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プラズマCVDにおける成膜条件の最適化に向けた
反応機構の理解とプロセス制御・成膜事例
■「所望の薄膜」を形成するプラズマCVDプロセスの確立に向けて■

[コードNo.18STM044]

■体裁/ B5判並製本 328ページ
■発行/ 2018年 9月27日 サイエンス&テクノロジー出版(株)
■定価/ 55,000円(税・送料込価格)
■ISBNコード/ 978-4-86428-170-6

著者

白藤立 大阪市立大学
松田彰久       
市川幸美 東京都市大学
林康明 京都工芸繊維大学
加藤俊顕 東北大学
鈴木弘郎 東北大学
金子俊郎 東北大学
篠原正典 佐世保工業高等専門学校
猪原武士 佐世保工業高等専門学校
柳生義人 佐世保工業高等専門学校
大島多美子佐世保工業高等専門学校
川崎仁晴 佐世保工業高等専門学校
山田英明 (国研)産業技術総合研究所
尾関和秀 茨城大学
山内智 茨城大学
洋志 大陽日酸(株)
村上彰一 SPPテクノロジーズ(株)
東和文 (株)島津製作所
寅丸雅光 (株)日本製鋼所
牟田浩司 近畿大学
小島洋治 広島県立総合技術研究所
島田学 広島大学
久保優 広島大学

趣旨

 プラズマCVDで「所望の薄膜」を形成するには……本書はそのプロセスへの近道を示す1冊でありたいという想いから、ご執筆様方の多大なるご理解ご協力のもとに発刊されました。

 プラズマCVDでは反応系が複雑であるがために、時には場当たり的に成膜条件・レシピを確立させることがあるかと存じます。しかし、もし少しでも狙いが定められるなら、少しでも条件が絞り込めるなら、プロセスの確立とそしてその先に待つ「プラズマCVDの恩恵を受けた部材/製品の開発」により近づくことができるのでは、という考えを基盤として本書を構成しました。

 本書1章は「なぜプラズマCVDを使うのか」という問いに始まり、プラズマCVDをはじめとした各成膜手法の利点と欠点を整理・比較しています。その目的は「なぜプラズマCVDを使うのか」という問いに強い説得力をもって答えられるように、その立ち位置を理解する必要があるからだと述べられています。2章ではプロセスプラズマを操る上で理解すべき物理的側面としてプラズマの電磁気学的な構造を、3章は物理的側面と同等に重要な化学反応や輸送過程といった化学工学的な側面を、そして4章には成膜メカニズムがかなり詳細に明らかにされた成膜例をもとに、最終的な膜構造に直結する表面反応の機構が解説されています。
つづく5章ではa-Si:H系膜を堆積する場合を例に成膜時に考慮すべき事柄を、最後に、6章では各専門家が得た成膜プロセス最適化への影響因子に関する貴重なご知見を詳述していただだきました。

 本書発刊にあたり、大阪市立大学 白藤立先生をはじめとしたご執筆様方に多大なるご理解ご協力を頂いたことへ、あらためて心から感謝の意を表します。

                                                             書籍企画担当

目次

第1章目的に応じた成膜方式の選定
1. なぜプラズマCVDを使うのか
2. ドライvs.ウェット
3. PVDとCVD
4. PVDとCVDに共通の描像
4.1表面ポテンシャル・マイグレーション・熱
4.2ダングリングボンド
5. PVDとCVDの違い
5.1PVD
5.2CVD
6. スパッタ成膜
6.1スパッタリング
6.2スパッタ成膜のガス圧力
7. プラズマCVD
7.1低温の恩恵
7.2非平衡の恩恵
豆知識
1-1:真空蒸着とスパッタ成膜
1-2:スパッタリング率のイオンエネルギー依存性
1-3:スパッタ成膜の適用例
1-4:ULSI製造工程における各種成膜法の利用比率
1-5:ULSI製造工程におけるプラズマCVDの適用例
1-6:なぜ集積回路のCu配線はメッキなのか
第2章適切に制御するための「物理的側面」の理解
1. 気体放電
1.1 気体の電気伝導
1.2 タウンゼントの放電理論
1.3 電離係数
1.4 二次電子放出係数
1.5 パッシェンの法則
2. 直流放電プラズマ
2.1 直流放電プラズマの電流電圧特性
2.2 直流放電プラズマの構造
2.3 直流放電プラズマの生成過程
2.3.1荷電粒子密度の決定機構:電離生成と輸送消滅
2.3.2プラズマの電荷中性の原因:両極性拡散
2.3.3電位と電場の空間分布
2.3.4定常状態における電離レートの空間分布
3. RF容量結合型プラズマ(RF CCP)
3.1 交流駆動と周波数選定
3.2 なぜ交流か
3.3 RF CCPの周波数依存性
3.4 RF CCPの電位分布の基本的性質
3.5 カップリングコンデンサと自己バイアス
3.6 自己バイアス発生のメカニズム
3.7 電極面積比依存性
3.7.1電源とRF電極が直結されている場合
3.7.2電源とRF電極の間にコンデンサがある場合
3.8 RFシースを通過したイオンのエネルギー分布
3.8.1イオンが高周波に追従しない場合
3.8.2イオンが高周波に追従する場合
3.8.3イオンが高周波に「ある程度」追従する場合
4. RF誘導結合型プラズマ(RF ICP)
4.1 ICPの特徴(1):低圧・高密度
4.2 ICPの特徴(2):低プラズマ電位、イオンの密度とエネルギーの独立制御
4.3 表皮効果
4.4 CCPとICPの特性比較
5. スパッタ用プラズマ源
5.1 直流平行平板型スパッタ成膜装置
5.2 高周波平行平板型スパッタ
5.3 マグネトロンスパッタ
豆知識
2-1:そもそもプラズマとは
2-2:プラズマの温度
2-3:デバイ長
2-4:シース
2-5:両極性拡散
2-6:弱電離プラズマ中の荷電粒子の消滅機構
2-7:電荷中性プラズマの形成
2-8:定常状態における電子の生成と消滅
2-9:保護抵抗
2-10:Debyeシースの電位差と厚み
2-11:Child-Langmuirシースの電位差と厚み
2-12:なぜRFか?
2-13:周波数に関する法的要請
2-14:ICPの難点とファラデーシールド
第3章適切に制御するための「化学的側面」の理解
1. はじめに
2. 制御パラメータと内部パラメータ
3. 一次反応過程
3.1 電子衝突過程
3.2 電子衝突解離の無選択性
3.3 高解離度の場合のガス組成変化
4. 二次反応過程
4.1 平均自由行程
4.2 二次反応の最初の相手は親ガス
4.3 一次反応と定常状態は直結しない
4.4 二次反応の圧力依存性
4.5 準安定励起原子の寄与
4.5.1Ar準安定励起原子によるSiH4の解離
4.5.2Ar準安定励起原子によるH2Oの解離
4.5.3準安定励起原子による電離(Penning電離)
5. 輸送過程
5.1 拡散
5.2 ドリフト
5.3 移流
5.3.1面内均一性(上流と下流)
5.3.2一次反応と二次反応の寄与率(滞在時間)
5.3.3薄膜堆積における滞在時間の影響
5.3.4エッチングにおける滞在時間の影響
5.3.5滞在時間と粒子間衝突回数
5.4 表面に飛来する粒子フラックス
5.4.1表面への化学種のフラックス
6. 表面反応過程
6.1 物理吸着と化学吸着
6.2 表面泳動(表面マイグレーション)
豆知識
3-1:滞在時間の計算時の注意
3-2:滞在時間と電子衝突回数
3-3:ガスの種類とプラズマ物性
第4章最終的な膜構造に直結する表面反応の機構
1. 膜構造とその欠陥
2. 膜性能を左右する表面反応
3. 基板温度設定の指針
3.1 基板温度は「適度に」高い方が良い
3.2 基板温度は過度に高いと良くない
3.3 クロスリンクと基板温度
3.3.1表面反応モデル
3.3.2クロスリンクモデルの実証
3.3.3水素の自発的熱脱離の実証
3.3.4「適度」な高温とは
3.3.5基板温度設定の指針
4. 異なる基板温度で成膜された膜の物性
4.1 結晶性の基板温度依存性
4.2 欠陥密度の基板温度依存性
4.3 成膜速度の基板温度依存性
5. イオン関与によるトレンチ埋め込みと膜のストレス緩和
5.1 トレンチ埋め込み
5.2 ストレス制御
6. 成膜前駆体の選択的解離と機能基の含有
6.1 有機無機ハイブリッド膜
6.2 フッ化炭素膜へのベンゼン環構造含有
豆知識
4-1:プラズマCVDとa-Si:H
4-2:成膜速度と基板温度
・物理吸着に支配されている場合
・化学吸着に支配されている場合
・プラズマCVDの場合(その1)
・プラズマCVDの場合(その2)
4-3:平坦化技術(エッチバック)
4-4:膜の応力(ストレス)と基板の反り
4-5:成膜前駆体の付着確率の計測方法
4-6:スパッタリング率のイオン入射角依存性
4-7:ThorntonのStructure Zone Model
第5章成膜条件の最適化において考慮すべき条件
はじめに
1. パウダーの発生制御
1.1 気相中で生成されるパウダーの制御
1.2 剥離により発生するパウダーの制御
2. 剥離対策
3. 膜質の均一化
3.1 プラズマの基板面方向一様性
3.2 ラジカル密度の基板面方向一様性
3.3 膜質の均一性
3.4 Si系薄膜の例
4. 成膜速度
4.1 高速成膜
4.2 低速成膜
5. 成膜条件がプラズマパラメータおよび膜物性に与える影響
5.1 a-Siと微結晶Siの例
5.2 窒化Siの例
おわりに
第6章成膜プロセス最適化への影響因子および成膜事例
第1節プラズマCVDによるグラフェンの成長とその場偏光解析モニタリング
はじめに
1. 実験装置および方法
1.1 マグネトロンプラズマ装置
1.2 偏光解析装置
1.3 実験方法
2. 実験結果と解析
2.1 成長試料の表面分析
2.2 グラフェン成長過程の偏光解析モニタリング
3. グラフェンの成長初期過程に関する考察
おわりに
第2節産業デバイスに向けたグラフェンナノリボンの大規模集積化合成法の開発
はじめに
1. 研究背景
1.1 グラフェンナノリボン
1.2 一般的なグラフェンナノリボンの形成手法と特徴
2. グラフェンナノリボンの集積化合成
2.1 新規合成手法の開発
2.2 グラフェンナノリボンの電気伝導特性
2.3 グラフェンナノリボンの合成機構
2.4 グラフェンナノリボンの大規模集積化
おわりに
第3節ダイヤモンドの合成技術開発の現状と課題
はじめに
1. 人工ダイヤモンドの合成方法
2. 合成メカニズム
3. 現状の合成手法における課題
まとめ
第4節トライアンドエラーを脱却するためのアモルファス炭素のプラズマ化学気相堆積における表面反応の理解
1. アモルファス炭素膜のプラズマ化学気相堆積中の反応計測の必要性
2. 多重内部反射赤外分光法を用いたプラズマ中の反応計測
3. プラズマ化学気相堆積における赤外分光反応解析
3.1 実験方法
3.2 反応解析例
3.2.1メタンプラズマによる膜堆積の赤外分光解析例
3.2.2アセチレンプラズマによる膜堆積の赤外分光解析例
おわりに
第5節スケールアップの留意点:成膜装置の規模がDLC膜に与える影響
はじめに
1. DLC膜内の水素量評価
1.1 水素量の測定
1.2 DLC膜の作製条件及び水素量変化
1.3 高分解能イオン散乱による表面近傍のDLC膜組成について
2. DLC膜内の欠陥の評価
2.1 陽電子消滅法(PAS)の原理
2.2 DLC膜の欠陥評価結果について
3. その他の分析
3.1 ラマン分光法
3.2 X線反射率法
4. DLC膜の硬度評価
まとめ
第6節有機シランを用いたSiN膜開発における更なる低温化(≦120℃)への取り組み
はじめに
1. 有機シラン原料のスクリーニング
2. 成膜・評価方法
3. 評価結果・考察
おわりに
第7節電子デバイス用透明SiNxバリア膜の低温形成技術−Si/N組成比率と膜の光学物性の関係についての考察−
はじめに
1. 種々のプラズマCVD法
2. 成膜条件
3. ガス流量比とSiNx膜の光透過率との関係
4. ラザフォード後方散乱(RBS)とXPSによるSiNx膜の構造評価
まとめ
第8節OLED用封止膜の低温多層化・柔軟性改善に寄与するCVD/ALD複合装置の開発
はじめに
1. CVD/ALD複合装置
1.1 複合装置の概要
1.2 ICP-CVD装置
1.3 ALD装置
2. ALD+CVD複合膜の特性
2.1 ALDによる優れた欠陥補修作用
2.2 折り曲げ耐性とWVTR値
2.3 SiNx膜の薄膜化
おわりに
第9節超音速噴流を用いた高速・大面積均一な微結晶シリコン製膜プロセス
はじめに
1. 研究の背景と目的
2. 超音速噴流の適用
3. ガス流れの調査
4. プラズマの調査
5. 膜質向上対策
5.1 マルチロッド電極
5.2 マルチホローカソード電極
6. 製膜実験
おわりに
第10節超親水性コーティングのための酸化チタン薄膜形成技術
はじめに
1. 形成方法と制御パラメータ
2. TTIPの分解過程
3. 低温での親水性酸化チタンコーティング
4. 熱CVDとプラズマCVD混合プロセスによるTiO2コーティング
おわりに
第11節プラズマCVD法を利用した樹脂製車窓の開発と成膜条件の検討
はじめに
1. プラズマCVD法による耐摩耗性ハードコート技術の開発
1.1 耐摩耗性ハードコート膜の作製
1.2 特性評価方法
1.3 プラズマCVD法によるハードコート膜の作製と耐摩耗性の評価
2. テーバー摩耗試験と耐摩耗性能の発現
2.1 テーバー摩耗試験について
2.2 ハードコート層の膜厚と耐摩耗性について
2.3 ハードコート層の硬さと耐摩耗性について
2.4 耐摩耗性能発現に及ぼす成膜基板材質の影響について
3. 車窓用部品試作品の製作
3.1 車窓用部品の選定
3.2 プラズマCVD法によるハードコート成膜
3.3 ハードコート層の膜厚と耐摩耗性の評価
おわりに
第12節高周波非平衡プラズマ中の微粒子の挙動のその場観察・計測と微粒子による汚染の制御
はじめに
1. プラズマ中での微粒子の生成と動力学
2. プラズマ中の微粒子の観察・計測
2.1 レーザー光散乱
2.2 フーリエ変換赤外分光法
2.3 光吸光法
2.4 その他のその場計測手法
3. プラズマ中微粒子汚染の抑制
おわりに
巻末付録「理解を助ける一問一答」
Q.プラズマはなぜ低温?
Q.なぜCCPは低密度プラズマでICPは高密度なのか?
Q.タウンゼントの放電理論は実務で役に立つのか?
Q.パッシェンの法則は実利的に何かの役に立つのか?
Q.イオン化・励起・解離の頻度が最も高いところは?
Q.O2やH2Oが関与すると放電しにくくなるのはなぜ?



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