ゼロエミッションとは、産業で排出された廃棄物を、他の産業の原料として用いることで資源の有効利用を図り、同時にごみをなくすことを目的とした考え方で、
一九九四年に国際連合大学が提唱し現在も実践中のものである。
これは、新しい企業活動や産業のあり方を求めた考え方であると言える。
日本も近い将来、深刻な環境汚染や資源の枯渇といった状況に直面することは必至である。
また、いったん汚染された土地や海の環境修復には莫大な費用が必要となるため、日本政府や各自治体、各企業も、このゼロエミッションに取り組み始めている。
本書は、国際連合大学「ゼロエミッション」研究構想の設立メンバーである国際連合大学高等研究所の鵜浦先生と坂本先生に、ゼロエミッションの提唱から現状、
そして将来あるべき姿を解説していただいたものである。
また、二年連続「環境優良企業」一位にランクされたトヨタ自動車を含めた7社の実例を挙げて詳しく解説されていのも大きな特徴である。
リサイクルが注目されている中、廃棄物を処分せずに再利用するゼロエミッションに焦点を当てた本書は事業者や行政にとって新たな指針を示したものといえるだろう。
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坂本憲一 | (さかもと けんいち) 昭和35年3月、東京大学大学院博士課程修了。工学博士。同年4月、日本軽金属株式会社入社。平成6年6月、同社参与・株式会社日軽技研専務退任。平成7年3月、国際連合大学。現在、同高等研究所UNU/ZERIプロジェクト科学アドバイザー。 |
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尾花博 | (おばな ひろし) 昭和48年3月、東京工業大学工学部卒業。同年4月、小野田セメント株式会社(現太平洋セメント株式会社)入社。現在、同社ゼロエミッション事業部エコセメント担当部長。セメント製造技術に基づくリサイクルシステムの実用化を目指す。夢の島を無くす夢の実現に取り組んでいる。 |
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渡辺春夫 | (わたなべ はるお) 昭和49年3月、東北大学工学研究科応用化学専攻修士課程修了。同年4月、ソニー株式会社入社。現在、ソニー株式会社テクニカルサポートセンター環境・解析技術部環境材料開発担当部長。工学博士。 |
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柄田忠洋 | (からた ただひろ) トヨタ自動車株式会社で塑性加工の生産技術部と鍛造・機械の製造部を経験。現在、同社堤工場環境保全主任管理者兼務ISO14001システム構築。同審査員補。省エネルギー通産大臣賞を2度受賞。 |
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大貫徹 | (おおぬき とおる) 昭和57年、東北大学理学部卒業。平成9年まで株式会社INAXにて工場技術課長として廃棄物削減に従事。平成11年、内装タイル製法の革新に関し、日本セラミックス協会賞受賞。平成12年10月まで、技術研究所室長としてリサイクル機能建材の開発に従事。現在、商品部部長としてマーケティング担当。 |
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日鼻宏一 | (くさはな ひろかず) 東京農工大学農芸化学科卒業。昭和42年、キリンビール株式会社入社。キリン・シーグラム株式会社出向などを経て、栃木工場醸造部長、東京工場醸造部長。平成8年から、社会環境部部長代理。環境庁環境会計ガイドライン作成メンバー、ISO14001規格審査員。COP3(京都会議)で企業の環境対策を発表。 |
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稲垣徹 | (いながき とおる) 昭和46年、慶應義塾大学経済学部卒業。同年、株式会社荏原製作所入社。平成10年より現職。 |
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鎌田光郎 | (かまた みつろう) 昭和57年3月、東京理科大学理工学研究科機械工学修士課程修了。同年4月、富士写真フイルム株式会社入社。足柄工場感光材料加工部門にて加工設備開発導入を担当。現在、レンズ付きフィルム循環生産工場の生産工程管理とリサイクル関連技術開発を担当。 |
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鵜浦真紗子 | (うのうら まさこ) 昭和30年、東京生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。青山学院大学国際政治経済学科修士過程国際コミュニケーション専攻。平成6年4月にスタートした国際連合大学「ゼロエミッション」研究構想の設立メンバーの一人である。同時に、国際連合大学学長顧問補佐としてその活動の運営面に携わり、平成10年以降、引き続き同高等研究所にて現職。日本におけるゼロエミッション活動を推進するために、産業界・行政官庁・地方自治体などを結ぶパイプ役である。 |