■マイクロバブル・ナノバブルに関して
近年、数十ナノメートル(nm)から数十マイクロメータ(μm)径のマイクロ/ナノバブル(一部でファインバブルと総称する場合がある)を利用した製品化や各種工業プロセス、農林・水産・食品分野、さらには医療・医工学分野等々への応用が多くの人々の関心を集めている。これらは、微細気泡が持つ固有で且つ優れた物理的、化学的、生理活性的特性を利用して科学技術や実用面で新しい展開を図ろうとするものである。特に最近のマイクロ/ナノバブル技術の応用展開には開発当初の予想と期待を遥かに超える目覚ましいものがある。また、微細気泡挙動に関する測定技術の飛躍的な進歩や解析技術の進化に伴って、微細気泡応用技術の背景となる物理を追究した科学的な研究も広い範囲にわたってなされるようになってきた。しかし、一方ではマイクロバブル、ナノバブル研究の当初からの不正確な情報や誤解され易い情報が未だにそのまま鵜呑みにされ、伝承されて来ている。例えば、マイクロ/ナノバブルの成り立ちについては極めて曖昧且つ不正確な理解が横行しているのも現実である。他方では、種々の気泡発生原理や機構に基づく多種多様なマイクロ/ナノバブル生成装置が市販されるようになり、マイクロ/ナノバブルを身近に体験する機会が増している。これらの中には比較的単純な気泡発生機構であるにも拘わらず大変高価なものも多い。留意すべきことは、マイクロ/ナノバブル生成装置にはそれぞれ固有の最適運転条件があり、所定の最適運転条件から外れた条件下で使用すると、期待した結果が得られない場合が多々あることである。さらに、発生するマイクロ/ナノバブルの特性等が使用する気泡生成装置によって微妙に異なることにも注意を要する。
|
■どのような内容を解説する?
本セミナーでは、先ず、マイクロ/ナノバブルの持つ諸特性や微細気泡発生原理を紹介、解説し、次いで、各種マイクロ/ナノバブル生成装置の構造、特徴、性能評価、利用における留意点について述べる。また、安価な手作りマイクロ/ナノバブル生成装置のDIYについても簡単に紹介する。次いで、実際のマイクロ/ナノバブル生成装置を用いたデモンストレーションを行い、マイクロ/ナノバブルを体感して頂く。その後、マイクロ/ナノバブル挙動に係わる幾つかのパラメータ(主に気泡径とその分布及びゼータ電位)の測定原理や長所・短所を紹介する。最後に、様々な分野で展開されているマイクロ/ナノバブル技術の応用展開についても、その一般的な動向や個別事例を多数の動画を交えて紹介・解説する。
特にマイクロ/ナノバブルの成り立ちやその挙動については誤った情報、誤解を招きかねない情報や説明が氾濫している現状に鑑み、「それって本当?」という形で幾つかのトピックスを取り上げ、微細気泡についての正しい知見を持って頂けるよう多くの根拠を示しながら丁寧に説明を行う。特にマイクロ/ナノバブル研究・技術との20年を超える係わりの中で身を以って体験したことをベースに丁寧な説明を心掛けると共に、セミナー参加者の皆様が関心をお持ちの夫々の課題について検討して頂けるだけの情報を提供したいと考えています。また、セミナー参加者の方々が抱えている問題、疑問についても可能な限り回答したい。
|
■セミナー内容
T.マイクロ/ナノバブルの基礎特性
1.マイクロ/ナノバブルとは
2.物理的特性
〜終端速度、対体積表面積、気泡内圧力、帯電作用とゼータ電位、気泡間相互作用力、
流動抵抗軽減作用、音響特性(高温・高圧場の形成、衝撃波、音響散乱特性、
ソノルミネッセンス)、バブリングによる流体物性変化〜
3.化学的特性
〜気体の溶解性と過飽和溶解、表面吸着特性と気泡崩壊・連行浮上効果、
気泡圧壊時のラジカル生成〜
4.生理学的特性
〜血管拡張・血流促進効果、除菌・殺菌・富酸素・酸化機能、発芽・生育促進〜
5.マイクロバブル・ナノバブルの成り立ちとその理解
〜「マイクロバブルは水中を上昇中に消滅する」って本当?
マイクロバブルは自然放置で完全溶解し、圧壊で「ラジカルを発生する」って本当?
マイクロバブル・ナノバブルの成り立ちと消滅−その正しい理解に向けて
「微細気泡ほど気液界面積濃度が大きい」って本当?〜
U.マイクロ/ナノバブルの発生機構と生成装置
1.マイクロ/ナノバブル発生の基本的なメカニズム
2.マイクロ/ナノバブル生成の具体的手法
〜せん断(エジェクター方式)、せん断(旋回流方式)、スタティックミキサー、
ベンチュリー、キャビテーション、加圧溶解、圧壊、多孔質膜、ナノバブル生成法各種〜
3.マイクロ/ナノバブル生成装置の特徴
〜各種生成装置による気泡発生の様子(動画)、既存の各種気泡生成装置例の仕様一覧〜
4.安価な手作りマイクロ/ナノバブル生成装置のDIY
5.マイクロ/ナノバブル生成装置のデモンストレーション(オーラテック社)
V.マイクロ/ナノバブル生成装置利用の基本的な考え方
1.総論
〜発生方法による生成気泡径の目安、各種生成法の一般的な特徴〜
2.各種装置の性能比較と評価(マイクロバブル)
〜気泡発生の様子−生成装置固有の運転条件、気泡径から見た比較・評価、
物質輸送から見た比較・評価〜
3.生成装置選定の基本的な考え方
〜技術面から見た選定(設計)のポイント、用途・目的から見た選定のポイント〜
4.生成装置の特徴を活かし、効果を発揮させるための留意点
〜最適運転条件、正しい使い方、気泡径情報、過飽和溶解、最大気液流量比、
最大ボイド率、コストと性能、流体物性に対する依存性〜
5.操作・取り扱いにおける留意点(保守とトラブル対策)
W.各種パラメータの計測方法とその特徴
1.総論
〜マイクロ/ナノバブル挙動の主なパラメータ、各種測定法による気泡径測定の目安、
市販の計測器仕様一例、各種測定法の長所と短所〜
2.気泡径・気泡径分布測定法の原理
〜フロー式画像解析法、コールター法、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法、
トラッキング法、液中パーティクルカクンター、共振式質量測定法〜
3.測定精度と分解能
〜測定法による精度と分解能の違い、「ナノバブル径測定結果は信じて良い?」〜
4.ゼータ電位
5.ボイド率
6.白濁度
X.各種分野への応用
1.各種分野における一般的利用動向
〜応用例概要、利用技術例一覧、マイクロ/ナノバブル技術の実用化・開発動向〜
2.個別事例各種
@環境分野
〜池水・湖沼の浄化、干潟の再生、ナノバブルによる海底汚泥の浄化、
油汚染土壌の浄化、原発事故による圃場汚染土壌の除染、
炭酸ガスマイクロバブルによるアルカリ廃液の中和、
オゾンマイクロバブルによる脱色・有害物質分解・殺菌〜
A農業・水産分野
〜魚貝類の養殖における病害予防と成長促進、
窒素ナノバブル海水による魚の鮮度維持、魚を眠らせ鮮度を運ぶ、
牡蠣の養殖におけるマイクロバブルによる洗浄、
蒲鉾製造における酸素ナノバブルによる殺菌、稲作への応用、
植物の開花促進・成長促進、富酸素による野菜等の成育促進〜
B医療分野
〜がん細胞の破壊、血管平滑筋の増殖作用、オゾンナノバブルによる細菌の死滅、
糖尿病による潰瘍の治療〜
C生活分野
〜洗浄効果(洗濯、食器洗浄)、オゾンマイクロバブルを利用した洗濯機、
気泡風呂、化粧品〜
Dエネルギー分野
〜流動抵抗軽減、ディーゼルエンジンの燃料改善〜
Y.まとめ
Z.質疑応答(適宜)
|
− 名 刺 交 換 な ど −
セミナー終了後、ご希望の方はお残りいただき、 講師とご受講者間での名刺交換ならびに講師へ個別質問をお受けいたします。
|