【講演要旨】
粉末冶金(Powder Metallurgy:以下P/Mと略記する)は、焼結(金属やセラミックスなどの粉末から特異な性質を引き出すために高温(融点以下の温度)にて粒子同士を接合するもので、成分系によっては液相を介する焼結もある)という現象を利用した金属加工法であり、高度工業社会における素材や製品の製造法の1つとして重要な役割を果たしている。
P/Mの最大の魅力は粉末を成形・焼結することによって直接最終製品形状に成形(Near Net あるいは Net Shaping)できることであり、材料特性、組成、熱処理および微細組織においてかなりの自由度を持っていることから、溶製法では発現し得ない特性が得られるとともに経済的に量産できることも利点である。このような特徴を有するP/M法により、ギヤやベアリング、コネクティングロット(自動車用)などの各種機械構造用部品をはじめとして、超硬チップや金型などの切削・耐摩耗工具材料、WやMoなどの高融点金属材料、フィルターや生体用インプラントなどの多孔質材料、電気回路開閉器やパンタグラフすり板などの電気接点・集電材料、磁性コアやセンサーリングなどの磁性材料が生産されている。
従来より、高密度で高性能なP/M製品を目指して、粉末の製造から成形、焼結、後加工に至る各プロセスの改良や新しい技術の開発が多種多様な形で行われているが、まず本講では、成形・焼結技術に焦点を絞り、それらの基本的な原理から応用に至るまで概説し、ついで斬新でかつユニークなレーザーやプラズマ、マイクロ波などを使った焼結について紹介する。
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【予備知識】
専門知識は特に必要ございません。
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【習得知識】
粉からのものづくりが基礎から分かり易く理解できる。
既に粉末に携わっている技術者にとっては、より広範囲な視野を広げることができる。
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【プログラム】
1.粉末冶金とは
2.焼結技術の基礎知識
1)焼結現象について
・焼結の進行過程
・焼結のメカニズム
・粒成長と気孔
2)焼結体の特性
・結晶粒径
・密度
3)焼結技術の現状
・焼結技術の課題
・技術の現状 〜焼結技術分類〜
・技術の行方 〜コスト削減、環境対応型など〜
3.新しいプレス成形技術
1)CNC粉末成形
2)温間成形
4.バインダを利用した成形技術
1)金属粉末射出成形(MIM)
2)超音波粉末成形
5.静水圧成形技術
1)冷間静水圧成形(CIP)
2)熱間静水圧成形(HIP)
3)擬静水圧成形
4)反応熱間静水圧成形
6.粉末鍛造
7.その他の成形技術
1)粉末圧延
2)爆発成形
3)噴霧成形
8.粉末焼結の原理
1)単一成分系固相焼結
2)多成分系固相焼結
3)液相焼結
4)反応焼結
9.新しい焼結技術
1)レーザー焼結
2)プラズマ焼結
3)マイクロ波焼結
10.焼結炉の種類と特徴
1)粉末冶金に用いられる焼結炉
2)焼結炉の特徴と比較
3)雰囲気ガス
4)焼結温度と時間
11.三浦研究室の研究開発テーマと今後
・金属粉末射出成形によるニッケル基超合金Rene95の機械的特性評価
・金属粉末射出成形によるチタン合金大形部材の変形挙動
・MIMプロセスによるTi系焼結合金の疲労破壊挙動
・スーパーアロイMIM材の疲労破壊特性
・焼結Ni合金鋼における,ヘテロ組織及び転造が疲労特性に与える影響
・転造加工による焼結鋼の気孔径分布変化と疲労強度への影響
・転造方式の違いによるSCM415焼結合金鋼歯車の歯元曲げ疲労強度への影響
・レーザフォーミングによる複雑形状構造部材の創製
12.先端粉末造形技術に関する最近の研究・開発動向
〜学会、シンポジウムなどでの発表を含め〜
13.質疑応答(適宜)
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−名刺交換会−
セミナー終了後、ご希望の方はお残り頂き、講師と参加者間での名刺交換会を実施させて頂きます。
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