コーティング材料には非常に多くの機能が求められています。この機能を付与するためには主原料である樹脂やフィラーのみでは達成できません。この機能を付与するために多くの添加剤があります。ところが、添加剤の使用には功罪があります。例えば、塗料の表面を平滑にするために使用する添加剤での問題を述べます。この添加剤は添加することによって塗装表面の表面張力を低下させ、平滑にする機能があります。ところが、添加量を誤ると表面張力が低下しすぎて局部の塗料が引っ張られて素地が露出する“ハジキ”と言う現象が出ます。この場合に使用する添加剤はその添加量によって表面の平滑性と言う“功”とハジキと言う“罪”の働きをすることになります。すなわち、添加剤の使用はその種類のみでなく使用量にも問題のある原料となります。
コーティング材料には主成分として樹脂、顔料、溶剤があります。種々の機能を付与するためには添加剤がどの成分に作用するかが重要であります。そのためにはコーティング材料製造過程のどの時点で配合し、如何に製造するかが重要です。これを誤ると狙った機能が出ないばかりか不良品を作ることにもなります。
コーティング材料の各種機能発現のために使用する添加剤の選定とその使用法は材料開発・トラブルシューティングにおいて重要です。それには多くの経験によることもあります。各機能発現の専門家に執筆頂き、これらの目的に対応し、読者の仕事に大いに寄与することを願っています。
(「はじめに」より)
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第1章 | コーティング剤の機能と改質方法 |
1 | コーティング剤の構成と機能 |
2 | コーティング剤の機能向上と添加剤の機能 |
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第2章 | 各種コーティング技術と添加剤 |
1節 | フィルムコーティングにおける添加剤 |
1 | 表面制御技術としてのコーティング法 |
2 | コート液に必要な特性 |
3 | コーティングにおける添加剤の効果 |
2節 | インキコーティングにおける添加剤の活用 |
1 | オフセットインキ |
1.1 | オフセットインキの転移方式とインキ膜性能 |
1.2 | オフセットインキに使われる添加剤 |
1.3 | オフセット印刷での泡の問題 |
2 | 水性インキ |
2.1 | グラビアインキとフレキソインキの転移方法 |
2.2 | 水性インキ用添加剤 |
3 | UVインクジェットインク |
3.1 | 吐出からインク膜形成 |
4 | 水性UVコーティングからUV-PUDによるコーティング |
4.1 | 水性UVコーティング |
4.2 | UV-PUDコーティング |
3節 | グラビア印刷インキコーティングにおける添加剤の活用 |
1 | グラビアインキの概略組成 |
2 | グラビアインキの構成例と用途例 |
3 | グラビアインキの品質設計 |
4 | グラビア印刷インキコーティングに求められる特性 |
5 | 各種添加剤の配合例および注意事項 |
5.1 | 次に上記現象の具体的対策と必要に応じて使用される添加剤について述べる。 |
5.2 | 各種現象の解決に用いられる添加剤の配合量と注意事項 |
6 | まとめ |
4節 | 粘着剤コーティングにおける添加剤の活用 |
1 | 粘着剤の種類と添加剤の配合 |
2 | 粘着剤の相容性と評価 |
2.1 | ポリマーブレンドとは? |
2.2 | ポリマーブレンドの相容性 |
2.2.1 | 相容性の予測(混合の熱力学) |
2.2.2 | 相分離 |
2.3 | 相容性の評価 |
3 | 粘着剤における添加剤の活用事例 |
3.1 | 熱伝導性粘着シート |
3.2 | 粘着特性の制御 |
3.2.1 | アクリル系粘着剤/フッ素コポリマーブレンド |
3.2.2 | UV硬化型粘着剤 |
5節 | 塗料コーティングにおける添加剤の活用 |
1 | 添加剤の役割 |
2 | 塗料・塗装・塗膜の欠陥現象と添加剤の種類 |
3 | 流動性を制御する添加剤 |
3.1 | 流動の種類 |
3.2 | 揺変剤の種類とその効果 |
4 | 表面・界面を制御する添加剤 |
4.1 | 湿潤・分散剤の種類 |
4.2 | 表面調整剤 |
5 | おわりに |
6節 | 電子材料のコーティングにおける添加剤の活用 |
1 | 添加剤による表面張力制御に基づくレジスト上の気泡の捕獲と脱離 |
2 | レジストパターン内の気泡移動 |
3 | 原子間力顕微鏡(AFM)によるナノ気泡観察 |
4 | レジスト上のナノ気泡の剥離力測定 |
5 | スピンコート時に生じるレジスト膜の濡れ不良 |
6 | レジストパターンの付着性 |
7 | AFMによる直接剥離法によるレジストパターンの付着性解析 |
8 | レジスト膜の環境応力亀裂 |
7節 | 導電性ペーストのコーティングにおける添加剤の活用 |
1 | 導電性ペーストの種類と構成成分 |
1.1 | 導電性ペーストの種類 |
1.2 | 銀ペーストの構成成分 |
2 | 銀ペーストの塗布・吐出工程及び膜に要求される特性 |
2.1 | 塗布・吐出工程の種類 |
2.2 | 銀ペーストに要求される性能 |
3 | 要求特性を満たすための材料技術 |
3.1 | 銀粉末特性の最適化 |
3.2 | 銀ペーストにおける添加剤の適用例 |
4 | 添加剤の活用事例 |
4.1 | 導電ペースト用銀粉末 |
4.2 | 熱硬化型エポキシ系銀ペースト |
4.3 | LTCC回路基板用銀ペースト |
4.4 | 自動車ガラス用銀ペースト |
8節 | 接着剤・封止材のコーティング技術と添加剤の活用 |
1 | 求められるコーティング特性 |
2 | 固体表面上の液体の濡れ性の原理 |
3 | 吸湿によるコーティング特性への影響 |
4 | 接着強度に及ぼすコーティング条件 |
5 | 接着剤・封止材のコーティング方法 |
6 | 添加剤によるコーティング特性の改善 |
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第3章 | コーティング液状材料性能をコントロールする添加剤 |
1 | 流動性調整効果 |
2 | 顔料分散性効果 |
3 | 貯蔵安定性効果 |
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第4章 | 乾燥・硬化挙動をコントロールする添加剤 |
1節 | 光による乾燥速度の調整 |
1 | 蒸気圧と乾燥速度 |
2 | 光応答性分子 |
3 | 光照射による乾燥抑制 |
2節 | 常温乾燥型塗料・インキにおける乾燥性調整効果 |
1 | 適用分野 |
2 | 乾燥剤(ドライヤー)の種類 |
3 | ドライヤーの活性を支配する環境因子 |
4 | 添加剤の影響 |
5 | 劣化 |
6 | 黄変 |
3節 | 常温・加熱硬化型ポリウレタン塗料における硬化性調整効果 |
1 | PUR原料 |
1.1 | イソシアネート類 |
1.2 | ポリオール |
2 | PUR塗料 |
2.1 | PUR塗料の分類と種類 |
2.2 | PUR塗料の特徴 |
2.3 | PUR塗料原料 |
3 | PUR塗料の設計と硬化性調整 |
3.1 | バインダーの樹脂設計・ポリオールの例 |
3.2 | 硬化剤の設計 |
3.3 | NOCインデックス |
3.4 | 触媒選択と配合量 |
3.5 | その他の添加樹脂 |
4 | 硬化性の測定 |
4.1 | 塗料性状変化と塗膜性状変化 |
4.2 | 反応基減少率 |
4.3 | 塗膜性能変化 |
4.4 | 架橋度測定 |
5 | 代表的PUR塗料での硬化性調整の例 |
5.1 | 2液型PUR |
5.2 | 1液型PUR |
4節 | UV硬化における硬化性調整効果 |
1 | UV硬化と加熱硬化の特長 |
2 | UV硬化皮膜形成要件の最適化と添加剤のかかわり |
3 | 添加剤の選択と効果 |
4 | 添加剤と照射方法の組み合わせによる硬化性調整 |
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第5章 | コーティング表面特性をコントロールする添加剤 |
1節 | 表面形状(平滑性)・光沢・鮮映性調整効果 |
1 | 表面形状(平滑性)調整効果 |
2 | 光沢調整効果 |
3 | 鮮映性調整効果 |
4 | 表面への機能の付与 |
2節 | 添加剤による耐摩耗性の向上 |
1 | 耐摩耗性の重要性と摩耗の支配因子 |
2 | 潤滑材料を使用する方法 |
2.1 | 液状潤滑材料を添加する |
2.2 | 固体潤滑材料を添加する |
2.3 | 固体潤滑材料の実際の使い方 |
3 | 高硬度の無機化合物を使用化する方法 |
3.1 | 代表的な高耐摩耗性無機化合物とその特徴 |
3.2 | 使用上の留意点 |
3.3 | 高硬度の無機化合物実際の使い方 |
4 | まとめ |
3節 | ポリロタキサンを用いた塗料設計 |
1 | スライドリングマテリアルについて |
2 | スライドリングマテリアルの基本設計 |
3 | スライドリングマテリアルスの硬化物の粘弾特性 |
4 | SRMの応用例の紹介 |
5 | 用途展開 |
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第6章 | コーティング膜性能をコントロールする添加剤 |
1節 | 接着性・層間付着性調整効果 |
1 | 接着性に及ぼす添加剤の効果 |
2 | 塗装系の層間付着性 |
2.1 | 塗り間隔と層間はく離現象 |
2.1.1 | 塗り間隔が長いと層間はく離する場合 |
2.1.2 | 塗り間隔が短いと層間はく離する場合 |
2節 | UV硬化における付着性調整効果 |
1 | 加熱硬化とUV硬化プロセスの比較 |
2 | 付着性に影響する皮膜の硬化性と皮膜の内部状態の変化、照射強度の関係 |
2.1 | UV照射による皮膜の内部状態の変化 |
2.2 | 皮膜の硬化性と照射照度の関係 |
3 | 皮膜のUV硬化性と添加顔料の粒子形状との関係 |
4 | 付着性の調整(T)−配合・皮膜特性、および皮膜・基材の界面化学的性質にかかわる要因からのアプローチ |
4.1 | 皮膜、基材の表面張力:皮膜のヌレの改善 |
4.2 | 皮膜内部応力の低減 |
4.3 | 皮膜構成成分の混合状態の経時変化 |
5 | 付着性の調整(U)−基材前処理からのアプローチ |
5.1 | プライマー処理 |
3節 | ラテックス塗料の耐水性・耐溶剤性向上のために主体または補助として使われる添加剤と使い方 |
1 | ラテックス塗膜の欠点と発生理由 |
2 | 架橋による改善(各架橋系の特徴と効果を最大にする手段) |
2.1 | シラノール基の縮合 |
2.2 | カルボニル基−ヒドラジド反応 |
2.3 | カルボン酸−カルボジイミドの反応 |
2.4 | その他架橋反応 |
3 | 親水性低分子添加剤のデメリットを最小にする手段 |
4 | 表面・界面の改質 |
4節 | ポリウレタン塗料における耐水性・耐溶剤性の調整と改良 |
1 | PURコーティング材料の耐水性と耐溶剤性レベル把握 |
1.1 | 1次物性と2次物性 |
1.2 | どんな分野で注目されるのか |
2 | PUR原料の観点から |
2.1 | ポリオール |
2.2 | ポリイソシアネート |
3 | 架橋の影響 |
5節 | 抗菌・防カビ剤・防腐剤 |
1 | 薬剤選定 |
2 | 効果測定 |
3 | バイオサイドの効果 |
4 | 物性特性 |
5 | 安全特性 |
6 | 規制特性 |
7 | 開発トピックス −安全な新規防腐抗菌剤− |
6節 | 高反射率塗料設計の添加剤について |
1 | 高反射率塗料 |
2 | 高反射率塗料設計のポイント |
3 | 高反射率塗料の性能試験方法 |
4 | 高反射率塗料用樹脂について |
5 | 高反射率顔料について |
6 | 高反射率機能維持の汚染防止添加剤について |
7 | 高反射率材料の効果 |
8 | 高反射率材料の適用例 |
9 | 高反射率塗料に対する法制度の支援 |
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第7章 | 耐久性能をコントロールする添加剤 |
1節 | コーテイング膜の耐候性への効果 |
1 | 耐候性を左右する要因 |
2.1 | コーテイング膜構成 |
2.2 | 環境劣化因子 |
3 | 耐候性試験技術 |
4 | 耐久性維持における添加剤への期待 |
2節 | 耐候性向上の為の安定化技術 |
1 | 耐候性に影響を及ぼす因子 |
2 | 影響因子とそれにより引き起こされる劣化について |
3 | 耐候性向上の為の安定化技術 |
3節 | 防食性向上効果 |
1 | 腐食抑制の方法と防錆顔料 |
2 | 防錆顔料の種類、特徴、主要用途 |
3 | 防錆顔料の働き |
4 | 各分野別防錆顔料の開発状況と問題点 |
4節 | シリコーン樹脂 |
1 | シロキサン結合の特徴 |
2 | シリコーン樹脂の構成 |
3 | シリコーン樹脂の硬化機構 |
4 | シリコーンレジンの特徴 |
4.1 | 耐熱性 |
4.2 | 耐候性 |
5 | シリコーンレジンの組成と特性との関係 |
6 | シリコーンレジンの形態 |
7 | アルコキシオリゴマー |
7.1 | メチル系オリゴマー |
7.2 | メチルフェニル系オリゴマー |
7.3 | 有機官能基含有オリゴマー、有機置換基非含有オリゴマー |
8 | 難燃剤としての応用 |
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<資料> 添加剤メーカー情報 (会社名、担当部署、住所、TEL/FAX、扱い品目) (株)ADEKA、エアープロダクツジャパン(株)、キクチカラー(株)、楠本化成(株)、 サンノプコ(株)、信越化学工業(株)、センカ(株)、東レ・ダウコーニング(株)、 日清紡ケミカル(株)、日本アエロジル(株)、日本エンバイロケミカルズ(株)、 日本曹達(株)、富士シリシア化学(株)、丸尾カルシウム(株)・・・・
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※執筆者、構成は予告なく変更することがあります。予めご了承ください。 |