昆虫が有するミクロ・ナノ構造は、単純な繰り返しパターンであっても高い機能を発現する。「形」がもたらす機能をナノマテリアル設計に反映しようとする動向は世界的にも注目されている。本書では、国内外を代表する昆虫研究者と材料研究者を産学両面から招き、研究の最前線から未来の材料までを解説する。
※本書は、(独)科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業と東北大学多元物質科学研究所主催によるシンポジウム『昆虫ミメティクスとナノマテリアル』(開催日:2007年6月20、21日)を、講演録として編集したものです。
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●基調講演 昆虫の視覚誘導行動:オプトロニクス、ニューロニクス、 そしてナノメカトロニクス |
Introduction |
1 | Fly neuronal microcircuits |
2 | Fly-inspired visually-guided terrestrial robots |
3 | Insect-inspired visually-guided aerial robots |
4 | Biological returns |
5 | Potential applications to manned and unmanned aircraft or spacecraft |
6 | Conclusion |
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●キーノート講演 昆虫の生きる仕組み:材料とデザイン |
1 | はじめに |
2 | 昆虫とはどういうものか |
2.1 | 昆虫の特徴 |
2.2 | 昆虫の体表クチクラ |
2.3 | 昆虫の翅の起源と構造 |
3 | 昆虫は機能実現のため、材料をうまく使いこなしている |
3.1 | モスアイ構造(無反射表面処理) |
3.2 | 水分の吸収 |
3.3 | アメンボはなぜ水の上を走れるか |
3.4 | センサー機能 |
4 | さらに高次の機能の実現例:コオロギの気流感覚系の設計原理の解明 |
4.1 | コオロギの気流感覚器について |
4.2 | コオロギの気流感覚器のモデル化 |
4.3 | 感覚細胞の性能 |
4.4 | 感覚細胞は雑音のなかで動作する |
4.5 | とりあえずのまとめ |
5 | 細胞は、熱雑音を手なずけ、利用する |
5.1 | 何本あれば束か |
5.2 | 情報はただでは手に入らない |
6 | おわりに |
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●キーノート講演:材料の立場から 鋳型合成によるナノ構造体の作成 |
1 | はじめに |
2 | 膜構造の重要性 |
3 | 2分子膜で分子サイズの層状構造 |
4 | ゾル−ゲル法による無機薄膜 |
4.1 | ゾル−ゲル法の応用 |
4.2 | タンパク質−無機ハイブリッド膜 |
4.3 | 有機物のナノ構造を鋳型とする |
5 | 分子認識への展開 匂いセンサー |
6 | まとめ |
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●話題1 超撥水・超親水:昆虫の立場から フナムシの吸水機構 |
1 | はじめに |
2 | 私たちの研究戦略 |
3 | フナムシは脚から水を吸う |
3.1 | 吸水の様子を観察 |
3.2 | 溝の幅と吸い上げ機構 |
3.3 | どのような条件の水を吸うのか |
4 | 他の甲殻類との比較 |
5 | なぜフナムシだけがこのような構造を持っているのか |
6 | まとめ―フナムシの視覚機構 |
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●話題1 超撥水・超親水:材料の立場から 昆虫にも勝った? フラクタル構造の 超撥水性能 |
1 | はじめに |
2 | 生物の超撥水性 |
3 | 濡れと表面 |
4 | フラクタル表面と撥水性表面 |
4.1 | フラクタル表面とは |
4.2 | フラクタル構造をつくる |
4.3 | 撥油性表面の設計 |
5 | 超撥水性、超撥油性表面の耐久性の向上 |
6 | フラクタル立体の創製 |
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●話題2 構造色:企業の立場から 構造発色繊維モルフォテックス |
1 | はじめに |
2 | 構造色繊維開発の歴史 |
3 | モルフォテックスの開発 |
4 | モルフォテックスの特徴と用途展開 |
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●話題2 構造色:昆虫の立場から 昆虫の構造発色の仕組み |
1 | 構造色とは |
2 | 薄膜干渉・生物の薄膜干渉 |
3 | 多層膜干渉 |
4 | コレステリック液晶による構造色 |
5 | 2枚の多層膜 |
6 | モルフォチョウ |
7 | フォトニック結晶 |
8 | 散乱 |
9 | まとめ |
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●話題2 構造色:材料の立場から 昆虫の翅の色は液晶−生物が創製するナノ構造 |
1 | はじめに |
2 | 構造色 |
3 | 液晶について |
3.1 | 液晶と光学活性 |
3.2 | 生物界の液晶構造 |
4 | 生物の液晶構造を人工的に作る |
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●話題3 飛翔・流体特性 昆虫飛行のメカニズムと小型飛翔体 |
1 | はじめに |
2 | 昆虫飛行に関するこれまでの取組み |
3 | 昆虫飛行の解析 |
4 | 昆虫飛行のシミュレーション |
4.1 | 生物型飛行の力学シミュレーションで何が分かるのか |
4.2 | 生物型飛行の力学シミュレーションの結果 |
4.3 | スズメ蛾羽ばたき飛行の力学シミュレーション |
4.4 | ショウジョウバエのホバリング |
4.5 | 昆虫飛行のサイズ効果 |
5 | マイクロフライト |
5.1 | マイクロフライトの概要 |
5.2 | マイクロフライトと生物飛行 |
6 | 今後の展望 |
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●話題4 モスアイ構造:昆虫の立場から チョウ類複眼の構造と機能 |
1 | はじめに |
2 | 視細胞 |
3 | タペータム |
4 | Corneal nipple array モス・アイ構造 |
5 | まとめ |
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●話題5 未来材料:昆虫の立場から 化学センサーの不感症化と仲間識別機構 |
1 | はじめに |
2 | アリの仲間識別は炭化水素の感知から |
3 | アリの触覚と炭化水素認識 |
4 | 炭化水素のパターンの識別はどのように行っているか |
5 | CSP炭化水素を感覚子へ運ぶためのタンパク |
6 | アリの情報処理 |
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●話題5 未来材料:材料の立場から 電磁メタマテリアル研究の現状と展望 |
1 | はじめに |
2 | メタマテリアルとは |
3 | 人工的にメタマテリアルを作る |
4 | メタマテリアルで何ができるか |
5 | おわりに |
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●話題5 未来材料:材料の立場から 自己組織化ナノマテリアル |
1 | はじめに |
2 | 自己組織化によるパターン形成 |
3 | 自己組織化ナノフィルムの応用に向けて |
3.1 | ハニカムフィルムの二次加工 |
3.2 | 撥水・強吸着表面で水を捕集する |
4 | まとめ |
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●附:モスアイ構造 陽極酸化ポーラスアルミナを用いたモスアイ型反射防止構造 |
<参考資料> |
プレスリリース モスアイ型の無反射フィルム製造プロセスの開発について |
・モスアイ型無反射フィルムとは |
・技術的背景 |
・予想される用途 |
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●付記 昆虫とナノテクノロジー(世界) |
1 | テクノロジーは加速する情報テクノロジーは1年で2倍に成長する − 25年後には? Quo Vadis, 情報テクノロジー? ナノボットへ |
2 | 昆虫に学ぶナノテクノロジー Sendai Symposium on Insect Mimetics and Nano Materials 昆虫の視覚とナノメカニクス 昆虫の飛行 ノイズを利してシグナルを拾う 個と全体 |
3 | 2007年のノーベル賞から ノーベル化学賞(G.エルトル教授) 散逸構造とゆらぎ ノーベル平和賞(アル・ゴア氏) |