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天然ガスの高度利用技術
−開発研究の最前線−
[コードNo.01NTS027]
■体裁/ |
B5判 上製 804頁 |
■発行/ |
2001年 4月10日 (株)エヌ・ティー・エス |
■定価/ |
56,540円(税込価格) |
編集からのメッセージ
21世紀に突入し、天然ガスは今まで以上に世界のエネルギー関係者の注目を集めている。
その大きな理由の一つは、優れた環境性にある。周知のように、天然ガスから発生するCO2は、石炭の約六割、石油の七割程度と、化石燃料の中で最も低い。
地球温暖化が取り沙太されて久しいが、世界中で排出される温室効果ガスの約六割を占めるCO2を削減するために、太陽、風、水などの自然エネルギーの活用と並行し、
天然ガスが今後ますます重視されることは間違いないだろう。
天然ガスが注目されるもう一つの理由は、その供給安定性にある。確認可採埋蔵量は1999年度末で146兆あり、旧ソ連に39%、中東に34%、アジアに7%、北米に5%と、
世界各国にまんべんなく分布している。
埋蔵量の七割が中東に集中する石油と違って、安定供給が期待される。
また、可採年数も石油よりもはるかに長い。
採掘技術の進歩とともに巨大ガス田が次々と発見され、1998年の世界エネルギー会議では「天然ガスの資源量は二百年以上ある」との試算結果も報告されており、当面資源枯渇の心配もない。
さらに、新タイプの天然ガス資源「メタンハイドレート」への期待も大きい。
これは天然ガスの主成分であるメタン分子一個が数十個の水分子に取り囲まれた氷塊状のもので、自然界では永久凍土地帯や大陸周辺の海底に存在し、
日本近海でも南海トラフ、オホーツク海など七つの海域でハイドレート層の存在が有力視されている。
もし、これらすべてが利用可能であるとすると、その有用性は計り知れない。
本書は、こうした時代のニーズを見据え、天然ガスに関する基礎から最新の応用技術までをまとめたものである。
三年前、北海道大学・市川勝先生のご提案で、多田旭男先生(北見工業大学)、吉田忠先生(産業技術総合研究所北海道センター)らが最初の編集会議の場を設けたのが、本書が生まれる発端となった。
さらに、藤元薫先生(東京大学)、柏木孝夫先生(東京農工大学)、松村雄次先生(大阪ガス(株))、岡本洋三先生(東京ガス(株))、小松眞先生(三菱ガス化学(株))ら
天然ガス利用技術に関するオーソリティーが産学界から集結し、書籍づくりのプロジェクトがスタートしたのである。
最新の情報が集積された本書が、この分野の今後の発展に大きく寄与することを期待する。
発刊にあたって
21世紀の日本経済や,社会を支えるエネルギーの戦略策定に関する提言が,昨年暮れに(社)日本エネルギー学会を中心になされました。
その中で強く求められているのは,天然ガスの総合的高度利用ということであり,三つの策定を挙げております。
1番目として天然ガス資源の技術戦略の策定,2番目として天然ガスの安定した合理的輸送技術の推進,3番目として天然ガスの高度利用技術の開発・推進と国際社会への貢献であります。
天然ガスのクリーン性を生かして,次世代の新しい炭素資源として,輸送用燃料に適した液体化や石油化学産業の基幹原料を造り出す触媒化学技術は,現在世界的に重要な課題になっており,
日本国内においても,近年こうした天然ガスの高度利用のための触媒化学変換技術に関する研究が,質的・量的に増大しております。
すなわち,メタンを利用したエチレンやベンゼンなどの石油化学原料製造,直接・間接法によるメタンの液体燃料化技術(GTL),メタンを利用したDMEやファインケミカルズ合成,
改質反応や直接脱水素縮合反応による水素製造技術など,天然ガス化学の基礎と応用の目覚ましい展開が進んでいます。
このように,21世紀の環境・エネルギーの“切札”として注目を集めている天然ガスでありますが,バイオガスやメタンハイドレートなど新しいメタンガス資源を含めて,
利用技術から次世代の天然ガス化学産業や水素エネルギー利用(プロトニクス産業,燃料電池,クリーンエネルギーシステム)までを広くカバーする書籍は今までにありません。
そこで企画にあたっては,21世紀に期待される天然ガス高度利用技術に焦点を置いた技術集成を目標とし,従来技術の紹介にとどまらず,
「天然ガス高度利用技術上の最近の開発研究の最前線」に関する最新データと技術内容について,各分野の大学・研究所の研究者のみならず,
とりわけ産業界でご活躍のエキスパートに執筆を担当していただくことといたしました。
本書が天然ガスの高度利用技術の普及と展開に結び付き,国内外の環境・エネルギー開発や化学産業振興に向けての一手になれば幸甚であります。
2001年4月10日 監修者 市川 勝
監修者
編集委員(五十音順)
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岡本 洋三 | 東京ガス(株)役員待遇エグゼクティブスペシャリストエネルギー エンジニアリング部長 |
柏木 孝夫 | 東京農工大学大学院生物システム応用科学研究科教授 |
小松 眞 | 三菱ガス化学(株)研究顧問 |
多田 旭男 | 北見工業大学工学部化学システム工学科教授 |
藤元 薫 | 東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻教授 |
松村 雄次 | 大阪ガス(株)技術・開発研究統括常務取締役 |
吉田 忠 | (独)産業技術総合研究所北海道センター副センター長 |
執筆者
構成と内容
第1章 天然ガス高度利用技術と未来システム
第1節 はじめに
天然ガス高度利用技術の展望…<市川 勝/大西 隆一郎>
天然ガスとは…<松村 雄次>
都市ガス利用…<一本松 正道>
産業利用…<一本松 正道>
第2節 クリーンなエネルギー源
燃料種別CO2排出原単位…<桑原 茂>
化石燃料の成分…<桑原 茂>
第3節 クリーンな工業原料
水素および一酸化炭素…<藤元 薫>
メタノール…<柳川 達彦>
FTプロセスによる合成燃料油…<永井 潜>
水素および芳香族化合物…<市川 勝/大西 隆一郎>
メタン分解により得られた水素・炭素の利用…<村田 和久>
ジメチルエーテル(DME)…<大野 陽太郎>
化学品一般…<柳川 達彦>
第4節 天然ガスの安定供給
一次エネルギー供給構成…<村木 茂>
エネルギー資源の埋蔵量と生産量…<村木 茂>
新しい天然ガス資源…<中村 和夫>
輸送・貯蔵技術…<西川 祐輔>
長期供給契約…<前田 剛>
第5節 天然ガスが結ぶ産出国とのきずな…<蝦名 雅章/P. Nixon>
第2章 各種天然ガス資源の生産と利用
第1節 天然ガス
天然ガスの起源と分布,資源量…<武田 信從>
生産と性状…<佐藤 徹>
未利用中小天然ガス田の利用…<寺崎 太二郎>
サハリンガス田の現状と将来性…<蝦名 雅章>
第2節 メタンハイドレート
構造と物性…<内田 努>
起源と分布,資源量…<奥田 義久/松本 良>
探査,掘削,生産技術の現状…<増田 昌敬>
ガスハイドレードの基礎特性とその利用技術…<海老沼 孝郎/成田 英夫>
第3節 バイオガス
バイオガス発生のメカニズムとメタン発酵槽…<松田 從三>
潜在賦存量(エネルギー生産量)…<山下 信彦>
利用技術の現状と最近の動向…<梅津 一孝>
環境保全と資源循環…<梅津 一孝>
第4節 コールベッドメタン
コールベッドメタンと生成メカニズム…<大賀 光太郎>
賦存状態と資源量…<大賀 光太郎>
生産技術と利用…<大賀 光太郎>
第3章 天然ガスの輸送・貯蔵
第1節 天然ガスの液化
天然ガスの液化プラント…<吉川 喜次>
天然ガスの液化技術と最近の傾向…<吉川 喜次>
LNGチェーンの最適化…<田頭 清作>
第2節 LNGの海上輸送
LNG船の技術…<藤谷 堯>
LNG船のガスオペレーション…<石川 次郎>
LNG船技術の将来…<藤谷 堯>
第3節 LNG受入基地の概要
LNG受入基地の主要設備…<新井 仁>
LNG受入基地の安全対策…<青柳 祐介>
第4節 天然ガスのパイプライン輸送と地下貯蔵
天然ガスの輸送手段とその特性…<朝倉 堅五>
地下貯蔵の種類と実例…<栗村 英樹>
幹線パイプラインの輸送技術…<福澤 小太郎>
幹線パイプラインの制御技術…<尾崎 信也>
第5節 天然ガスの新しい輸送・貯蔵方式
ガスハイドレード利用による輸送・貯蔵システム…<松尾 和芳>
吸着材による新規な貯蔵技術…<酒井 正信>
天然ガスの分解・擬固形化による輸送・貯蔵…<大塚 潔>
第4章 天然ガスエネルギー利用技術
第1節 火力発電…<船橋 信之>
発電用LNG導入の経緯
火力発電におけるLNGの位置づけ
LNGの基地と発電所
発電所のLNG設備
LNG火力発電設備
第2節 都市ガスとしての利用…<一本松 正道>
都市ガス産業の規制緩和と天然ガスエネルギー利用技術の開発
燃焼基礎技術の発展
リジェネバーナ
固体電解質燃料電池(SOFC)
第3節 コジェネレーション技術
ガスエンジン…<庄司 不二雄>
ガスタービンコジェネレーション…<雨宮 辰信>
燃料電池…<岡田 治/佐々木 博一>
第4節 天然ガス自動車…<岸田 總太郎>
自動車燃料としての天然ガス
世界における天然ガス自動車の普及状況
日本における天然ガス自動車の普及状況
今後の課題および将来展望
第5節 天然ガスの非燃焼利用
天然ガス原料のオンサイト水素製造装置…<仲西 直樹>
LNGから生まれた13C診断薬…<柴田 邦彦/植村 家顯>
第6節 冷熱利用…<渡部 鼎士/宮本 篤>
空気分離装置
LNGの冷熱エネルギーと空気分離の必要冷熱エネルギー
LNG冷熱の利用
LNG冷熱利用空気分離装置の現状
その他の冷熱利用空気分離装置
第5章 合成ガスの製造と利用
第1節 水素および一酸化炭素の製造技術
合成ガスの意義…<藤元 薫>
改質プロセス…<浅岡佐知夫/志村 光則>
炭酸ガスおよび水蒸気改質用触媒の開発…<冨重 圭一>
部分酸化法…<上野 晃史>
第2節 メタノール合成…<久和 正昭>
メタノール製造プロセスの概要
改質工程の合理化
メタノール合成の原理
メタノール合成触媒と反応器
新しい合成システム
第3節 GTL(化学的液化・燃料化)技術…<藤元 薫>
酸化カップリング(OCM)
GTG(Gas To Gasoline)プロセス
フィッシャー・トロプシュ(FT)合成プロセス
将来への展望
第4節 DMEの製造技術…<大野 陽太郎>
DME直接合成プロセスの基礎
DME直接合成プロセス開発の経緯
NKKプロセスの特徴と開発成果
商用規模のDME製造プロセスフロー
第5節 DMEの用途
概要…<柳川 達彦>
自動車燃料…<鹿田 勉>
発電用燃料…<鹿田 勉>
民政用燃料…<鹿田 勉>
その他の用途…<鹿田 勉>
第6節 メタノール誘導品…<早川 孝/鈴木 邦夫>
ホルムアルデヒド
メチルターシャリーブチルエーテル;MTBE
酢酸の製造法
アクリル酸メチル;MMA
メチルアミン類の製造
第7節 合成ガスの装置と利用----将来展望…<藤元 薫>
水素製造
エネルギー媒体
合成中間体:新C1化学
その他の合成ガス製品
第6章 次世代の天然ガス化学技術
第1節 水素と石油化学原料の併産技術
水素と芳香族化合物の直接製造…<大西隆一郎/市川 勝>
二段階反応によるメタンからC2, C3の直接合成(間接法を含む)
ホモロゲーション…<内藤 周弌>
メタンのプラズマ分解による新化合物の合成…<関根 泰>
メタンを利用するCO2リフォーミングおよび増炭化反応…<袖澤 利昭>
第2節 水素と炭素材料の併産技術
天然ガス(メタン)のプラズマ分解による水素・炭素併産
…<山口 千春/松井 久次>
天然ガスの触媒分解による水素・炭素併産…<村田 和久>
炭化水素の触媒分解による水素・炭素併産(カーボンナノチューブを含む)
…<多田 旭男>
CH4およびCO2を基本原料とするガス合成プロセスと
工業用炭素材の製造について …<加藤 三郎>
第3節 天然ガスから含酸素および窒素有機化合物
メタンから酢酸,酢酸エステル,メタノールなどの合成…<藤原 祐三>
エタンからアクロレインの合成…<小林 哲彦>
メタンからの含窒素(含ヘテロ元素)化合物合成…<小坂田 耕太郎>
メタンからの青酸,エタノール,ジメチルアミンの合成
…<市川 勝/福岡 淳>
第4節 メタンの酸化カップリング…<秋鹿 研一>
OCM反応の概要と速度論の分類
中間メチルラジカルの同定と気相放出
気相OCMのkinetics
気相および触媒反応によるOCM反応の解析:計算機を利用した
シミュレーション
表面反応式側からアプローチした反応解析
power rate law型反応速度式
簡便法速度式によるC2選択性検討
第5節 燃料電池型反応器によるメタンからの有用化合物と電力の併産
…<大塚 潔/石原 達己>
燃料電池型反応器によるメタンの酸化反応
メタンの部分酸化反応
LaGaO3系酸化物を電解質とする燃料電池型反応器によるメタン部分酸化
第6節 天然ガスと個体の反応
金属炭化物:炭化アルミニウム…<多田 旭男>
ダイヤモンド薄膜の気相合成…<安藤 寿浩/蒲生 西谷 美香>
第7章 水 素
第1節 水素の特徴と優位性…<柏木 孝夫/吉田 昌司>
水素の特徴
利用面からみた水素の優位性
第2節 水素の貯蔵と輸送
カーボンナノチューブ等炭素系水素吸蔵材
…<西田 亮一/西野 仁/松井 久次>
水素のパイプライン輸送…<大橋 一彦>
メタルハイドライド…<須田 精二郎>
第3節 エネルギーメディアとしての水素利用
----水素を用いた冷凍システムと熱輸送…<伊藤 秀明/竹田 晴信>
水素吸蔵合金を用いた冷凍システム
水素吸蔵合金を用いた熱輸送システム
第4節 高分子電解質型燃料電池…<渡辺 政廣/内田 裕之>
原理と課題
開発の現状
高分子電解質膜(PEM)
電極
セパレータ
PEFC用改質燃料ガス中の一酸化炭素の選択酸化除去
第5節 内燃機関における水素の燃焼…<首藤 登志夫>
水素の燃焼特性
熱効率特性
排気特性
異常燃焼
内燃機関における水素の利用例
第6節 高精度水素センサ…<石川 博/福井 清>
各種水素センサの動作原理と特徴
各種水素センサの用途
第7節 MHアクチュエータ…<伊藤 秀明>
MHアクチュエータの構造
MHアクチュエータの特徴
熱の応答性の改善
MHアクチュエータを利用した福祉機器の開発
第8節 水素ネットワーク都市システムとその将来…<柏木 孝夫>
都市のエネルギー需要
最適都市エネルギーシステム
水素ネットワークを有する都市システム
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