空気中の酸素を正極活物質として利用することにより高いエネルギー密度を有する金属空気電池。一次電池としては補聴器用のボタン型電池や非常用電池として既に市販されていますが、二次電池化に向けては多くの課題が残っています。近年、電気自動車や電子デバイスをはじめ、あらゆるモノに利用される電池に更なる性能向上が求められる中、金属空気二次電池はそのエネルギー密度の高さから「究極の二次電池」としてますます注目を集めています。
本書では金属空気二次電池に関する最新の研究・開発動向について、負極材料別の各種金属空気二次電池の特徴・課題から、正極・電解質など部材毎の開発事例と高機能化への展開、電解質の種類によるセル形状の検討や機能最大化のためのスタック構造の設計、マテリアルズインフォマティクス(MI)を活用した電池材料の網羅的探索まで、専門家による解説を幅広く掲載しています。
最後になりましたが、本書に快くご執筆賜りましたご執筆者の皆様に心から厚く御礼を申し上げますと共に、本書が金属空気二次電池の開発・発展のお役に立つ1冊となれば幸いです。
(書籍企画担当)
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第1章 | 金属空気二次電池の開発動向 |
第1節 | リチウム空気二次電池の開発動向 |
1. | リチウム空気二次電池の構造と動作原理 |
2. | リチウム空気二次電池の特性と課題 |
3. | 電解液の改良による特性向上 |
3.1 | レドックスメディエータによる充電過電圧の低減 |
3.2 | 混合アニオン系電解液によるデンドライトの抑制 |
4. | スタック開発 |
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第2節 | 亜鉛空気二次電池の開発動向 |
1. | 亜鉛空気二次電池の特徴 |
1.1 | 高いエネルギー密度 |
1.2 | 水系電解液を用いることによる高い安全性と出力特性 |
1.3 | 放電生成物が負極側に蓄積されることによる高い空気極特性 |
1.4 | 安価な亜鉛を用いることによる低コスト化 |
1.5 | リチウム空気二次電池に対する欠点 |
2. | 一次電池としての開発の歴史 |
2.1 | 空気極の開発 |
2.2 | 亜鉛極の開発 |
3. | 二次電池としての研究開発動向 |
3.1 | 空気極の過電圧低減 |
3.2 | 空気極の寿命改善 |
3.3 | 亜鉛極の寿命改善 |
3.4 | 電解液の寿命改善 |
3.5 | メカニカル充電方式 |
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第3節 | 水素/空気二次電池の開発動向とFDK(株)の量産化に向けた取り組み |
1. | 空気電池の二次電池化の課題 |
2. | 水素/空気二次電池の反応式 |
3. | 水素/空気二次電池の特徴 |
4. | 水素/空気二次電池の開発状況 |
4.1 | 水素吸蔵合金負極の開発 |
4.1.1 | 水素吸蔵合金負極に対する要求事項 |
4.1.2 | 水素吸蔵合金の選択 |
4.1.3 | 水素吸蔵合金負極の電極構成 |
4.2 | 空気極の開発 |
4.2.1 | 空気極に対する要求事項 |
4.2.2 | 酸素触媒の選択 |
4.2.3 | 空気極の開発 |
4.3 | 水素/空気二次電池のセル開発 |
4.3.1 | 充放電サイクル特性の改善 |
5. | FDK(株)での量産化に向けた取り組み |
5.1 | 10Ahセルの開発 |
5.2 | 水素/空気電池二次電池の積層セルの検討 |
6. | 今後の展開 |
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第4節 | アルミニウム空気電池の二次電池化の検討 |
1. | 研究背景 |
2. | 結果と考察 |
2.1 | 水系電解質を用いたアルミニウム空気電池(準二次電池) |
2.2 | イオン液体系電解質を用いたアルミニウム空気電池(二次電池) |
3. | 問題点 |
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第2章 | 正極(空気極)の開発動向 |
第1節 | グラフェンを用いた正極の開発 |
1. | 空気極の構成 |
2. | 酸素発生反応における空気極の課題 |
3. | グラフェンの合成 |
3.1 | 化学剥離法によるグラフェンの合成方法 |
3.2 | 物性評価 |
4. | 電気化学特性の評価 |
4.1 | グラフェンのアノード酸化耐久性評価 |
4.1.1 | アノード酸化耐久性評価方法 |
4.1.2 | アノード酸化耐久性評価結果 |
4.2 | グラフェンを用いた空気極の酸素還元・酸素発生活性評価 |
4.2.1 | 空気極の作製方法と酸素還元活性・酸素発生活性評価方法 |
4.2.2 | 回転リングディスク電極を用いた酸素還元経路の解析方法 |
4.2.3 | グラフェンの酸素還元・酸素発生活性の評価結果 |
4.3 | ペロブスカイト型酸化物触媒の担持効果 |
4.3.1 | ペロブスカイト型触媒の担持方法 |
4.3.2 | ペロブスカイト型酸化物担持グラフェンの酸素還元・酸素発生活性 |
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第2節 | カーボンナノチューブを用いた正極の開発 |
1. | カーボンナノチューブ空気極の放電容量 |
2. | カーボンナノチューブ空気極のレート特性 |
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第3節 | 異種元素含有カーボンを用いた正極材の開発 |
1. | ソリューションプラズマとは |
2. | ソリューションプラズマによる窒素含有カーボン材料の合成 |
2.1 | 窒素含有カーボン材料の合成 |
2.2 | 合成した窒素含有カーボン材料の酸素還元反応に対する触媒特性 |
2.3 | 窒素含有カーボン系複合材料の合成 |
2.4 | 合成した窒素含有カーボン複合材料の酸素還元反応に対する触媒特性 |
2.5 | 合成した窒素含有カーボン複合材料を正極材に用いた充放電特性 |
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第3章 | 電解質の開発動向 |
第1節 | リチウム空気二次電池用電解質および添加剤の開発動向 |
1. | 電解質の評価手法 |
1.1 | 電解質の安定性評価 |
1.2 | Cyclic voltammetry測定 |
1.3 | in situ mass spectrometry測定 |
1.4 | in situ分光測定 |
2. | 電解質開発動向 |
2.1 | エーテル |
2.2 | スルホキシド |
2.3 | アミド |
2.4 | リン酸エステル |
2.5 | イオン液体 |
3. | 酸素正極用の添加剤開発動向 |
3.1 | Li2O2の溶解性 |
3.2 | 溶解性触媒 |
3.3 | Li2O2の電子伝導性 |
4. | 金属リチウム負極用の添加剤開発動向 |
4.1 | 大気成分が与える影響 |
4.2 | 正極とのクロスオーバーが与える影響 |
4.3 | 複数化合物で構成される添加剤:協調効果の積極的な利用 |
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第2節 | グライム系電解液の特徴と開発動向 |
1. | 非水系LABのグライム系電解液 |
2. | グライム系電解液の特徴と設計指針 |
2.1 | グライム系電解液の電解液物性 |
2.2 | イオン導電率向上のための設計指針 |
3. | レドックスメディエータとLiNO3/G4電解液 |
3.1 | LiNO3/G4電解液の二元機能と課題 |
3.2 | デュアル溶媒化によるLiNO3/G4電解液の物性向上 |
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第3節 | 金属/空気二次電池用固体電解質の作製と全固体鉄/空気電池の構築 |
1. | 金属/空気電池 |
2. | 鉄/空気電池 |
3. | 酸化鉄担持カーボン負極の作製 |
4. | ゾル−ゲル法によるKOH-ZrO2固体電解質の作製 |
5. | 全固体型鉄/空気電池の構築 |
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第4章 | 金属空気二次電池の材料・セル形状とスタックの構造 |
1. | 金属空気二次電池の材料・セル形状 |
1.1 | 負極活物質 |
1.2 | 電解液とセル形状 |
1.2.1 | 水溶液系電解液 |
1.2.2 | 非水溶液系電解液 |
1.2.3 | 固体電解質 |
2. | スタック(積層)構造 |
3. | その他のセルの形状 |
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第5章 | マテリアルズインフォマティクスを活用した金属空気電池用材料の網羅的探索 |
1. | 量子化学計算 |
1.1 | 概論 |
1.2 | 密度汎関数法 |
2. | 回帰分析 |
3. | リチウム空気電池のORR触媒の探索方法 |
4. | β-MnO2のORRに影響を与える因子と触媒のエネルギー準位の関係 |
5. | 第4、5、6周期金属酸化物触媒への展開 |
6. | 新規金属酸化物触媒の網羅的探索:計算モデルの作製とエネルギー計算 |
7. | 新規金属酸化物触媒の網羅的探索:d-band centerのエネルギー準位による酸素分子の結合長の変化およびORR活性の予測 |