【講演要旨文】
気体は固体と異なり、反応溶液が高温になるにつれて気体成分の液体への溶解性が乏しくなり、低温になるにつれて液体中の溶存気体濃度は向上する。一方、化学反応性は高温になるにつれて向上し、低温になるにつれて低下する。相反するこれら二つの特性を共存させるために、高温・高圧下で使用可能な耐圧容器中で激しい機械的撹拌を伴いながら気液反応を実施するのが一般的であり、この方式は1世紀以上大きく変わっていない。またはフィルターによる気泡の微細化が検討されてきたが、気泡サイズに限界があり、高転換率で生成物を得るために過剰な気体送気量を必要としてきた。その結果、反応装置の初期・維持管理コストがかかるために、気相が関与する反応がクリーンかつシンプルであるにも関わらず、“ものづくり”における適用範囲は限定される。1世紀以上変わらない反応様式を変更するには「発想の転換」が必要であり、我々は「気相を液相に無理矢理押し込むのではなく、気相を液相にマイクロからナノレベルで分散させる」という着想に至った。“ファインバブル(Fine bubbles, FB)(マイクロバブル・ナノバブルと同義)”は数十nm〜数十μmの直径を有する微細気泡と定義され、mm〜cmの気泡とは異なる性質をもつ。これまで流体工学、環境工学、水産学の分野で発展しており、有機合成化学に用いた例は2010年までなかった。なぜファインバブルに着目したのか?本当に有機合成に活用できるのだろうか?研究室レベルだけでなく工業レベルにまで応用できるのだろうか?などの疑問に対し、静岡発(初)の気相が関与する環境調和型多相系有機合成プロセスを開発した経緯について最新データとともに紹介する。尚、個別の質問についても、可能な限り対応する。
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【習得知識】
1.有機溶媒中の挙動も含めたファインバブルの特性
2.ファインバブル発生装置の開発
3.気相が関与する多相系有機反応へのファインバブルの活用
4.空気酸化反応、水素添加反応、過酸化水素合成、光酸化反応、フロー反応などへの応用
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【プログラム】
1.はじめに
1.1 反応の分類
2.ファインバブル
2.1 ファインバブルの性質
2.2 ファインバブルの一般的利用例
2.3 ファインバブルの発生方式
2.4 有機合成用ファインバブル発生装置
2.5 ファイルバブル技術の標準化動向
3.ファインバブル手法によるアルコールの酸化反応
3.1 一般的な空気酸化反応
3.2 TEMPO触媒系空気酸化反応
3.3 メタルフリー空気酸化反応
4.ファインバブル手法による接触水素化(水添反応の実例)
4.1 アルケン・アルキンの接触水素化
4.2 芳香族ニトロ化合物の接触水素化
5.ファインバブル手法による過酸化水素合成
5.1 過酸化水素の工業的製法
5.2 アントラキノン法によるワンポット過酸化水素合成
6.ファインバブル手法による光酸化反応
6.1 一重項O2によるγ-Terpineneの酸化的芳香族化
6.2 一重項O2によるイミンの酸化的脱水素化ホモカップリング
6.3 一重項O2によるスルフィドの酸化反応
7.ファインバブルの効果
7.1 ファインバブル効果の実証
7.2 有機溶媒中における溶存酸素飽和率
7.3 ファインバブルの計測・測定技術
8.おわりに
8.1 ファインバブル手法の立ち位置
8.2 関連する特許について
8.3 本技術の優位性整理・用途展開・可能性
9.最新の成果
9.1 ファインバブルフロー合成
9.2 その他
10.質疑応答【適宜】
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− 名 刺 交 換 な ど −
セミナー終了後、ご希望の方はお残りいただき、 講師とご受講者間での名刺交換ならびに講師へ個別質問をお受けいたします。
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