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透明プラスチックの最前線
[コードNo.06NTS167]
■体裁/ |
B5判・252頁 |
■発行/ |
2006年10月 5日 (株)エヌ・ティー・エス |
■定価/ |
30,580円(税込価格) |
オプトエレクトロニクス産業の発展に伴い、透明高機能プラスチックに対する要望は多様化しており、複屈折に代表される各種光学特性の精密制御、あるいは「透明性」の前提の中で、熱物性・電気特性等の各種目的機能の実現が求められている。プラスチックならではの機能の追求に加え、易成形性・軽量・安価等の特性を生かした光学ガラス代替としての用途展開も期待されている。
本書では、「透明」をキーワードにした高機能プラスチック材料に関して、ポリマーの本質理解に関わる基礎的内容から最先端の動向まで解説する。
※高分子学会主催「ポリマーフロンティア21透明プラスチックの最前線」セミナー(2006年4月)を編集。
発刊の言葉・書評
光産業、情報産業の発展に伴い光学樹脂に対する期待、関心度が益々高まっていることは改めて申し上げるまでもない。「透明プラスチックの最前線」と題する本講演会を企画したところ、開催2週間前にすでに受付定員をオーバーする盛況ぶりであったことも当該分野に対する注目度の高さがうかがえるものであろう。
光学樹脂に望まれる機能は多岐にわたり、材料開発はいよいよ大変である。筆者は、企業において素材開発の基礎研究に従事しているが、最近では化学系の研究者以外に物理・電気・機械系など異分野の研究者と接する機会が増えてきた。そして彼らからの無理難題とも思われる要求に悩まされることもしばしばである。
「波長○○の範囲での透明性は大前提であるが、熱をかけても分解/膨張しない材料が欲しい、屈折率が高い/低い材料が欲しい、アッベ数は○○位、複屈折は○○位、電気抵抗は○○位、力学特性は○○位、吸湿性は○○以下、加工性のいいもの・・・当然安価で。」
それら単独の特性もままならないのに複数の特性が同時に必要だという。また、透明性に対する要求(波長域、透過率等)にも、様々なレベルがあることはいうまでもない。
これまで数多くのプラスチックが開発されてきたが、公知の材料のみでは高まる要望に応えきれないのが現状であろう。大抵は原理的なトレードオフに行き当たり苦労している。
例えば、ポリマーの熱膨張抑制や、高強度化に対して結晶性を付与したり分子配向性を高めることは有利であるが、透明性に対しては不利な方向となる。
高屈折率化や、低抵抗化に対しては、自由電子が動きやすく分極しやすい構造が有利であるが、やはり光学的透明性とは逆方向である。
ナノ粒子をハイブリッドして、種々の材料特性を向上させる研究も盛んに行われているが、レイリー散乱とのトレードオフを考えながら慎重に材料設計することが必要となる。
光学樹脂はガラスやセラミックスとしばしば比較される。プラスチックは機能は劣るが安いという見方をされるケースが多い。安くて性能を満たせば、工業的にはプラスチックであろうがガラスであろうが関係ない。もちろんポリマーならではというものもあるが、プラスチックというだけで価格が安いことが期待されるのも、材料開発者にはつらいところである。
プラスチックが膨張しやすいのは当たり前である。無機物に比べて耐久性・耐熱性が低いのも当たり前、無機物ほど硬くないのも当たり前である。有機物は利口かもしれないが体が弱くて信用ならないなどと異分野研究者から批判を受けることもしばしばである。
反面、だからしなやかで、軽量で、加工性が良いわけである。一次構造に精密な細工を施し、高次構造体として高度に制御された機能を実現するというポリマーならではの使い方があるわけである。
難しい状況を打破していくためには、種々の専門分野の研究者が歩み寄り、ぎりぎりの接点を求めてそれぞれが最大限の力を発揮することが必要であろう。
例えば、ポリマー上に無機薄膜を設置したいが無機薄膜の特性を満足なレベルにするためには高温が必要であるという。現実的接点を見つけるためには、ポリマー材料の耐熱性レベルアップのみならず、無機層形成プロセスの低温化のアプローチも必要であろう。
ポリマーは準安定状態の材料である。処理条件、成形方法によって、高次構造が変化するため、透明性・複屈折等の光学特性、熱膨張・ガラス転移温度等の熱特性、弾性率・破断伸度等の力学特性に至るまで様々な物性が変化する。
一次構造の設計と共にその能力を最大限に発揮させるための高次構造制御技術、「準安定さ」度合いを十分認識した上での実用上の使いこなし技術が極めて重要なのはいうまでもない。
素材を開発する上で、材料技術(シミュレーション、構造設計、合成技術等)、高分子物性(熱物性、力学物性、レオロジー、電気物性等)、光学、成形加工など様々な知識が必要な時代である。
光とは何か? 透明性とは何か? 屈折率とは何か? 複屈折とは何か? 熱膨張とは何か? ガラス転移とは何か?・・・本質を理解せず良いものができようはずがない。
ありきたりのことばかりしてもなかなかトレードオフから抜け出せないのも事実であるが、原理を考えず奇をてらったことばかりしてもなかなか驚くべき発明には至らない。
「本質を見据え、原理原則を踏み外さぬ様に注意した上でひねりどころを考えることが必要」・・・などと、自分自身に言い聞かせつつ、「本質」を見つめ直す機会として地に足のついたお話をお聞かせ頂ける先生方にご講演をお願いした次第である
大林 達彦
執筆者一覧(執筆順)
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大林達彦 | 富士写真フイルム(株)R&D統括本部先端コア技術研究所 主任研究員 |
小池康博 | 慶應義塾大学理工学部物理情報工学科・総合デザイン工学専攻 教授 |
井上正志 | 京都大学化学研究所材料物性基礎研究部門 助教授 |
扇澤敏明 | 東京工業大学大学院理工学研究科有機・高分子物質専攻 助教授 |
飯田真 | 帝人デュポンフィルム(株)開発センター第3開発室 室長 |
安藤慎治 | 東京工業大学大学院理工学研究科物質科学専攻 教授 |
福井俊巳 | (株)KRIナノ材料研究部長兼ゾルーゲル技術ユニット長 |
詳細目次
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目次 |
序文 |
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第1講 | 最も透明なポリマーとは |
1 | はじめに |
1.1 | フォトニクスポリマーとは |
1.2 | 不純物のポリマーの光特性 |
2 | 高速プラスチック光ファイバーの開発 |
2.1 | 高速化を実現するために |
2.2 | 高透明性から屈折率分布へ |
2.3 | 基礎に戻って再チャレンジ アインシュタインの揺動説とポリマーの透明性 |
2.4 | ベル研究所での仕事 |
3 | 散乱を利用した透明性の制御 GI型POFの実用化へ |
3.1 | 伝送損失を小さくするために |
3.2 | 吸収損失ゼロポリマー |
3.3 | ポリマーの材料分散は石英を越える特性を持つ |
4 | 散乱を積極的に利用する |
4.1 | HSOTポリマーの開発 |
4.2 | バックライトシステムへの展開 |
5 | ゼロ複屈折性ポリマーの開発 |
5.1 | 複屈折の問題 |
5.2 | 微粒子分散で複屈折制御 |
5.3 | 液晶ディスプレイにおける高分子の役割 |
6 | まとめ ポリマーのイノベーションがシステムを変えていく |
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第2講 | 高分子材料の複屈折制御 |
1 | はじめに |
2 | 複屈折とは |
2.1 | 複屈折の微視的表現 |
2.2 | 高分子の複屈折の起源 |
3 | 複屈折の指標 |
3.1 | 配向の測定 |
3.2 | 配向複屈折 |
3.3 | 高分子ガラスの複屈折 |
4 | 構造と複屈折 |
5 | 共重合による複屈折制御 |
5.1 | ポリカーボネート |
5.2 | シクロオレフィン系ポリマー |
5.3 | 共重合体の設計方法 |
6 | 波長依存性の制御 |
7 | まとめ |
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第3講 | 透明プラスチックの熱膨張制御 |
1 | はじめに |
2 | 透明プラスチックの種類 |
3 | 熱膨張の基礎 |
3.1 | 熱膨張機構 |
3.2 | 高分子の熱膨張 |
3.3 | 自由体積とは |
3.4 | 自由体積の求め方 |
3.5 | 高分子の熱膨張機構 |
3.6 | 熱膨張挙動とその他の物性 |
4 | 体膨張係数と線膨張係数 |
4.1 | 体膨張係数の測定法 |
4.2 | 体膨張係数測定例 |
4.3 | 膨張係数最小の高分子 |
5 | 熱膨張係数の低減法 |
5.1 | エントロピー弾性の利用による低減法 |
5.2 | 透明プラスチックの低線膨張化 |
5.3 | プレス延伸 |
6 | まとめ |
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第4講 | 高透明PENフィルムの開発と応用展開 |
1 | はじめに 帝人デュポンフィルムについて |
2 | フレキシブルディスプレイ市場とフィルムへの要求特性 |
2.1 | フレキシブルディスプレイの市場 |
3 | 高透明PENフィルムの開発 |
3.1 | ポリマー技術 |
3.2 | 成形プロセス技術 |
3.2.1 | 延伸方法 |
3.2.2 | 配向・結晶化による特性向上 |
3.2.3 | ガスバリア性 |
3.3 | 表面設計技術 |
3.4 | 表面改質による機能付与 |
4 | 高透明PENフィルムの応用例 |
5 | まとめ |
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第5講 | 耐熱性透明プラスチックとしての含フッ素ポリイミド |
1 | はじめに |
2 | 高耐熱透明ポリマーのニーズ |
2.1 | 光ネットワークと材料 |
2.2 | プラスチック光導波路部品 |
2.3 | 光アイソレータ |
2.4 | 光部品材料としてのポリマーの得失 |
3 | 含フッ素ポリイミド |
3.1 | 含フッ素ポリイミド開発の歴史 |
3.2 | 全フッ素化ポリイミド(PFPI) |
3.3 | その他の光導波路用ポリマー |
4 | 光学用ポリマーの各種特性制御 |
4.1 | 熱膨張と屈折率 |
4.2 | 配向と光学特性 |
5 | 光学機器用周辺部品 |
5.1 | ポリイミド光波長板 |
5.1.1 | 光波長板の原理 |
5.1.2 | ポリイミド薄膜波長板の調製と特性 |
5.1.3 | 波長板の温度依存性制御 |
5.2 | ポリイミド薄膜偏光子 |
6 | まとめ |
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第6講 | 有機-無機ハイブリッド技術の応用による透明機能材料 |
1 | はじめに |
2 | 有機-無機ハイブリッド技術の概要 |
2.1 | 有機-無機ハイブリッドの光学材料への応用 |
2.2 | ゾル-ゲルベースの溶液反応の適用 |
2.3 | 熱硬化、光硬化の応用 |
2.4 | 熱可塑性有機-無機ハイブリッド材料 |
3 | 有機-無機ハイブリッド技術を応用した屈折率制御 |
3.1 | 低屈折率材料 |
3.2 | さらに低屈折率化をはかるため |
3.3 | 高屈折率材料 |
4 | 有機-無機ハイブリッド技術を応用したアサーマル光学材料 |
5 | 有機-無機ハイブリッド技術を応用した吸収・発光材料への応用 |
5.1 | 希土類ドープハイブリッド材料 |
5.2 | 白色LED応用の可能性 |
5.3 | その他の応用 |
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