匂いや嗅覚のメカニズムは、視覚や聴覚などの他の感覚に比べて大変複雑で、その定量化は難しいとされてきました。しかし近年は、匂いの受容メカニズム解明やセンサ・分析技術の研究開発、香りの応用技術の開発が進展し、医療やヘルスケア・エンターテインメント等、あらゆる業界に匂いのセンシング技術や香り応用技術は幅広く活用されています。
そこで本書では、匂い・嗅覚のメカニズムに関する最新研究や、日夜進歩するセンサの開発、嗅覚や匂い効果を活用した電子機器・製品、異臭分析や消臭製品の開発などの情報について、“匂いの最前線”を一冊にまとめました。
第1章 | 嗅覚、匂いの受容メカニズム、香りが心・体にもたらす影響について |
第1節 | においの受容メカニズム |
はじめに |
1. | 嗅上皮と嗅粘液 |
2. | 嗅覚受容体の情報伝達メカニズム |
3. | 嗅覚受容体の発見 |
4. | 嗅覚受容体遺伝子の発現パターン |
5. | においを識別する仕組み |
6. | 嗅球への投射とにおい地図 |
7. | 僧帽細胞と房飾細胞 |
8. | 嗅皮質の役割 |
9. | 最新の嗅覚研究トレンド |
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第2節 | 匂いの脳内神経機構:匂いと情動の関係について |
はじめに |
1. | 匂いを検知する神経機構 |
1.1 | 嗅上皮での匂い検知 |
1.2 | 嗅上皮から嗅球へ |
1.3 | 嗅球から嗅皮質へ |
2. | 匂いを情動、意欲、行動に結びつける神経機構 |
2.1 | 匂いと心、記憶の関係 |
2.2 | 嗅皮質と心、記憶を司る脳領域の関係 |
2.3 | 匂いを情動、意欲、行動に結びつける特定脳領域 |
2.4 | その他の嗅皮質領域の働き |
おわりに |
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第2章 | 悪臭や異臭の基礎と分析・消臭技術 |
第1節 | 異臭の分析技術と解決事例 |
はじめに |
1. | 異臭の定義 |
2. | 異臭の原因物質について |
3. | 異臭分析方法について |
4. | 異臭分析の例と得られた結果の考察および解決事例について |
4.1 | ガスタイトシリンジによる分析 |
4.2 | SPMEによる分析例 |
4.2.1 | 食品のカビ臭の分析例 |
4.2.2 | 食品の消毒臭の分析例 |
4.3 | 溶剤抽出(直接)による分析法 |
4.3.1 | 食品工場使用水の消毒臭の分析例 |
4.4 | モノトラップ(MonoTrapR:ジーエルサイエンス社製品)による分析例 |
4.4.1 | 室内中の臭気物質の分析例 |
4.5 | 精油定量装置を使用した常圧蒸留による分析例 |
4.5.1 | ポリエチレンフィルムのカビ臭の分析例 |
4.6 | ロータリーエバポレーターを使用した減圧蒸留による分析例 |
4.6.1 | 鶏肉のカビ臭の分析例 |
まとめ |
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第2節 | 消臭技術の基礎と嗅覚受容メカニズムを応用した消臭剤の開発 |
1. | 生活のにおいと遷移 |
2. | 身の回りの不快臭 |
2.1 | 不快臭の発生メカニズム |
2.2 | 知覚における特徴 |
3. | 様々な消臭手法とその特徴 |
3.1 | 生物的消臭 |
3.2 | 化学的消臭 |
3.3 | 物理的消臭 |
3.4 | 感覚的消臭 |
4. | 消臭効果の評価方法 |
4.1 | 化学的消臭効果の検証 |
4.2 | 感覚的消臭効果の検証 |
5. | 嗅覚受容体と感覚的消臭 |
5.1 | 悪臭を受容する嗅覚受容体とその抑制 |
6. | 理論的な調香による製品開発の背景とその特徴 |
おわりに |
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第3章 | 匂いの評価・可視化とデバイス開発 |
第1節 | エレクトロニックノーズシステム構築のためのキーテクノロジーと応用・将来展望 |
はじめに |
1. | 「におい」のセンシング |
2. | e-Noseシステムを構築するための5つのキーテクノロジー |
2.1 | 「におい」センサシステムの概要 |
2.2 | e-Noseシステム構築のための具体的戦略 |
2.3 | アクティブe-Noseシステム |
2.4 | 「におい」物質のハンドリングとデリバリー技術 |
2.5 | ケモセンサ技術 |
2.6 | ケモセンサ信号処理技術 |
2.7 | ケモセンサ出力のパターン認識技術 |
2.8 | ネットワーク化によるセンサ情報の伝送技術 |
3. | e-Noseシステムの応用 |
4. | 将来展望 |
おわりに |
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第2節 | MSS嗅覚センサシステムの研究開発 |
はじめに |
1. | 膜型表面応力センサMSSについて |
1.1 | 開発背景と基本構成 |
1.2 | 長所と短所から見るその特性 |
2. | 感応膜について |
2.1 | 各種アプリケーションと感応膜の種類、応用例 |
2.2 | 機能性感応膜材料 |
2.3 | ニオイ成分識別性能の向上に向けた模索 |
3. | 機械学習との融合 |
4. | ニオイ情報デジタル化への検討 |
4.1 | 「擬原臭」の選定 |
4.2 | 嗅覚センサの究極形「フリーハンド測定」の実現 |
5. | 産学官連携 |
おわりに |
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第3節 | 高感度SPR免疫センサとマルチアレイ人工嗅覚システムの開発 |
はじめに:嗅覚 |
1. | 嗅覚を味覚や生体内反応と比較する |
2. | SPR免疫センサ |
2.1 | 測定原理と方法 |
2.2 | 測定結果 |
3. | マルチアレイ人工嗅覚システム |
3.1 | 測定原理と方法 |
3.2 | 適用例:食品 |
3.3 | 適用例:電気設備の保守点検 |
おわりに |
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第4節 | バイオ蛍光式ガスセンサ(バイオスニファ)と揮発性成分の定量イメージングシステム |
はじめに |
1. | 生体ガス成分の臨床利用 |
1.1 | 呼気利用の特徴 |
1.2 | 皮膚ガス利用の特徴 |
1.3 | 生体ガスセンサ・ガス放出源可視化システムの開発 |
2. | バイオ蛍光に基づくガス計測原理 |
3. | 3. 光ファイバ型バイオ蛍光式ガスセンサ(バイオスニファ) |
3.1 | センサシステム構成および基礎特性 |
3.2 | 生体ガス計測による代謝評価 |
4. | ガス成分の定量イメージングシステム(探嗅カメラ) |
4.1 | ガス成分のイメージング原理と基礎特性 |
4.2 | 生体ガスの定量イメージングによる探嗅 |
5. | ウェアラブルな生体ガスセンサへの展開 |
おわりに |
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第5節 | 昆虫の嗅覚受容のしくみを活用した匂いセンシング技術 |
| 〜「センサ細胞」・「センサ昆虫」の検出原理とその応用〜 |
はじめに |
1. | センサ細胞 |
1.1 | センサ細胞の原理検証 |
1.2 | センサ細胞によるカビ臭の簡易検査技術 |
1.3 | センサ細胞を用いた匂いの識別・濃度定量 |
2. | センサ昆虫 |
2.1 | センサ昆虫の原理検証 |
2.2 | 遺伝子ノックアウトとセンサ活用 |
おわりに |
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第6節 | ヒト嗅覚受容体セルアレイセンサーによる匂い情報DXの可能性 |
はじめに |
1. | 現在の匂いセンサーの限界 |
2. | ヒト嗅覚受容体セルアレイセンサー |
2.1 | ヒト嗅覚システムに学ぶ |
2.2 | ヒト嗅覚受容体セルアレイセンサーの開発 |
2.3 | 匂い情報における経時的変化の重要性 |
3. | ヒト嗅覚受容体セルアレイセンサーの活用例 |
3.1 | 匂いの管理(異常臭検知,無臭証明) |
3.2 | アンタゴニスト消臭剤 |
3.3 | メディカルアロマセラピー |
3.4 | 創香 |
4. | 匂いの再生 |
5. | 今後の課題 |
おわりに |
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第7節 | 生物の嗅覚受容体発現細胞を利用した気相中のにおい分子の検出と分子種の識別 |
1. | 動物が匂いを感じる流れ |
2. | 嗅粘液 |
3. | 嗅覚受容体発現細胞を用いた匂い応答評価法 |
3.1 | 嗅覚受容体を発現する培養細胞を用いた匂い分子応答検出 |
3.2 | 匂い分子の溶け込みを再現したリアルタイム応答評価の重要性 |
3.3 | 嗅覚受容体の気相刺激リアルタイム応答検出法 |
3.4 | 様々な匂い分子気相刺激方法 |
4. | 気相刺激法を用いたヒト官能評価模倣システムの応用展開 |
4.1 | 混合香料に対する評価 |
4.2 | 嗅覚粘液模倣条件での嗅覚受容体応答評価 |
おわりに |
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第8節 | 香気を特徴づける成分を探索するガスクロマトグラフ質量分析計 |
はじめに |
1. | ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いた香気分析の流れ |
2. | 香気成分のサンプリング |
2.1 | ヘッドスペース(HS)法 |
2.2 | 固相マイクロ抽出(SPME)法 |
3. | GC-MS の装置構成と原理 |
3.1 | ガスクロマトグラフ(GC) |
3.2 | 質量分析計(MS) |
4. | GC-MS を用いた特徴香気成分の探索 |
4.1 | ノンターゲット分析 |
4.2 | データベースを用いたワイドターゲット分析 |
4.3 | ワイドターゲット分析による香気分析例 |
5. | 今後の匂い測定技術の展望 |
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第4章 | 嗅覚と他の感覚機能を掛け合わせた情報伝達や体験・空間演出技術 |
第1節 | 多成分調合型嗅覚ディスプレイによる香り再現 |
1. | 研究の背景 |
2. | 研究の概要 |
2.1 | 匂い提示装置 |
2.2 | 嗅覚ディスプレイ |
2.3 | 多成分調合型嗅覚ディスプレイ |
2.4 | 機器の概要 |
2.5 | 機器の評価 |
2.6 | 官能検査で用いる精油と要素臭 |
2.7 | リサーチデモ |
2.8 | 実験結果 |
2.9 | 考察点 |
3. | 応用 |
3.1 | テレオルファクション |
3.2 | 災害等のシミュレータ |
3.3 | ディジタルサイネージ(電子公告) |
4. | 今後の展望と期待 |
4.1 | デバイス |
4.2 | アプリケーション |
まとめ |
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第2節 | 劇場やホールなどライブエンターテインメント空間における制御を目的とした 香り発生装置の開発・製品化について |
はじめに |
1. | エンタメ空間における香りの制御装置とは |
1.1 | 香り発生・制御装置の特徴 |
1.2 | 特殊効果としての香り演出の役割 |
1.3 | 香り演出のきっかけ |
2. | 香り特殊効果演出のニーズ |
2.1 | 製品化への経緯 |
2.2 | 装置の機構 |
2.3 | ユースケース |
2.3.1 | 舞台演出 |
2.3.2 | 披露宴会場 |
2.3.3 | 大規模会場 |
3. | 将来の展望 |
おわりに |
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第5章 | 医療・ヘルスケア業界における匂い情報の活用と操作・抑制技術 |
第1節 | 疾患の早期発見に向けた呼気の気体成分を測定するガスセンサ・測定装置 |
はじめに |
1. | 半導体式センサの概要 |
1.1 | 応答メカニズム |
1.2 | 酸化スズを用いた半導体式センサ |
2. | 高感度半導体式センサを用いた呼気VOC 検知器 |
2.1 | ガス種を分割して1 つのガスセンサで計測する方法 |
2.2 | 新しい測定方法のニーズ |
2.3 | 呼気VOC 検知器による肺がん検知 |
2.4 | |
3. | 気体成分を検知・識別するマルチセンサシステム装置 |
3.1 | 複数のガスセンサで同時に計測する方法 |
3.2 | リアルタイムモニタリングに適した検知・識別方法 |
3.3 | 携帯型マルチセンサシステム |
おわりに |
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第2節 | 人工嗅覚センサを介した呼気センシングによる個人認証技術 |
はじめに |
1. | 成分分析による呼気ガス個人認証の可能性探索 |
2. | 人工嗅覚センサによる呼気ガス個人認証の原理実証 |
3. | 呼気ガス個人認証の実用化へ向けた課題と最新の取り組み |
おわりに |
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第3節 | 嗅覚測定ワークフローをDXするにおい提示装置 |
はじめに |
1. | におい提示装置NOS-DX1000の開発 |
1.1 | 嗅覚測定への期待 |
1.2 | Tensor ValveTMテクノロジーと装置の特徴 |
1.3 | アロマホイール |
2. | におい制御技術とエンタテインメント |
2.1 | クリエイターツールとしてのGrid ScentTM |
2.2 | においのエフェクト |
おわりに |
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