メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2013年3月19日(Vol.116) 『蝶』 ≫雑記帳トップへ
『蝶』
蝶はその翅の色彩と模様から美しいものの代名詞とされてきました。
今回はそんな蝶についての豆知識をお届けします。
◎蝶の名前
紋白蝶(モンシロチョウ)や黄蝶、浅葱斑(アサギマダラ)は色彩や模様から名前がつけられて
います。
何からの由来なのかわかりにくい蝶の名前の由来をご紹介します。
○揚翅蝶 …花とかにとまって蜜を吸う時、翅を閉じていたり開いていたりする
(アゲハチョウ) 蝶がいますが、揚翅蝶は翅を揚げて、震わせていることから。
○小灰蝶 …小さなかわいい蝶で、翅を開いたようすがしじみ貝が開いたように
(シジミチョウ) 見えることから「蜆蝶」と書くこともあります。
○せせり蝶 …「せせる」という言葉が「つつきほる」「ひっかいてほじくる」
という意味で、この蝶の蜜を吸う時や飛ぶ時のようすから。
次に面白い名前の蝶です。
○C立翅 …後ろの翅の裏に銀色のCの模様があることから。
(シータテハ) 同じようにLの模様があるのはL立翅(エルタテハ)と呼ばれて
います。
○幽霊せせり …正体不明で幽霊のようだということで命名されたとのことです。
(ユウレイセセリ) 実物はかわいい眼をして忙しそうにせわしく飛んでいま
○擬立翅 …擬きとは似て非なるものの意味ですが、れっきとしたタテハチョウ
(タテハモドキ) 科の一種だそうです。
青擬立翅(アオタテハモドキ)も同様です。
参考文献:中山周平・海野和男
『日本のチョウ 小学館の学習百科図鑑39』
白水隆・黒子浩
『標準原色図鑑全集 1. 蝶・蛾』
◎蝶のトリビア
○蝶々夫人の夫は晴れ男?
蝶といえばオペラの「蝶々夫人」が浮かびます。
その中でも有名なのはアリア「ある晴れた日に」ですね。
蝶々夫人がそのアリアを歌い待つのが夫の「ピンカートン」なので、そこから晴天の
事を「ピーカン」と呼ぶようになったという説があります。
諸説ありますが、蝶つながりでご紹介しました。
○冬眠でなく夏眠する蝶
蝶のような変温動物にとって冬と夏は生きてゆくのに厳しい季節です。
蝶が寒い冬を、冬眠で乗り切るのはご存じの通りです。
珍しいのは夏眠する蝶です。
キチョウ(黄蝶)の一種やシロチョウ(白蝶)、ヒョウモンチョウ(豹紋蝶)の仲間は羽化
して成虫になった後、夏の暑さをしのぐため、休眠(夏眠)します。
人間の豹紋(ヒョウモン)の大阪のオバチャンは一年中元気一杯ですが
○2,500kmも飛ぶ蝶も
アサギマダラ(浅葱斑)は日本全土から朝鮮半島、中国、台湾、ヒマラヤ山脈まで分布
していますが、その成虫は1年のうちに日本本土と南西諸島・台湾の間を往復している
ことが知られています。
中には直線距離で1,500km以上移動した個体や1日あたり200km以上の速さで移動した
個体もあります。
2011年10月10日に和歌山県から放たれたマーキングしたアサギマダラが、83日後の
12月31日に約2,500km離れた香港で捕獲されています。
蝶というと儚く、弱いイメージがありますが、種類によっては相当に逞しい蝶もある
のですね。
○蝶は「1頭、2 頭」と数える?
蝶は昆虫なので「匹」で数えるのが正しいと思いがちですが、TVのクイズ番組など
での正解は専門的には「1 頭、2 頭、3 頭…」と数えるとされています。
英語では5頭の牛を“five head of cattle”というように家畜を“head”で数えます。
また、日本語にも「頭数(あたまかず)を揃える」とか人数を「頭」で表すことが
あります。
西洋の動物園では珍しい蝶を飼育していますが、動物園で飼育している生物全体の
個体数を種類に関係なく“head”で数えます。
昆虫学者が研究対象である蝶の個体を“head”で数え、日本語に直訳したものが
定着した説が有力です。
また、昆虫採集はもともと狩猟の一種と考えられていたため、獲物は動物と同じ
数え方をするとの説もあります。
専門的に蝶を数える以外は、「1 匹」「2 匹」…でも間違いではないそうです。
参考文献:飯田朝子
『数え方の辞典』(小学館)
◎蝶と俳句
単に「蝶」といえばもちろん、「てふてふ」「胡蝶」「初蝶」も春の季語になります。
しかし、揚翅蝶などの大型のものは夏の季語となり、また凍蝶(いてちょう)は冬の
季語になります。
蝶を詠んだ句はたくさんありますが作者によって感じ方、捉え方の違いがわかる五句を
選んでみました。
世の中よ蝶々とまれかくもあれ
蝶々=てふてふ
西山宗因(にしやまそういん)
(1605-1682)
めちやくちやに手をふり蝶にふれんとす
山口青邨(やまぐちせいそん)
(1892-1988)
白壁の浅き夢みし蝶の昼
秋元不死男(あきもとふじお)
(1901-1977)
ひかり野へ君なら蝶に乗れるだろう
折笠美秋(おりかさびしゅう)
(1934-1990)
目の前をよぎりし蝶のもう遥か
星野高士(ほしのたかし)
(1952-)
◎蝶と短歌
西欧では蝶は「不死」「復活」を意味し、美女プシュケーは、蝶に化身したと伝えられて
います。
しかし、日本では古来蝶と蛾は区別されず、あまり愛されていなかったようです。
そんなことから和歌に詠まれることも少なかったのですね。
ここでは1900 年代以降に生まれた作者の新しい短歌を三首選んでみました。
春潮のあらぶるきけば丘こゆる蝶のつばさもまだつよからず
春潮=はるしお
坪野哲久(つぼのてっきゅう)
(1906-1988)
指先をのがれし蝶のもどかしく吾が初恋はここに終われり
山崎方代(やまざきほうだい)
(1914-1985)
ふうはりと身の九割を風にして蝶飛びゆけり春の岬を
栗木京子(くりききょうこ)
(1954-)
今回は『蝶』についてのいろいろをお届けしました。
てふてふと抜きつ抜かれつ畷道
白井芳雄
最後までお読みいただきありがとうございました。
(株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄
全体を通じての参考文献:飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修
『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)
白井明大・有賀一広
『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)
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