本書は、"顧客に気に入られる"製品開発・サービスの創出を目的に構成しました。
具体的には、ニーズ調査や感性評価等で実施する「アンケート調査」を主題として、人が感じたことをいかに聞き出し、抽出し、開発に反映するかをまとめた1冊としています。
現在は多くの製品・サービスにおいて、性能・機能などの「機能的価値」だけでは差がつかないといわれています。
例えば「今の時刻がわかる」ことだけでいえば、ブランド品の高価な時計と安価な時計の間に大きな差はありません。
しかし「文字盤のデザインが好き」「このブランド・メーカのファンである」「流行っているから(流行に敏感な自分でいたいから)」等の理由から、私たちは自然と自分が好ましいと思う方を選んできました。
人が物事を通して得た印象・感情・心地等を、いかに製品・サービスの価値と結びつけ、"顧客に気に入られる"ようにするか。そのためには、人が気付いたあるいは感じたけれど気付いていない「想い」をなるべく素直に聞き出すことが、はじめの一歩であるように思います。
本書の内容は以下の通りです。
・感覚的便益の実現過程と音響機器メーカ2社の取り組み比較 (1章)
・感性情報を得るための、官能評価の実施方法と勘どころ (2章)
・アンケート作成と調査時に気をつけるべき点、その対処 (3章)
・アンケートデータをいかにまとめ、有益な情報を抽出するか (4章)
・人が受けた印象を測る、または測るための手法やアンケート用紙例 (5章)
本書が、皆様の「製品・サービス」と「顧客の気持ち」を結ぶ一助となるような書籍となれば幸いです。
最後になりましたが、本書に快くご執筆賜りましたご執筆者の皆様をはじめ、ご相談等ご協力を賜りました先生方にも心から厚く御礼を申し上げます。(書籍企画担当)
| |
第1章 | 感覚ベースのユーザ便益開発:音響機器開発における評価者の役割 |
はじめに |
1. | ユーザ便益の種類 |
2. | 感覚的便益の解釈 |
2.1 | 一般ユーザ評価型 |
2.2 | 開発者評価型 |
3. | ケース:音響機器の製品開発 |
3.1 | ヤマハ株式会社 |
3.2 | 株式会社JVCケンウッド |
3.3 | 発見事項 |
4. | 考察 |
4.1 | 評価者の外部化と内部化 |
4.2 | 評価者に求められる能力 |
5. | 結論 |
|
第2章 | ユーザーニーズを引き出す官能評価の実施方法 |
はじめに |
1. | 良い商品を開発するには |
1.1 | 評価目的 |
2. | 評価手順と計画 |
3. | 計画時の注意点 |
3.1 | 評価項目設定 |
3.2 | 回答方法 |
3.3 | 被験者属性の設定 |
3.4 | 解析・統計処理 |
4. | 評価手法 |
4.1 | 一対比較法 |
4.2 | 順位法 |
4.3 | SD法 |
5. | 解析手法 |
6. | 評価結果の解釈とまとめ方 |
6.1 | 納得する官能評価結果の伝え方 |
6.2 | 結果まとめの際のチェックポイント |
6.3 | 結論 |
おわりに |
|
第3章 | 真意を聞き出すためのアンケート設計 |
第1節 | アンケート調査の質問の作り方 |
はじめに |
1. | アンケートとインタビューの違い |
2. | アンケート調査を実施する際の注意事項 |
2.1 | 既存調査をチェックすること |
2.2 | 調査相手の限界を考慮すること |
2.3 | アンケート全体の構成と質問の流れに留意すること |
3. | 質問文を作る時の注意事項 |
3.1 | 「聞きたいこと」と質問は違う |
3.2 | 多義的な言葉やあいまいな言葉は避けること |
3.3 | ダブルバーレルを避けること |
3.4 | 誘導質問を避けること |
3.5 | 回答者のホンネとタテマエ |
3.6 | キャリーオーバー効果を避けること |
3.7 | 回答しやすくする工夫(助成手段) |
3.8 | プルービング |
4. | 回答形式の重要性 |
4.1 | 自由回答型 |
4.2 | 選択肢型 |
4.2.1 | 賛否法 |
4.2.2 | シングルアンサー(単一回答、SA:Single Answer) |
4.2.3 | マルチアンサー(複数回答、MA:Multi Answer) |
4.2.4 | カテゴリー尺度法 |
4.2.5 | SD法(Semantic Differential Method) |
4.2.6 | 順位法 |
4.2.7 | 数値分配法 |
5. | 実施方法が回答に与える影響 |
おわりに |
|
第2節 | 官能評価で用いられる評価用語の収集方法および選定指針 |
はじめに |
1. | 官能評価と用語 |
1.1 | まずは用語 |
1.2 | 用語とは |
1.3 | ソムリエの言葉とブレンダーの言葉 |
1.4 | モノづくりの用語、新たな感覚を探査する官能空間に対するそれぞれの用語 |
2. | 官能用語の選定の難しさ |
2.1 | あるメーカーでの官能用語の選定事例 |
2.2 | 実施上の問題点 |
3. | モノづくり言葉の言葉出しの工夫と選定の試み |
3.1 | 意外と集まらない用語 |
3.2 | 言葉の性質を考える |
4. | 用語の機能 |
4.1 | 言葉の大小による位置付け |
4.2 | 目的系、操作系、コンセプト系 |
4.3 | 分化、汎化、樹状図化 |
5. | 官能空間の設定でのイメージの用語 |
5.1 | 色、香りなどのイメージの記述 |
5.2 | 言葉の構成 |
おわりに |
|
第3節 | 人の感性データを測定するツールとしてのオノマトペの有効性と制約 |
はじめに |
1. | オノマトペのユーザー意識調査への応用 |
2. | オノマトペが持つ五感関連性に基づく分類 |
2.1 | オノマトペ語彙の偏りをいかに解消するか? |
3. | オノマトペをもちいた評価に表記形態がもたらす影響 |
3.1 | 主観的な五感イメージに与える影響 |
3.2 | 主観的な意味的印象に与える影響 |
おわりに |
|
第4節 | Web調査が抱える課題とその改善 |
はじめに |
1. | 調査の正確さを決める要素 |
2. | 作業誤差について |
3. | 測定誤差について |
4. | 非回答誤差について |
5. | 網羅誤差について |
6. | Web調査が抱える課題 |
|
第5節 | Web調査における市場代表性の高い無作為抽出方法 |
はじめに |
1. | Webパネル調査の数字の偏りという課題とその要因 |
1.1 | 調査手法別の市場規模推移 |
1.2 | Webパネル調査の数字の偏りという課題とその要因 |
1.3 | Web調査における偏りの補正 |
2. | Web調査における市場代表性の高い無作為抽出方法 |
2.1 | 本研究の概略 |
2.2 | 本研究で使用するデータ |
2.3 | 検証方法 |
3. | 検証と考察 |
おわりに |
|
第4章 | アンケート回答データの分析方法 |
第1節 | 官能評価における統計解析と統計ソフトウェア |
1. | 官能評価の方法 |
2. | 官能評価の分析 |
3. | 統計解析用ソフトウェア |
4. | 有意性検定の例 |
5. | 多変量解析の例 |
|
第2節 | ユーザが求める製品像を抽出する感性データマイニング |
はじめに |
1. | アンケートの実施 |
1.1 | アンケート項目の選定 |
1.2 | 感性の階層構造 |
1.3 | ユーザの多様性を考慮した分析 |
2. | ファジィC4.5決定木を用いた感性ルール抽出法 |
2.1 | 決定木を用いたアンケート事例の分類 |
2.2 | 決定木からの感性ルール抽出 |
2.3 | ファジィ決定木による事例の分割 |
2.4 | ファジィC4.5決定木作成アルゴリズム |
3. | 決定木の信頼性と感性ルールの解釈 |
3.1 | 葉接点の生成条件 |
3.2 | テスト事例による決定木の信頼性評価 |
3.3 | クロスバリデーションによる信頼性の高い感性ルールの抽出手法 |
4. | ランニングシューズデザインの嗜好性分析 |
おわりに |
|
第5章 | 感性にもとづく製品開発/評価・検証事例 |
第1節 | 外観・色彩・意匠性 |
〔1〕黒染絹布を用いた漆調ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)の開発 |
はじめに |
1. | 方法 |
1.1 | サンプル |
1.2 | 測色 |
1.3 | 印象評価 |
2. | 結果 |
2.1 | 測色結果 |
2.2 | 印象評価結果 |
3. | 考察 |
おわりに |
|
〔2〕ユニバーサルデザインのための色の象徴性の検討 |
はじめに |
1. | 色の象徴性とは |
2. | 色の象徴性と生活行動との関係を見出すための実験方法 |
2.1 | 生活行動に関する言語の選出 |
2.2 | 生活行動と連想色の実験 |
3. | 生活行動と色の象徴性との関係 |
3.1 | 生活行動を連想する色彩の傾向 |
3.2 | 連想色の一致傾向 |
おわりに |
|
第2節 | 使用感・心地・快適性 |
〔1〕自動二輪車用ヘッドアップディスプレイを用いた情報提示タイミングの検討と評価 |
はじめに |
1. | 自動二輪車用ヘッドアップディスプレイ |
2. | 情報提示タイミング実験 |
2.1 | 実験環境 |
2.2 | 実験方法 |
2.3 | 評価方法 |
3. | 情報提示タイミングの実験結果とその評価 |
3.1 | 視線計測結果と分析 |
3.2 | 主観的評価結果と分析 |
3.3 | 二つの分析結果と考察 |
おわりに |
|
〔2〕PCキーボードのキースイッチの操作性評価に関する研究―タッチタイピングによる打鍵法の差異がもたらす操作性評価の相違について― |
問題 |
調査 |
目的 |
(1)キーボードのキースイッチのユーザビリティ(とりわけ押し心地)を規定している心理的要因の抽出 |
(2)タッチタイピングによる打鍵法の違いがもたらすキースイッチの押し心地評価の違いについての検証 |
方法 |
質問紙 |
装置 |
手続き |
参加者 |
結果 |
(1)キースイッチの押し心地評価の評価軸(因子)の抽出 |
(2)タッチタイピングができるか否かによるキースイッチの押し心地評価の相違の検証 |
考察 |
(1)キースイッチの押し心地評価の評価軸(因子)について |
(2)ノービスとエキスパートのキースイッチの押し心地評価の相違について |
|
〔3〕塗装された木材の粗滑感の“ながら評価” |
はじめに |
1. | 試料の準備 |
2. | 粗滑感の評価 |
2.1 | VAS法による触り心地の“ながら評価” |
2.2 | VAS法について |
2.3 | 評価語の選択 |
2.4 | 見ないで擦る |
2.5 | 見ながら擦る |
2.6 | 統計解析 |
3. | 粗滑感に及ぼす視覚バイアスの確認 |
3.1 | 「見ないで擦る」条件と「見ながら擦る」条件の比較 |
3.2 | 粗滑感に現れる視覚バイアスの構造 |
おわりに |
|
〔4〕化粧用ブラシの力学特性と触感の関係 |
はじめに |
1. | 化粧用具の使用感 |
2. | 化粧用ブラシ |
3. | 化粧用ブラシの触感評価 |
3.1 | 試料の特徴 |
3.2 | 化粧用ブラシの力学特性 |
3.2.1 | 使用方法の模擬 |
3.2.2 | 測定装置の機構 |
3.3 | 官能検査による評価 |
3.3.1 | 用語の選定 |
3.3.2 | 検査の実施方法 |
4. | 力学特性と官能検査の相関 |
おわりに |
|
〔5〕個々人の嗜好を反映する感性データの簡易処理法 |
はじめに |
1. | 従来の一対比較法とその問題点 |
2. | 一点選択法の方法 |
3. | 一点選択法の検証方法 |
4. | 一点選択法の妥当性と再現性の検証方法 |
5. | 一点選択法の検証結果 |
5.1 | 最適径の検証結果 |
5.2 | 評価時間の検証結果 |
5.3 | 評価回数の検証結果 |
5.4 | 一点選択法で評価した最適径の妥当性と再現性の検証結果 |
6. | 考察 |
6.1 | 一点選択法の特徴 |
6.2 | 一点選択法による評価値の特徴 |
まとめ |
|
第3節 | 行動・意思・体験・情動 |
〔1〕商品写真の照明条件と閲覧時に提示された香りが購買意欲に与える影響 |
はじめに |
1. | 研究対象 |
1.1 | 照明の効果 |
1.2 | 香りの効果 |
2. | 実験 |
2.1 | 目的と方法 |
2.2 | 評価対象 |
2.3 | 香り刺激 |
2.4 | 手続き |
2.4.1 | タスク(T):印象評価タスク |
2.4.2 | タスク(U):購買意欲評価タスク |
3. | 結果と考察 |
3.1 | 評価値平均 |
3.2 | 3要因分散分析 |
3.3 | パス解析 |
おわりに |
|
〔2〕車を運転する楽しさ−Driving Pleasure−の感性評価手法と計算手法 |
はじめに |
1. | ドライビングプレジャーの感性評価手法 |
1.1 | 評価グリッド法 |
1.2 | 統計的官能評価法 |
2. | ドライビングプレジャーの計算手法 |
2.1 | 車両運動力学の基礎 |
2.2 | 強化学習ドライバモデル |
おわりに |
|
〔3〕消費者属性を考慮した自動車使用時に重視する感覚評価項目の研究 |
はじめに |
1. | 先行研究の整理と調査対象の選定 |
1.1 | 消費者行動研究と感性、使用経験 |
1.2 | 調査対象としての自動車と感性 |
2. | 方法 |
2.1 | 手続き |
2.2 | 調査対象者 |
2.3 | アンケート調査期間・方法 |
2.4 | 調査アンケート内容 |
3. | 調査結果 |
3.1 | 感覚重要度の検討 |
3.2 | 性差での検討 |
3.3 | 世代差の検討 |
4. | 考察 |
おわりに |
|
〔4〕子どもの主観評定に基づく体験学習型ワークショップの定量評価−気持ちの変化を捉える評価ツール『気持ち温度計』によるケーススタディ− |
はじめに |
1. | 関連研究と従来の評価法 |
1.1 | 子どもによる主観評定 |
1.2 | 従来のワークショップにおける評価 |
1.3 | SD法を活用した評価 |
2. | 段階評定法による評価とその問題点 |
2.1 | ワークショップの概要 |
2.2 | 方法 |
2.2.1 | 評価シート |
2.2.2 | 手続き |
2.3 | 結果と考察 |
2.4 | まとめ |
3. | ME法を活用した評価 |
3.1 | ワークショップの概要 |
3.2 | 方法 |
3.2.1 | 評価シート |
3.2.2 | 手続き |
3.2.3 | ワークショップにおける評価の位置づけ |
3.3 | 結果と考察 |
3.4 | 段階評定法とME法について−ワークショップスタッフによる報告− |
おわりに |
|
〔5〕匂い手がかりによって喚起される自伝的記憶の特性評価・測定 |
はじめに |
1. | 従来の知見 |
2. | 研究目的 |
3. | 予備調査 |
3.1 | 方法 |
3.2 | 結果と考察 |
4. | 本調査 |
4.1 | 方法 |
4.2 | 結果と考察 |
おわりに |