには電子の振れ角を大きくする必要がある。 この角度は磁気的に制御されるがそれにも限度があるので,大型化するためには奥行きを深くする必要がある。 この場合CRTの設置面積が必然的に大きくなる。 その結果CRTの全表面積が大きくなる。 大気下では約1Kg/cm2の圧力がかかっているので莫大な力がこれに加わる。 これに対抗するためにCRTを構成しているガラスを厚くする必要があり,その結果一人ではとても持てない重さとなる。 これを支える台なども強くしなければならず,トータルとしての資源を多量に使うことになる。 また電力の消費量も多くなる。

 これらの問題を解決するものとして最近プラズマディスプレイが高品化された。 大画面薄型であるが作製上の問題から価格が小型自動車一台分にも相当し,普及にはコストダウンが必要である。 また消費電力の低減にも問題を残している。 極く最近新しい表示デバイスとしてフィールドエミッションタイプのものが発表されている。 これには電子銃が用いられるがそこにカーボンナノチューブが大変有望視されている。
 一方パーソナルユーズとしての表示デバイスには液晶ディスプレイが盛んに用いられている。 これは今後も伸びると思われるが光源としては細い蛍光灯が使われている。 これには偏光板や液晶素子,カラーフィルター他,その他各種のフィルムが用いられているので,光線利用効率が極めて悪いという点がある。 実際ポータブルコンピューターにおいて電池の消費の大部分は表示のために消費される。

 これらすべての問題点を解決できる可能性があるのが有機電界発光(EL)素子である。 もともとEL素子に関する研究は硫化亜鉛のような半導体に交流電場を印加して発光させる方式に関するものであった。 この場合発光輝度が低い,高電圧印加が必要,発光色が自由にできないなどの問題で現在あまり研究がなされていない。
 1977年に後に詳しく述べられているようにコダクス社のTang博士らが複数の有機薄膜を重ねたいわゆる機能分離形EL素子が低い直流電圧で高い発光輝度を示す と報告して以来世界各地で研究されるようになった。
 有機材料としては欧米においては主として導電性高分子が,日本では色素薄膜又はこれらを高分子に分散した系がよく研究されている。 当初は素子寿命が短いことが大きな問題であったが新材料の開発及びパッケイジングの技術の向上により今では一万時間を越える素子が作製されている。
 また最近パイオニア社では2000年よりフルカラーのELデバイスを高品化すると新聞発表を行なった。

 このように述べると有機ELの技術はもう完成しているように思えるかもしれないが,更なる寿命や効率の向上, より鮮やかな色調また真空系を使わないファブリケイションプロセスなど,改良する点はまだ多い。 本書ではこのようなことを考慮して現状における有機EL素子に関する問題点を明らかにしてそれを克服可能なアイデアを満載すべく編集した。
 この問題にたずされる研究者の一助になれば幸いである。
                                                       東京農工大学大学院 宮田 清蔵


監修者

宮田 清蔵  東京農工大学大学院 生物システム応用科学研究科長 教授

執筆者(執筆順)

筒井 哲夫  九州大学 大学院総合理工学研究科 量子プロセス理工学 専攻教授
鄒  徳春  九州大学 大学院総合理工学研究科 量子プロセス理工学 専攻助教授
城田 靖彦  大阪大学 大学院工学研究科物質化学 教授
時任 静士  (株)豊田中央研究所 第一特別研究室 主任研究員
田中 洋充  (株)豊田中央研究所 材料三部
多賀 康訓  (株)豊田中央研究所 第一特別研究室 理事
森  竜雄  名古屋大学 工学研究科電気工学専攻 講師
大森  裕  大阪大学 大学院工学研究科 電子工学専攻 助教授
吉野 勝美  大阪大学 大学院工学研究科 電子工学専攻 教授
城戸 淳二  山形大学 大学院工学研究科 生体センシング機能工学専攻 助教授
臼井 博明  東京農工大学 工学部応用化学科 助教授
根岸 敏夫  日本真空技術(株) 産業機器事業部成膜技術部 部長
宮田 清蔵  東京農工大学大学院 生物システム応用科学研究科 教授・科長
桜谷 裕企  東京農工大学大学院 生物システム応用科学研究所
リゴベルト C.アドビンクラ
            アラバマ大学化学科助教授
佐藤 佳晴  三菱化学(株) 横浜総合研究所光情報研究所 主任研究員
仲田  仁  東北パイオニア(株) 開発技術本部第一開発部
横山 正明  開発三課 課長 EL特許グループ 大阪大学工学研究科教授

構成と内容

第1編 基礎編
1章 有機自発光素子の動作機構  1.はじめに  2.有機EL素子の動作機構の特徴 有機EL素子の発光効率  3.正負のキャリアの注入量を決定する因子の吟味  4.エネルギー効率の発光輝度依存性 2章 有機エレクトロルミネッセンス素子用新規電荷輸送材料  1.はじめに  2.有機EL素子用アモルファス分子材料の創製  3.アモルファス分子材料における電荷輸送  4.アモルファス分子材料を用いる耐熱性有機EL素子の開発  5.アモルファス分子材料を用いる耐久性有機EL素子の開発  6.有機固相界面におけるエキサイプレックスの生成とカラーチューニング 3章 低分子系発行材料  1.はじめに  2.発光層材料  3.ドーピング材料  4.おわりに 4章 色素ドープ材料とその発光特性  1.はじめに  2.発光層材料  3.ドーピング材料  4.おわりに 5章 高分子系材料  1.色素ドープ型有機発光素子について  2.具体的な色素ドープの方法  3.色素ドープ型素子の発光機構について  4.これまでの色素ドープの報告例  5.まとめ
第2編 EL技術の現状
1章 素子構造と発光色制御  1.はじめに  2.高分子系EL素子の構造と動作原理  3.高分子系発光材料とEL素子  4.高分子系EL素子の機能化  5.高分子系EL素子の今後の展望  6.高効率化のための素子構造の設計  7.素子の多色化技術マルチカラー化技術 2章 電極材料  1.はじめに  2.陽極材料  3.陰極材料  4.有機・金属接合  5.おわりに 3章ドライプロセスによる素子作製法  1.概要  2.有機EL素子作製技術  3.ドライプロセス技術  4.おわりに 4章,高分子系有機EL素子と湿式作成技術における現状  1.何故に高分子化が望まれているのか  2.材料開発の現状  3.素子開発の現状  4.新しい素子作製技術  5.まとめ 5章 自己組織化ポリマー超薄膜のポリマー発光ダイオードへの応用  1.序論  2.分子・超分子自己組織化法  3.高分子材料ポリマー発光ダイオード構造  4.ポリアニリン誘導体のポリマー自己組織化
第3編 展望と課題
1章 実用化への課題  1.はじめに   1.1 実用化への道   1.2 研究課題と現状   1.3 材料-素子-パネル  2.素子の安定性   2.1 はじめに   2.2 劣化機構    2.2.1 熱的な劣化    2.2.2 電気化学的劣化   2.3 長寿命化の検討    2.3.1 正孔輸送層    2.3.2 陽極バッファ層    2.3.3 ドーピング    2.3.4 まとめ  3 課題   3.1 色素材料の開発    3.1.1 正孔輸送材料    3.1.2 発光材料    3.1.3 電子輸送材料   3.2 素子構造の検討    3.2.1 陰極界面層    3.2.2 正孔阻止層    3.2.3 白色発光   3.3 パネル化技術    3.3.1 駆動方式:単純vs.アクティブマトリクス    3.3.2 フルカラー化の方式    3.3.3 温度特性  4 おわりに 2章 有機ELディスプレイ  1.はじめに  2.ドットマトリクスディスプレイ   2.1 陰極のパターニング技術   2.2 封止技術   2.3 コントラストの改善   2.4 駆動技術  3.おわりに 3章 最近の特許動向  1.特許から見る研究開発の流れ   1.1 有機自発光素子の基本特許   1.2 主要企業の特許出願  2.有機自発光素子の性能と安定性   2.1 特許からみた企業間比較   2.2 主要7社の特許出願    2.2.1 出光興産    2.2.2 三菱化学    2.2.3 東洋インキ    2.2.4 パイオニア    2.2.5 ティーディーケー(TDK)    2.2.6 日本電気    2.2.7 コダック(KODAK)  3.有機自発光素子の製法特許   3.1 レーザービーム   3.2 フォトリソグラフィー   3.3 製造装置  4.有機自発光素子特許のワンポイント・アドバイス   4.1 有機自発光素子特許の検索   4.2 有機自発光素子特許の取り方    4.2.1 技術分野    4.2.2 発明の構成と効果    4.2.3 補正の制限と国内優先   4.3 特許権の行使 4章 展望─非表示素子を含む多角的応用を目指す戦略  1.はじめに  2.新しい応用展開ヘの戦略的視点   2.1 光源としての応用展開   2.2 薄膜端面からの発光   2.3 コヒーレント発光素子への展開  3.機能デバイスへの展開   3.1 波長変換・光増幅素子    3.1.1 光−光変換素子の構造と動作    3.1.2 長波長から短波長への波長変換    3.1.3 光増幅    3.1.4 光電流増倍現象    3.1.5 光変換デバイスにおける新機能    3.1.6 光増幅デバイスにおける光パターンの記憶   3.2 光演算デバイス  4.おわりに



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