メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2014年 7月23日(Vol.124) 「雷」 ≫雑記帳トップへ
「雷」
落雷よけに「くわばら、くわばら」と呪文を唱える風習があります。
これは、死して雷となったと伝えられる菅原道真の領地桑原(現、京都、桑原町)には、古来落雷
した例がないという話『広辞苑』によります。
平安時代に藤原一族によって太宰府へ左遷され、そこで没した道真が恨みをはらすため雷神とな
り宮中に二度も雷を落とし、これによって藤原一族は大打撃を受けました。このとき唯一、桑原
だけが落雷がなかったので後に人々は雷よけに「桑原、桑原」ととなえるようになったといわれ
ています。
今回はそんな「雷」についてのおもしろ豆知識をお届けします。
◎雷はごろやん?
雷は昔から、地震、雷…と怖いものの代表にあげられています。
しかし、一方で虎模様の縞のふんどしを履いて、背中の太鼓をゴロゴロ鳴らしながら、人々の
へそを狙っているなどどこか愛嬌があり、また、雷がもたらす雨は農作物への恵みともなるこ
とから、愛着もあったと感じさせます。
ここでは各地に伝わる雷への畏(おそ)れと愛着を感じさす呼び名をあげてみました。
らいさま=栃木、群馬、茨城などの北関東の雷多発地域
れーさま=福島、岩手
おりゃさま=新潟など
おれさま=宮城など
おかんなりさま=山梨
がらがらさま=東京
ごろやん=奈良
どんどろ=岡山など
◎雷神を切った男
戦国時代、豊後国(大分県)大友家の家臣、立花道雪(たちばな どうせつ)(1513-1585)は
炎天下の日、大木の下で涼んで昼寝をしていた時、急な夕立で雷に襲われ、とっさに所持
していた刀「千鳥」で雷(雷神)を切ったとされています。
しかし、この時雷に打たれ自身も半身不随に。
彼の愛刀には雷に当たった印があり以来愛刀の名を「千鳥」から「雷切(らいきり)」に改めた
と伝えられています。
この時代、恐怖の対象であった得体の知れぬ「雷神」に襲われ半身不随になりながらも、武士
らしく応戦した勇気と名刀は人々の噂になり、語り継がれるのに十分な価値があったのでしょ
う。
以後、道雪は主君大友宗麟を盛り立て、その勇名は東日本まで広まりました。
◎オーケストラでの雷の究極の表現を楽しむなら「アルプス交響曲」
最初に雷を音楽で表現したのはビバルディで「四季」の中で弦楽器で表現。
また、ベートーベンは交響曲6番「田園」の中で、ティンパニーを打ち鳴らし雷を表現。
その後、いろいろな作曲家が雷の表現を試みましたが、その究極の表現はリヒャルト・シュト
ラウスの「アルプス交響曲」を推す解説が多くあります。
シュトラウスが14歳(15歳説も)の時、アルプスに登山したときの体験が元になって作曲されま
した。
アルプスの日の出から日没までの一日を11の楽章で表現されています。
雷と嵐の楽章で、シュトラウス特注のトタン板のサンダーマシンによる雷が「どどどどど…」
と表現され、迫力満点とか。
CDなど音だけではどのように音を創っているのか理解できないと思いますので、DVDか
テレビで映像も見て楽しみたいものです。
◎相撲史上最強!!生涯で10敗しかしなかった雷電為右衛門
大相撲名古屋場所も後半戦に入り、それなりに盛り上がっていますが、ここでは史上最強、
23歳で力士となり45歳で引退するまで、254勝10敗、引き分け他21の記録が残っている雷電
為右衛門のエピソードを。
雷電の体格は元大関の把瑠都の体格と同程度で、身長197cm、体重172kgの筋肉質な巨漢だっ
たと伝わっています。
対戦相手の腕がへし折られるなど、彼があまりに強すぎるため、「張り手」「鉄砲(突っ張
り)」「閂(かんぬき)」「鯖折り」が禁じ手とされていながら、生涯勝率は史上1位の.962。
しかしなぜか、横綱にはなっていません。
その理由は次のようなものが考えられます。
(1)土俵上で対戦相手を殺してしまったため。(講談ネタで、事実ではない。)
(2)推薦を本人が辞退した。
(3)雷電の抱え主 雲州松平家が「藩の財政難で横綱免許が購入できなかった。
などがありますがどれも決定的な根拠はないようです。
◎雷と和歌
雷を詠んだ和歌は古くからあり、万葉集のものと比較的新しい和歌をとりあげてみました。
天雲に 近く光りて 鳴る神の 見れば畏し 見ねば悲しも
畏し=かしこし
作者不詳 万葉集第七巻より
この庭にそびえてたてる太き樹の桂さわだち雷鳴りはじむ
雷=らい
齋藤茂吉(さいとう もきち)
(1882-1953)
たそがれの雷うちつづく雨しばし閉ざせ世界も世界憎悪も
雷=らい
高島裕(たかしま ゆたか)
(1967-)
◎雷と俳句
俳句の世界で雷は雷(かみなり、らい、いかずち)、神鳴(かみなり)、鳴神(なるかみ)、はた
た神とも表現されます。
近い場所でなる激しい雷を「迅雷(じんらい)」、遠くに聞こえる雷鳴を「遠雷」、晴天時に
発生する雷を「日雷(ひがみなり)」と表現され、夏の季語になります。
ちなみに雷現象につきものの「稲妻」、「稲光」は秋の季語に分類されています。
迅雷に一瞬木々の真青なり
長谷川かな女(はせがわ かなじょ)
(1887-1961)
大雷雨ばりばり芭蕉八つ裂きに
川端茅舎(かわばた ぼうしゃ)
(1897-1941)
鳴神や暗くなりつつ能最中
能最中=のうさなか
松本たかし(まつもと たかし)
(1906-1956)
遠雷やはづしてひかる耳かざり
木下夕爾(きのした ゆうじ)
(1914-1965)
次に来るかみなりを待つ腕まくら
五島高資(ごとう たかとし)
(1968-)
今回は「雷」についてのいろいろをお届けしました。
迅雷や心に秘めし罪いくつ
白井芳雄
最後までお読みいただきありがとうございました。
(株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄
全体を通じての参考文献:向笠千恵子
『食べる俳句 旬の菜事記』(本阿弥書店)
白井明大・有賀一広
『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)
飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修
『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)
高橋劭
『雷の科学』(一般財団法人 東京大学出版会)
参考サイト:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)
雷なんでもサイト
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