短時間で硬化し、光を利用するため省エネルギーである点や溶剤フリーである点など、環境保全の観点から今後ますます注目されると考えられるUV硬化技術。現在、コーティング塗料・印刷用インク・接着剤などから、フォトレジスト・エレクトロニクス・自動車関連部材など様々な産業分野で利用されており、近年、更なる開発の加速により材料および硬化機構の高機能化・高性能化が進み、新たな市場・用途展開が期待されています。
しかしながら、UV硬化技術は「構成成分や硬化機構などの材料技術」「光源の照射装置とそのプロセス」「液体から固体への変化を正しく調べる評価手法」など、様々な要素技術から成り立っており、また、その利用用途・産業の広がりから、技術全般を俯瞰することが難しい状況にあります。そこで、本書ではUV硬化技術の要素技術とその利用・開発動向について、基礎から最新の開発動向・事例まで、専門家の方々より幅広くご執筆を賜りました。
本書は2部構成となっております。第1部では、樹脂の基本的な構成成分である「ベースレジン・モノマー・光重合開始剤」の種類・特徴・使い分けから、UVを発生させる光源装置および照射技術、さらに硬化前後の液体から固体への変化を評価する指針まで、要素技術を中心に解説しています。また、第2部では、「塗料・コーティング」「インクジェットインク」「接着剤」「ナノインプリント」「3Dプリンター」など、利用用途毎のUV硬化樹脂の開発動向と今後の展望を幅広く掲載しました。
本書がUV硬化技術に携わっている方、あるいはこれから利用を検討されている方の知識習得や問題を解決する一助となり、UV硬化技術の更なる開発・発展のお役に立つ1冊となれば幸いです。
(書籍企画担当)
| |
【第1部】 UV硬化樹脂に関わる材料・硬化技術 |
|
第1章 | UV硬化技術の構成要素、解析手法とその評価および技術課題
|
1. | UV硬化技術とは |
2. | UV硬化技術の構成要素 |
2.1 | 光源 |
2.2 | 反応機構から見た硬化過程と材料 |
2.2.1 | ラジカル型 |
2.2.2 | カチオン型 |
2.2.3 | アニオン型 |
2.3 | 光重合開始剤 |
2.3.1 | 光ラジカル発生剤 |
2.3.2 | 光酸発生剤 |
2.3.3 | 光塩基発生剤
|
3. | UV硬化反応過程の解析法と硬化物特性の評価法 |
3.1 | UV硬化反応過程の解析法 |
3.2 | 硬化物の特性評価法 |
4. | UV硬化技術が抱える課題 |
4.1 | 光源と開始剤のマッチング |
4.2 | 硬化阻害 |
4.3 | 硬化収縮 |
4.4 | 厚膜や着色膜の硬化 |
5. | 今後の展望 |
|
第2章 | ベースレジン・モノマーを中心としたUV硬化性樹脂の構成成分の基礎と応用
|
1. | UV 硬化性樹脂の構成成分 |
1.1 | ベースレジン |
1.1.1 | ウレタンアクリレート |
1.1.2 | エポキシアクリレート |
1.1.3 | ポリマー |
1.2 | モノマー成分 |
2. | UV 硬化性樹脂選定のポイント |
2.1 | モノマー |
2.2 | ベースレジンとモノマー |
3. | 最近のトピックス |
3.1 | パーフロロポリエーテルジアクリレート類 |
3.2 | ポリグリセリンポリエーテルアクリレート |
3.3 | アクリルアミド系架橋剤 |
4. | 最近の開発事例「カーボンナノチューブ(CNT)を利用した帯電防止コーティング剤の開発」 |
|
第3章 | 光重合開始剤・増感剤の開発動向と硬化技術の高機能化
|
第1節 | 光重合開始剤・増感剤の基礎 |
1. | 光ラジカル重合開始剤 |
1.1 | ベンゾイン型 |
1.2 | ベンジルケタール型 |
1.3 | ヒドロキシアセトフェノン型 |
1.4 | アシルホスフィンオキシド型 |
1.5 | 水素引き抜き型 |
2. | 光酸発生剤(Photoacid Generator, PAG) |
3. | 光塩基発生剤(Photobase Generator, PBG) |
3.1 | 非イオン型PBGの開発と応用 |
3.2 | イオン型PBGの開発と応用 |
第2節 | 分子増幅を駆使した影部分のUV硬化技術 |
1. | 影部分のUV硬化 |
1.1 | 能動的な加熱の利用 |
1.1.1 | 連鎖的な酸・塩基発生反応の利用 |
1.2 | 自発的な発熱(重合熱)の利用 |
1.2.1 | フロンタル重合を利用した影部のカチオンUV硬化 |
1.2.2 | Self-propagating polymerizationによる影部硬化 |
1.3 | 室温以下で硬化可能な系 |
1.3.1 | 光誘起レドックス開始重合の利用 |
1.3.2 | シアノアクリラートの光アニオン重合 |
第3節 | 精密UV硬化技術の開発動向と応用展開 |
1. | 光精密ラジカル重合の研究動向 |
2. | 重合誘起型ミクロ相分離に基づくコーティングへの機能付与 |
3. | 光精密ラジカル重合のUV硬化への適用(精密UV硬化)と重合誘起型相分離 |
|
第4章 | UV硬化ランプシステムに関わる照射技術と装置事例
|
1. | UV とは |
2. | UV 硬化に用いられる光源 |
2.1 | UV ランプ(高圧水銀ランプ)の発光原理 |
2.2 | UV ランプバルブ |
2.3 | 高圧水銀灯の装置 |
2.4 | UV-LED |
2.5 | UV-LED の発光波長 |
2.6 | UV 硬化用LED 装置 |
3. | UV 照射プロセスについて |
3.1 | 照度と積算光量 |
3.2 | 硬化反応に対する照度の影響 |
3.3 | 酸素阻害の影響 |
3.4 | UV 硬化反応の効率を上げる照射プロセス |
|
第5章 | 光硬化型材料の硬化とその評価
|
1. | 固体と液体 |
1.1 | 物理化学的に見た液体と固体 |
1.1.1 | 単純な固体と液体 |
1.1.2 | ポリマーとは |
1.1.3 | ガラス化による固体化 |
1.1.4 | ネットワーク構造の形成 |
1.2 | 固体と液体の違いをレオロジーとしてみると |
1.2.1 | 固体と液体の力学モデル |
1.2.2 | 粘弾性体とマックスウェルモデル |
1.2.3 | 一般化マックスウェルモデル |
1.2.4 | 応力緩和で見た固体 |
2. | 液状材料としての評価 |
2.1 | 流動特性の評価 |
2.1.1 | B型粘度計での粘度測定 |
2.1.2 | 外的条件の変化と生じる応力 |
2.2 | 温度と水素結合 |
2.2.1 | ウレタンアクリレート類の水素結合 |
2.2.2 | ウレタンアクリレート類の流動特性の温度依存性 |
3. | 硬化過程の評価 |
3.1 | 重合過程の評価 |
3.1.1 | 重合性官能基の消失による重合性の評価 |
3.1.2 | Photo-DSC 測定による重合性の評価 |
3.2 | 硬化過程の物理的変化について |
3.2.1 | Photo Rheometer 測定 |
3.2.2 | 重合時の体積収縮 |
3.2.3 | 硬化時に生じる応力集中の評価 |
4. | 固体の評価 |
4.1 | 粘弾性特性の評価 |
4.1.1 | 動的粘弾性とは |
4.1.2 | 粘弾性特性とその用途との関係 |
4.2 | その他の評価 |
4.2.1 | 薄膜での表面特性の評価 |
|
【第2部】 UV硬化樹脂の利用用途の広がりと最近の市場・技術トレンド |
|
第1章 | UV硬化技術の歴史と利用用途の広がりおよび今後の展望
|
1. | UV硬化技術の歴史と用途の広がり |
2. | UV硬化技術応用のトレンド |
2.1 | 材料のトレンド |
2.1.1 | モノマーと硬化系 |
2.1.2 | 開始剤 |
2.2 | 機能性のトレンド |
2.2.1 | 表面機能 |
2.2.2 | 光学的機能 |
2.2.3 | 機械的機能 |
2.2.4 | 電気的機能 |
2.2.5 | サステイナブル性 |
2.3 | 分野のトレンド |
3. | 今後の展望 |
|
第2章 | 塗料・コーティング用UV硬化樹脂の開発動向
|
第1節 | 塗料・コーティング用紫外線(UV)硬化樹脂の現状と今後 |
| 〜ウレタンアクリレートを中心に〜 |
1. | Rad Cure 塗料市場概要 |
2. | UV 硬化塗料の特長と用途 |
3. | 各種アクリレート概要と特長 |
3.1 | 種類と特長 |
3.2 | ウレタンアクリレート |
4. | 塗料の種類・配合と硬化過程 |
4.1 | モノキュアー |
4.2 | デュアルキュアー塗料とその適用事例 |
5. | 環境対応型UV硬化塗料 |
5.1 | 水性UV 硬化塗料の展開 |
5.2 | 各種水分散性UV硬化樹脂 |
5.3 | 水性ウレタンアクリレート(UV 硬化PUD)とその応用事例 |
第2節 | 光開始剤内蔵型樹脂の開発事例とハードコートへの応用 |
1. | UV硬化プロセスとその応用 |
2. | 光開始剤内蔵型高屈折樹脂の特徴 |
2.1 | 特徴 |
3. | 光開始剤内蔵型高屈折樹脂の特性値 |
4. | 光開始剤内蔵型高屈折樹脂と有機−無機ハイブリット化樹脂の作成と考察 |
|
第3章 | インクジェット用UV硬化型インクの開発動向
1. | インクジェットにおけるプリントメカニズム |
2. | インクジェット用紫外線硬化型インクの主要成分 |
2.1 | モノマー |
2.2 | 重合開始剤と増感剤 |
2.3 | 重合禁止剤 |
2.4 | 水性紫外線硬化型インク |
3. | インクジェットにおける吐出安定性 |
4. | インクジェット応用における紫外線硬化型インクの開発動向 |
4.1 | インク小滴化と酸素阻害 |
4.2 | ゲル化によるピニング |
4.3 | デコラティブへの適用と高延伸性インク |
4.4 | 食品包装でのマイグレーション防止 |
| 第4章 | 接着剤用UV硬化樹脂の開発動向
| 第1節 | UV硬化型接着剤の基礎とその評価 |
1. | 概要 |
2. | 分類 |
2.1 | ラジカル重合型 |
2.2 | カチオン重合型 |
2.3 | アニオン重合型 |
2.4 | 付加重合型 |
2.5 | その他 |
3. | 評価 |
第2節 | UV硬化型接着剤用ウレタンアクリレートの開発事例 |
1. | DVD ボンディング用へのウレタンアクリレートの適用 |
2. | タッチパネルへの適用 |
| 第5章 | UV硬化樹脂のナノインプリントへの応用
1. | ナノインプリント法とUV硬化樹脂 |
2. | UVナノインプリントのためのUV硬化樹脂の要件 |
2.1 | ナノ空間への樹脂充填過程 |
2.2 | ナノ空間中でのUV光照射過程 |
2.3 | ナノ空間中でのUV硬化過程 |
2.4 | 離型とUV硬化樹脂 |
2.5 | UV硬化収縮 |
3. | UVナノインプリントの応用 |
3.1 | UVナノインプリントの用途 |
3.2 | UVナノインプリント用UV硬化樹脂レジストの現状と今後 |
4. | まとめ |
| 第6章 | 3Dプリンター用UV硬化樹脂の開発動向
第1節 | 「3Dプリンター」用途での光硬化性樹脂の開発動向 |
1. | 3Dプリンティングとその分類 |
1.1 | 材料市場 |
2. | 3Dプリンティングとその用途 |
3. | 3Dプリンティングで使われる手段 |
4. | 光硬化性樹脂を用いる3Dプリンティング |
4.1 | レーザを用いる大型の自由液面方式液槽光重合法 |
4.2 | 下面からレーザ光を照射する規制液面方式と下面から |
| UV-LEDや紫外線ランプを用いてDLPを用いて光照射する規制液面方式 |
4.2.1 | レーザ光を利用する下面照射規制液面方式 |
4.2.2 | DLPやLCDを利用する下面照射規制液面方式 |
4.2.3 | 光硬化性樹脂の開発動向 |
4.3 | インクジェット方式により光硬化性樹脂を吐出し紫外線ランプにより硬化させて積層する方式(MJT) |
5. | 造形物の用途とその材料 |
5.1 | 自由液面方式VPP造形物の用途と材料 |
5.2 | 規制液面方式VPP造形物の用途と材料開発動向 |
5.3 | インクジェットタイプの材料噴射方式の造形機 |
6. | 光硬化性樹脂を利用する新しい造形 |
6.1 | セラミック造形
| 6.2 | ポリテトラフルオロエチレンの造形 |
6.3 | 金属造形 |
7. | まとめと今後の展望 |
第2節 | 光造形3Dゲルプリンティング技術の開発動向 |
1. | 3D ゲルプリンティング用材料 |
1.1 | 光重合開始剤 |
1.2 | 光吸収剤 |
1.3 | 3D ゲルプリンティングのハードウェア |
| | |