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シックハウス対策の最新動向
〜環境設計・測定・治療〜

[コードNo.05NTS137]

■監修/ 吉田弥明 静岡大学名誉教授
■体裁/ B5判・488頁
■発行/ 2005年 5月31日
(株)エヌ・ティー・エス
■定価/ 44,000円(税込価格)


 シックハウス症候群の発生源である部材、環境設計、測定方法、治療、国内外の動向を網羅し、総合的対策を立てるための必携の書。


まえがき

 シックハウス、シックスクール、化学物質過敏症という用語が定着し、一般の人々にも室内の空気がいかに健康にとって大切であるかということが理解されるようになってきました。1日の疲れを癒し、明日への活力を満たすべき住まいにおいて、あるいは、明日を担う貴重な若者を育てる教育施設において、わが国の経済活動・社会活動を支える職域において、空気の汚染に起因する症候群や深刻な健康不具合が報告されています。2004年6月1日にシックハウス症候群は疾患として公に認められるようになりましたが、化学物質過敏症についてはいまだ病名としては認められていません。しかし、これらの空気質に起因する健康不具合を訴える人は現に存在します。また、これからも存在し続けることは容易に想像できます。ここ数年、建築、材料、医学分野などを網羅した産学官の精力的な取り組みによって、シックハウス症候群や化学物質過敏症に関する知見が蓄積され、この疾患に対する理解も増え、また診断・治療、対応策も充実してきています。
 本書はこれまで明らかにされている知見や対応策について、実際に関連の実験を行い、診療を行い、建設を手がけている現役で活躍している方々に執筆をお願いし、一般の方々はもちろん、専門家の人々にも有効にお使いいただけるように編集されています。第1章ではわが国におけるシックハウスの現状と課題、第2章では各国の取り組みの状況を述べ、この問題がわが国だけの問題ではないこと、第3章ではこの問題の解決に直接関連する建築およびその材料・製品分野の産業における対応策と開発動向、第4章では室内空気質、材料の客観的な評価に必須の測定・試験方法、第5章ではシックハウスあるいは化学物質過敏症の診療の症例をその発生要因および治療まで含めて、第6章では最近きわめて大きな問題となっているシックスクールについてのトピック、第7章では化学物質に対応して建てられた病院および住宅について記述しています。
 内容は狭い意味でのシックハウス症候群の範囲を逸脱しているところもありますが、いずれも化学物質、特に揮発性有機化合物が関与しており、密接に関連しているものです。現代の人間はその大半を屋内で過ごしています。また、生きていくためには呼吸を止めるわけにはいきません。飲食物や衣類と違って意識されずに空気中の汚染物質が直接肺に達します。その影響は計り知れないものがあります。まだまだ不十分な点がありますが、本書がよりよき空気環境の確保に役立ち健康的な生活に寄与する実用書としてお役に立てることを切に希望するものであります。
 最後にお忙しいなか快く執筆をお引き受けいただいた各先生方に、心より御礼申し上げます。
                                                              2005年5月 監修者


監修

吉田弥明静岡大学名誉教授

編集

井上雅雄コニシ(株)東京本社技術部参与
藤田清臣松下電工(株)住建事業企画室渉外担当

執筆者(執筆順)

吉田弥明静岡大学名誉教授
辻好美アメリカ環境健康財団日本支部代表取締役
杉山明アメリカ環境健康財団日本支部
渡邊昭雄アメリカ環境健康財団日本支部
金顯中ソウル大学校環境材料科学専攻副教授
金秀ミンソウル大学校環境材料科学専攻博士課程
李永揆農業科学共同機器センター研究員
井上雅雄コニシ(株)東京本社技術部参与
藤田清臣松下電工(株)住建事業企画室渉外担当
山口一清水建設(株)技術研究所主席研究員
高橋富雄凸版印刷(株)建装材事業部開発販促部課長
皆川昶夫藤倉化成(株)塗料事業部主席研究員
水野民雄大日本塗料(株)理事
桜田司(株)信州セラミックス代表取締役
秋津裕志北海道立林産試験場性能部接着塗装科科長
井上明生(独)森林総合研究所複合材料研究領域積層接着研究室長
佐藤勝二(株)カネカテクノリサーチ材料分析部材料分析センター研究員
岩子真奈美(株)カネカテクノリサーチ材料分析部材料分析センター
柴藤啓介(株)ダイヤ分析センターVOC技術部部長
熊谷一清東京大学大学院新領域創成科学研究科助手
藤井実(独)国立環境研究所循環型社会形成推進・廃棄物研究センター研究員
甲斐雄也NECソフト(株)北関東支社茨城センター
篠原直秀(独)産業技術総合研究所化学物質リスク管理研究センター
柳沢幸雄東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
高倉正文アビリット(株)医療環境事業本部研究開発部グループ長
伊藤猛アビリット(株)医療環境事業本部長
鹿庭正昭国立医薬品食品衛生研究所療品部第二室室長
坂部貢北里大学薬学部公衆衛生学教室教授
青山美子青山内科小児科院長
渡邊京子茅ヶ崎徳洲会総合病院皮膚科部長
黒嶋惠子どもの健康と環境を守る会代表
角田和彦かくたこども&アレルギークリニック院長
安部義行サマリア建築設計仙台事務所所長
和田光徳サマリア建築設計事務部長
秋山孝サマリア建築設計設計部長
福島直樹(株)高砂建設専務取締役
高島ゆかりアトリエ結主宰
井上雅博FPグループ室内環境プロジェクト

詳細目次

第1章序―シックハウスの現状と課題
1.1ホルムアルデヒドなどVOC問題とシックハウス
1.2住宅室内空気質とホルムアルデヒドなどVOC問題の経緯
1.3一般住宅の空気質
1.3.1新築住宅の空気質
1.3.2住宅の内装仕様と空気質
1.4今後の課題
1.4.1健康影響への課題
1.4.2健康で快適空気質確保への課題
1.4.3測定・評価への課題
文献
 
第2章各国における取り組み―対策の最新動向
2.1アメリカにおける健康に最適な環境の設計およびそのための材料選択
2.1.1ダラス環境健康センター
2.1.2環境制御ユニット:ECU
2.1.3創造力と空気
2.1.4サウナによる解毒作用
2.1.5建物に関連した病気:BRI
文献
2.2韓国におけるシックハウス対策の取り組み
2.2.1韓国政府の室内空気質管理政策現況
2.2.2韓国の汚染物質放散建築資材の試験方法
2.2.3韓国国内の室内空気質汚染関連団体
文献
2.3わが国の動向
2.3.1ホルムアルデヒド問題の経緯―問題の経緯と関係行政機関の対応
2.3.2最近の問題の再燃
2.3.3官民共同委員会
2.3.4各省庁のこれまでの動向
2.3.5VOC測定法JIS化委員会
2.3.6自主管理登録制度
2.3.7次期の規制動向
文献
 
第3章各種産業における対策と開発動向―材料を中心に
3.1木質加工建材と住宅設備機器
3.1.1木質加工建材の現状
3.1.2木質加工建材からのVOCの発生
3.1.3木質加工建材におけるシックハウス対策
3.1.4住宅設備機器の現状
3.1.5住宅設備機器からのVOCの発生
3.1.6住宅設備機器におけるシックハウス対策
文献
3.2建築分野におけるVOC対策の現状と今後
3.2.1背景
3.2.2行政の動向
3.2.3設計・施工手法のフロー
3.2.4具体的な対策
3.2.5新しい対策方法
3.2.6まとめ
文献
3.3扉・建材加工部材
3.3.1扉・建材加工部材の種類
3.3.2扉・建材加工部材のホルムアルデヒド対策
3.3.3扉・建材加工部材の木質材料のホルムアルデヒド対策
3.3.4扉・建材加工部材の二次加工方法とVOC
3.3.5今後の方向
文献
3.4塗料・塗装における室内環境問題
3.4.1日本塗料工業会における室内環境対策
3.4.2塗料のシックハウス対策と材料開発動向
3.4.3塗料のホルムアルデヒド調査研究
3.4.4塗料のVOC調査研究
3.4.5塗装にあたっての注意事項
文献
3.5塗料―対策の現状
3.5.1塗料について
3.5.2塗料組成と厚生労働省の13品目との関係
3.5.3公共建築工事標準仕様書
3.5.4環境対応塗料―水性塗料
3.5.5環境対応塗装に使う塗料の種類と副資材など
3.5.6環境対応塗料の選定
3.5.7VOCと揮発性有機化合物
3.5.8外装塗料のVOC対策
3.5.9おわりに
文献
3.6接着剤とシックハウス症候群
3.6.1接着剤とVOC問題
3.6.2室内環境と接着剤
3.6.3シックハウス症候群と接着剤
3.6.4接着剤のVOC放散挙動
3.6.5接着剤のVOC対策
3.6.6建築基準法改正と接着剤
3.6.7今後のVOC対策
3.6.8水性形接着剤
3.6.9接着剤の選定と使用におけるポイント
3.6.10乾式工法
文献
3.7壁装材料
3.7.1壁紙の種類
3.7.2壁紙のホルムアルデヒド対策
3.7.3その他のホルムアルデヒド放散量等級の認証
3.7.4壁紙とVOC
3.7.5壁施工用接着剤とVOC
3.7.6壁紙の品質規格
3.7.7今後のVOC対応と新ISM基準
文献
3.8光触媒による対策技術
3.8.1はじめに
3.8.2光触媒の課題
3.8.3課題の解決手法
3.8.4光触媒の原理の概要
3.8.5信州セラミックスの光触媒の用途
3.8.6信州セラミックスの光触媒の安全性
3.8.7VOC対策塗料(デオルミペイントECO)
3.8.8おわりに
文献
3.9家具の化学物質規制
3.9.1家具の評価方法
3.9.2材料の選択
3.9.3家具の測定方法
3.9.4家具からの化学物質の放散の対策
文献
 
第4章測定・試験方法と装置開発の実際
4.1大形チャンバー法
4.1.1諸外国の規格
4.1.2大形チャンバー法の概要
4.1.3実際の大形チャンバーの例
4.1.4試験結果の評価
文献
4.2アルデヒド類およびVOC類の分析方法
4.2.1はじめに
4.2.2アルデヒド類の分析
4.2.3VOC類の分析
4.2.4農薬類の分析
文献
4.3小形チャンバー法
4.3.1測定装置の概要
4.3.2小形チャンバーによる測定例
4.3.3小形チャンバーでの測定精度
4.3.4小形チャンバー法の今後の動向
文献
4.4パッシブフラックスサンプラー
4.4.1パッシブフラックスサンプラー
4.4.2PFSによる建材の放散フラックス評価
文献
4.5簡易測定法
4.5.1はじめに
4.5.2簡易測定器の現状
4.5.3VOC簡易測定器の開発事例
4.5.4簡易測定器の課題と今後の展望
文献
4.6室内空気測定方法
4.6.1測定はどのように行うか
4.6.2簡易測定法
4.6.3パッシブ法
4.6.4アクティブ法
4.6.5測定位置
4.6.6家具・什器のVOC測定
文献
 
第5章シックハウス症候群と治療の最前線
5.1室内空気汚染化学物質の毒性と健康影響―健康被害・発生防止のためのリスク評価と情報伝達
5.1.1はじめに
5.1.2室内環境中の化学物質による健康被害
5.1.3呼吸器障害を伴う急性中毒事故
5.1.4室内空気汚染化学物質による健康被害:化学物質過敏症・シックハウス症侯群・シックスクール症候群
5.1.5室内空気汚染物質による健康被害:原因究明
5.1.6安全対策における今後の課題
文献
5.2治療と今後の課題をさぐる
5.2.1原因物質からの回避
5.2.2患者教育
5.2.3身体状況の改善と有害化学物質の代謝促進・排出促進
5.2.4おわりに
文献
5.3農薬および難燃剤として用いられている有機リン化合物による慢性中毒の実態と治療
5.3.1有機リン化合物の使用の実情
5.3.2有機リン化合物の作用機構
5.3.3有機リン慢性中毒・化学物質過敏症の症状と診断と治療
5.3.4まとめ
文献
5.4シックハウス症候群の診断と治療―皮膚科領域より
5.4.1シックハウス症候群診断症例
5.4.2室内空気中化学物質関連皮膚症状の4群の層
文献
 
第6章トピック―シックスクールの現状と対策、そして今後の課題
6.1はじめに
6.2シックスクールは、校舎だけが問題なのではない
6.2.1コンピュータ
6.2.2ワックス
6.2.3その他の学用品
6.3学校建築―新築・改築・そして測定
6.4おわりに
 
第7章事例集
7.1病院建築におけるシックハウス対策
7.1.1はじめに
7.1.2シックハウス対策をした病院建築
7.1.3まとめ
文献
7.2化学物質対応住宅の実際
7.2.13人に1人はアレルギー―農薬で汚染された土壌
7.2.2住まいとアレルギー
7.2.3危ない地球
7.2.4省エネは住宅の必要条件
7.2.5室内空気環境
7.2.6換気の目的と計画換気
7.2.7健康的な住まい
7.2.8化学物質対応住宅の実際
文献
7.3地元の木と土壁の家
7.3.1アレルギーを抱える家族の悩み
7.3.2事例1 静岡県・御殿場の家
7.3.3事例2 静岡県・伊東の家
7.3.4おわりに
7.4清浄な住宅室内環境構築の基本―計画計量換気の重要性
7.4.1だれもが手に入れやすい安全な住宅の選択とは
7.4.2真面目人間の集団―FPグループ
7.4.3幅広いシックハウスの意味と造り手の意識
7.4.4計画計量換気の重要性と条件
7.4.5必ずしも安全とは言えない自然派住宅
 
付録
付録1:住宅・環境問い合わせ先
付録2:東京都港区の区有施設シックハウス対策ガイドライン
付録3:東京都港区の区有施設シックハウス対策マニュアル
付録4:製品安全データシート見本
略語一覧
索引



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