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SPring-8の高輝度放射光を利用した先端触媒開発

[コードNo.06NTS166]

■体裁/ B5判・490頁
■発行/ 2006年 10月 6日
(株)エヌ・ティー・エス
■定価/ 34,100円(税込価格)


 21世紀における触媒の開発には、その構造と機能の関連性を原子・分子レベルで理解することが基礎となる。その実現には、触媒物質の構造決定を0.1Å単位で正確に行うことのできる放射光の利用は極めて重要で不可欠な研究手法の1つとなりつつある。
 このような背景の中、実用触媒の研究開発に携わっている研究者や技術者のための世界最大規模の放射光施設“SPring-8”の有効利用の促進を支援することを活動の目的として“SPring-8触媒評価研究会”が設立された。放射光を利用することによって、より優れた実用触媒の開発と応用展開の拡大を目指し、意見交換と勉強会、講演会や施設見学会を開催している。
本書では、放射光を用いた具体的な事例を中心に、SPring-8触媒評価研究会のこれまでの膨大な知識と技術の蓄積を見直し、新たな情報としてまとめた。触媒の開発・実用化に際して生じる諸問題の解決の鍵になるとともに、研究者や技術者が研究に対する考えを革新し、課題の解決に原子・分子レベルでの定量的な取り組みが不可欠であることを提唱している。

Preface

by
Professor Sir John Meurig Thomas
Cambridge University

The arrival of synchrotrons, and the steadily increasing ease of access to them, has been of immense value to numerous sectors of the scientific public. For the biologist, especially that community concerned with proteins, nucleic acids and ribosomes with particular reference to the static and dynamical aspects of these vital building blocks, high-resolution Laue techniques have yielded information on an unprecedented scale. For the spectroscopist, who seeks ever more resolution both in atomic and molecular behaviour, the availability of continuously variable and high-intensity sources of radiation has likewise been a boon.
But for those, like me, interested in the behaviour of solids and their surfaces, and especially their role as catalysts, the synchrotron offers unrivaled scope for elegant and important experiment. The materials scientist, metallurgist, earth scientist and electronic or structural engineer has the scope to pose and solve key questions, which facilitate the application of such basic studies to the problems of industry and of the applied scientist at large.
The articles contained in this book illustrate some of the specific examples that have been mentioned above. More importantly, they will prompt a broad community of scientists and engineers both to think afresh about their own work and suggest novel ways in which familiar problems may be quantitatively tackled.
I commend this collection unreservedly.
                                     Sir John Meurig Thomas
                                     Department of Materials Science
                                     University of Cambridge
                                     UK
(和訳)


シンクロトロン放射光の出現と、それを利用するときの面倒が軽減され、比較的容易に利用できるようになったことは、科学の世界の無数の分野の進展において計り知れない大きな意味を持つ。例えば、生物学の分野において、タンパク質、核酸、およびリポソームの役割を研究している学者には、生命現象にとって決定的に重要な位置を占める物質の、最小構成単位の静的および動的変化に関する知見は、極めて重要で入手したい情報であった。シンクロトロン放射光の出現で、この分野でこれまでに無かった原子・分子スケールの詳細な情報が、高分解能ラウエ法によってもたらされるようになってきた。また、分光学の分野において、特に、原子および分子の挙動を理解しようとする研究者にとって、一段と精度の高い高分解能の機器を用いた研究が切望されていた。シンクロトロン放射光の出現で、連続的に波長可変で高強度の光源(電磁波)が得られ、原子・分子レベルの情報が入手可能となったことは、天の恵みである。
 さて、筆者を含めて固体および表面の化学挙動、とりわけそれらの触媒作用に関心がある者にとって、シンクロトロン放射光の出現は、直接的で簡潔で詳細な実験的事実を与えてくれ、触媒作用の理解に前例の無い比べようのない知見を与えてくれることが明らかになってきた。材料科学、金属学、地球科学、そして電子技術または構造工学の分野の研究に携わる者にとっても、基礎研究が実条件下で遭遇する諸問題、さらにはその実用化、応用化に際して生じる諸問題を摘出し、その疑問や困難を乗り越え解決するための鍵となる情報や見通しを与えてくれる。
 本書に採録されている記述内容は、上に記した例のいくつかについて具体的な事例を取り上げて解説している。さらに本書の重要な点は、広汎な分野の科学者および技術者が、自らの研究と仕事に対する考えを革新し、懸案となっている課題の解決に原子・分子レベルでの定量的な取り組みが可能となる新規な方法・手法を提唱するもので、本書を通して、飛躍的な発展と展開が生じることが期待できるであろう。このような観点から、筆者は本書を無条件で推薦したい。
                                                                ジョントーマス卿


執筆者一覧(執筆順)

永田正之(財)高輝度光科学研究センター常務理事
梅咲則正(財)高輝度光科学研究センター主席研究員
古宮聰(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室コーディネーター
廣沢一郎(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室・産業利用支援グループグループリーダー
本間徹生(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室副主幹研究員
北野彰子(財)高輝度光科学研究センター
野崎洋(株)豊田中央研究所分析・計測部副研究員
佐藤眞直(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室副主幹研究員
梶原堅太郎(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室・産業利用支援グループ副主幹研究員
池本夕佳(財)高輝度光科学研究センター利用研究促進部門副主幹研究員
寺田靖子(財)高輝度光科学研究センター利用研究促進部門XAFS・分析グループ
小林啓介(独)物質科学研究機構ステーション長/(財)高輝度科学研究センター利用促進部門グループリーダー
飯野潔北海道立工業試験場材料技術部研究職員
松岡雅也大阪府立大学大学院工学研究科講師
安保正一大阪府立大学大学院工学研究科教授
朝倉清高北海道大学触媒化学研究センター・表面活性構造物性教授
岩澤康裕東京大学大学院理学系研究科化学専攻物理化学講座化学反応学研究室教授
河合潤京都大学工学研究科教授
朝倉清高北海道大学触媒化学研究センター教授
岩澤康裕東京大学大学院理学系研究科化学専攻教授
泉康雄東京工業大学大学院総合理工学研究科講師
吉田寿雄名古屋大学エコトピア科学研究所助教授
阪東恭子(独)産業技術総合研究所環境化学技術研究部門主任研究
一國伸之千葉大学工学部共生応用化学科助教授
渡辺巌大阪府立大学大学院理学系研究科教授
黒田泰重岡山大学大学院自然科学研究科理学系教授
江村修一大阪大学産業科学研究所助手
西山覚神戸大学環境管理センター副センター長
奥村和鳥取大学工学部助手
丹羽幹鳥取大学工学部教授
天野史章北海道大学触媒化学研究センター助手
田中庸裕京都大学大学院工学研究科分子工学専攻教授
金田清臣大阪大学大学院基礎工学研究科教授
久保田岳志島根大学総合理工学部物質科学科助手
宍戸哲也京都大学大学院工学研究科分子工学専攻助教授
杉浦正洽(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室コーディネーター
谷口昌司ダイハツ工業(株)先行技術開発部材料開発グループ
上西真里ダイハツ工業(株)先行技術開発部材料開発グループ係長
田中裕久ダイハツ工業(株)先行技術開発部材料開発グループエグゼクティブ・テクニカル・エンジニア
清瀧元川崎重工業(株)技術研究所化学技術研究部研究一課研究員
中川茂友川崎重工業(株)技術研究所材料研究部研究一課参事
長井康貴(株)豊田中央研究所触媒研究室研究員
山下弘巳大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻教授
森浩亮大阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻助手
胡芸大阪府立大学大学院工学研究科特別研究員
辻丸光一郎大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程
安保正一大阪府立大学大学院工学研究科教授
寺村謙太郎東京大学工学系研究科助手
堂免一成東京大学工学系研究科教授
竹内雅人大阪府立大学大学院工学研究科助手
安保正一大阪府立大学大学院工学研究科教授
中平敦大阪府立大学大学院マテリアル工学専攻教授
山本融(財)電力中央研究所エネルギー技術研究所主任研究員
栃原義久(財)電力中央研究所エネルギー技術研究所主任研究員
今井英人日本電気(株)基礎・環境研究所主任
廣嶋一崇(株)豊田中央研究所燃料電池システム研究室研究員
野中敬正(株)豊田中央研究所ナノ解析研究室副研究員
朝岡賢彦(株)豊田中央研究所燃料電池材料研究室主任研究員
亀川孝大阪府立大学大学院工学研究科博士後期課程2年
松岡雅也大阪府立大学大学院工学研究科講師
安保正一大阪府立大学大学院工学研究科教授
市川貴之広島大学先進機能物質研究センター助教授
藤井博信広島大学先進機能物質研究センター特任教授
粟野祐二(株)富士通研究所ナノテクノロジー研究センター主管研究員
二瓶瑞久(株)富士通研究所ナノテクノロジー研究センター主任研究員
近藤大雄(株)富士通研究所ナノテクノロジー研究センター研究員
前田文彦日本電信電話(株)NTT物性科学基礎研究所主幹研究員
渡辺義夫(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室室長
川村朋晃NTT物性科学基礎研究所主任研究員
谷口良一大阪府立大学産学官連携機構放射線研究センター助教授
岩瀬彰宏大阪府立大学大学院工学研究科物質・化学系専攻マテリアル工学分野教授
杉浦正洽(財)高輝度光科学研究センター産業利用推進室コーディネーター
高岡昌輝京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻助教授
塩沢一成(株)三井化学分析センター構造解析研究部主席研究員

詳細目次

序 Prof. Sir John M. Thomas
発刊にあたって
第1章 世界最高の大型放射光施設

    ・放射光とSPring-8
    ・SPring-8の産業利用
第2章 SPring-8を利用した触媒解析手法

第1節緒言
第2節放射光XAFS
第3節放射光粉末X線回折
第4節放射光薄膜X線散乱
第5節放射光X線イメージング
第6節放射光赤外分析
第7節放射光蛍光X線分析
第8節放射光光電子分光分析
第3章 放射光と触媒研究−その歴史と先端的測定技術への展望−

第4章 放射光を利用した新規先端触媒の測定法

第1節各種X線分光法
    ・時間分解XAFSによる触媒反応研究−分散型XAFSを中心に
    ・軟X線吸収スペクトルと化学状態分析
    ・偏光全反射蛍光XAFSによる金属−担体相互作用の研究
    ・蛍光分光X線吸収分光法によるサイト選択・微量元素選択測定
    ・XANESによる触媒の局所構造解析
    ・触媒反応条件下でのin-situ XAFS測定の現状
    ・XAFSを用いたMo光触媒のinsitu構造解析
    ・XAFS解析の実際−簡便さと落とし穴−
第2節高分散系触媒へのXAFSの応用
    ・触媒材料を対象とした研究におけるXAFS法の有効性−CuZSM-5での室温での窒素分子の吸着現象の解析−
    ・担持SnおよびZr酸化物触媒のXAFSスペクトルとカルボニル化合物の還元活性
    ・ゼオライト担持貴金属触媒のXAFSによる活性種形成過程解析
    ・担持銅触媒の自動還元とCOによるNO還元
    ・グリーンプロセスに向けた環境調和型固定化金属触媒の開発
    ・XAFSによる水素化脱硫触媒のキャラクタリゼーション
    ・Cr-MCM-41によるCO2を利用した酸化的脱水素反応
第5章 放射光を利用した新規先端触媒開発と応用

第1節自動車触媒
    ・自動車触媒の課題とSPring-8利用技術への期待
    ・放射光で見えたもの:インテリジェント触媒の研究開発
    ・ディーゼルエンジン排ガス浄化のためのNOx選択還元触媒評価への放射光利用
    ・自動車触媒用酸素貯蔵材料 CeO2-ZrO2複合酸化物のXAFS解析
第2節光触媒
    ・ゼオライト・メソ多孔質シリカに組み込んだシングルサイト光触媒の局所構造と光触媒特性
    ・Vイオンの注入によるTi含有ゼオライト系光触媒の視光機能化−XAFSによる局所構造と可視光化機構の解明−
    ・XAFSを用いるエネルギー変換型光触媒のキャラクタリゼーション
    ・XAFSによる高機能な酸化チタン系光触媒の局所構造解析
    ・高活性可視光応答型触媒能を有するTi置換型層状複水酸化物の局所構造解析
第3節燃料電池
    ・燃料電池用触媒材料の機能解明と火力発電技術へのSPring-8の適用研究
    ・放射光を利用した燃料電池用電極触媒のその場表面状態解析
    ・燃料電池用CoTPP/C触媒のin-situ XANES解析崇
    ・燃料電池用H2中の不純物COを高選択的に酸化除去するMo/Si2光触媒のXAFS解析
    ・触媒処理した水素吸蔵材料のXAFS法によるキャラクタリゼーション
第4節ナノテクノロジー
    ・カーボンナノチューブのエレクトロニクス応用のためのナノチューブ/金属低抵抗接合界面構造の解明
    ・ナノチューブ成長用触媒金属のSi清浄表面および酸化膜における反応過程のSPELEEMによる研究
    ・金ナノ触媒を用いた化合物半導体ナノワイヤの結晶成長
    ・超音波還元貴金属ナノ複合微粒子のXAFSによる研究
第5節廃棄物中の微量触媒
    ・ごみ焼却飛灰における銅の触媒作用によるダイオキシン類の生成
    ・PET樹脂中に微量存在する触媒成分(Ge,Sb)のXAFSによる状態解析(仮題)
付録 SPring-8利用申請の手順



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