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  メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2014年11月19日(Vol.126) 「竹」       ≫雑記帳トップへ



  「竹」

筍(たけのこ)から高さ10mの竹になるまでわずか数週間。
とくに最初の数日間の生長は著しく、1日(24時間)に120cmも伸びた記録があるほどの生命力
がある竹。
また、竹は青々として倒れにくく真っ直ぐに伸びることから、榊(さかき)とともに清浄な植
物のひとつとされ、お正月に飾る門松にも使われています。
今回はそんな竹にまつわる豆知識・俳句などをお届けします。

◎竹の花は一生に一度見られるかどうか
 ○竹は実をつけると一生を終える
  竹類はイネの仲間で、発芽してから長い年月、地下茎によって繁殖を続けますが、ある
  一定の時期に達すると花を咲かせ、種子を実らせて一生を終えます。

 ○竹の花はいつ開花する?
  種類によって開花周期が違い、モウソウチクは約67年、マダケは120年周期で開花すると
  されています。
  一生に一度見れるかどうかです。

 ○竹の花は凶事の前触れ?
  竹の実の栄養価は小麦に匹敵するともいわれ、救荒食物として飢饉を救った逸話もあり
  ますが、むしろ野ネズミの大発生により飢饉を招いた例が多いので凶事の前触れと恐れ
  られています。

 ○開高健の小説に『パニック』があります
  120年ぶりに笹に実がなり、その実めがけてネズミが至るところから集まって来て、大量
  繁殖したネズミの処置を通して、保身に汲々とする役人を痛烈に風刺した作品。

◎竹とんぼ
 起源は江戸時代に平賀源内が作ったという説もありますが、奈良時代の長屋王邸跡から類似
 の木製品が発掘されており、古来からの玩具だった可能性が高いと考えられています。
 また、類似の玩具は中国にもあり、15世紀にはヨーロッパに伝わったとみられ、聖母子像の
 中にはこのような玩具を持った絵もあります。
 さて、竹とんぼには高さ、飛距離、滞空時間の3種目競技会があり、競技に使う竹とんぼには
 竹だけで作る「純竹」と竹以外の材料も使用できる「象嵌(ぞうがん)」の2種類があります。
 象嵌部門ではカーボン繊維を使ったり、タングステンをはめ込んだりとさまざまな工夫が可
 能です。
 ○竹とんぼの高さ
  象嵌の竹とんぼは高さ45m(10階建てのビルの高さが40mですから、それより上)まで上がる
  そうです。
  純竹は35mくらい。
  ちなみに高さの計測は測定器が50m程度離れて2台あって、竹とんぼが最高度になったとき
  に、それぞれが高さ方向の角度と水平方向の角度を測って計算で求めるようです。

 ○竹とんぼの飛距離
  象嵌は60〜100mも飛び、追い風参考記録では、150mも飛んだこともあるそうです。
  純竹は50〜60mくらい。

 ○竹とんぼの滞空時間
  象嵌は24秒くらい。
  純竹は17秒程度。

 肥後守で作った竹とんぼが屋根にとまり、屋根に登って叱られた記憶が蘇ります。

◎竹に関することば、ことわざ、語源
 ○木六竹八塀十郎(きろくたけはちへいじゅうろう)
  木は六月、竹は八月に伐採するのがよく、土塀を塗るのは十月がいいということわざ。
  ことわざは旧暦を指しているので、竹を伐るのは新暦では十月ころが最適ということにな
  ります。
  虫に食われず、腐りにくいなどのいい点があります。
  また、竹は春、筍(たけのこ)にその精力を奪われてみすぼらしくなりますが、秋になると
  幹もしっかりして、中の虫も死に絶えます。

 ○竹箆返し(しっぺがえし)
  「竹箆返し」の「竹箆(しっぺい)」は禅宗において、修行者を戒めのために打つ道具で、
  割った竹に漆を塗った細長い板状のもののこと。
  大寺院の場合、高僧が交代で打つ役を務めたので、打たれた者も打つ側になることから、
  やられたらやり返すことを「竹箆返し(しっぺいがえし)」と呼ぶようになりました。
  「しっぺがえし」は「しっぺい」の「い」を省略した言葉です。
  また、人差し指と中指をそろえて相手の手首のあたりを打つ「しっぺ」も由来はここから。

 ○竹に雀(たけにすずめ)
  取り合わせの良い一対のもののたとえ。
  日本画の図柄として、取り合わせの良い画になっていることから。
  伊達氏などが家紋として用いている。
  同じく、取り合わせの良いものは
  梅に鶯/猿に絵馬/獅子に牡丹/波に千鳥/牡丹に唐獅子/竹に虎/牡丹に蝶/松に鶴/
  紅葉に鹿/柳に燕
  などがあります。

 ○演奏者のあいだでは「竹」と呼ばれる楽器
  それは中国の唐を起源として日本に伝来し、その後空白期間を経て、鎌倉時代〜江戸時
  代頃に現在の基本形が成立した尺八(しゃくはち)。
  標準の管長が一尺八寸(約54.5cm)であることから尺八の名が付きました。
  演奏者のあいだでは単に竹とも呼ばれ、英語ではshakuhachiあるいは、Bamboo Fluteと
  も呼ばれます。
  武満徹が1967年に作曲した、琵琶、尺八とオーケストラのための音楽作品『ノヴェンバ
  ー・ステップス』(英: November Steps )は、ニューヨーク・フィルハーモニックによっ
  て初演され、作曲者が国際的な名声を獲得するきっかけとなりました。

 ○竹夫人(ちくふじん)
  稀に「竹婦人」とも。
  竹で作られた1m〜1.5mの筒状の抱き枕。
  暑い日や寝苦しい夜に寝床で抱いたり、腕や足をこれに乗せて寝ることで涼をとれます。
  俳句では夏の季語となっています。

                              情薄きものの一つや竹婦人
                            安斎桜磈子(あんざい おうかいし)
                                      (1886-1953)

◎『竹取物語』はおやじギャグ(言葉遊び)だらけ
 「今は昔、竹取の翁(おきな)といふものありけり…」で始まる日本最古の物語『竹取物語』。
 作者未詳のこの物語にはダジャレが多数ちりばめられています。
 かぐや姫を育てる箇所で
 ○竹に籠(こ)もる小さな子(こ)を籠(こ)に入れて養う。
 とあるのをはじめ  

 ○鉢を捨つ→恥を捨つ
  かぐや姫に求婚した5人の貴公子が姫から与えられた難題を解決できずに袖にされますが、
  その中にもダジャレが数多く隠されています。
  例えば、「仏の御石の鉢」を持ってくるように言われた石作りの皇子はある山寺の古びた石
  鉢を「血の涙が出るほど苦労して探しました」という和歌をつけて贈りましたが、偽物と見
  破られ、鉢は捨てられます。
  このことから厚かましいことを「鉢(恥)を捨つ」という言い方が生まれました。

 ○不死の山→富士の山
  物語のクライマックスでかぐや姫は帝のために「不死の妙薬」を残して月に帰ります。
  帝はかぐや姫がいないこの世では「不死の妙薬」を飲んで長生きしてもしかたないので「月
  に一番近い山で焼きなさい」と命令しました。
  「士(つわもの)らを大勢連れて不死の妙薬を焼きに山へ登った」ことから、その山を「ふぢ
  (不死・富士)山」と名づけたそうです。
  ちなみに、かぐや姫の正式名は「なよ竹のかぐや姫」で「なよ竹の」は「よ(節、夜、世)」
  「ふし」にかかる枕詞で「なよ竹のかぐや姫」は「富士(不死)の姫」を暗示する名前だった
  のです。
  作者はこうした究極の言葉遊びのために、この物語を書いたのかもしれません。


◎竹と俳句
 竹は春夏秋冬すべての季節で詠まれています。
 ○春の季語 竹の秋
  ふつうの樹木は秋に紅葉(黄葉)しますが、竹は春に黄ばんできます。
  これは地中の筍(たけのこ)に栄養分を費やすために一時的に葉が衰える現象です。
  その様子が他の植物の秋の様子に似ているところから春の季語ですが「竹の秋」といい
  ます。

                              いざ竹の秋風聞かむ相国寺
                          大伴大江丸(おおともの おおえまる)
                                      (1722-1805)
                                相国寺=しょうこくじ
                    京都市上京区にある臨済宗相国寺派大本山の寺。
 京都名所の鹿苑寺(金閣寺)、慈照寺(銀閣寺)は、相国寺の山外塔頭(さんがいたっちゅう)。

                           祗王寺は訪はで暮れけり竹の秋
                                  訪はで=とはで
                             鈴木真砂女(すずき まさじょ)
                                     (1906-2003)
                                 祗王寺=ぎおうじ
                    京都市右京区にある真言宗大覚寺派の仏教寺院。
     『平家物語』では平清盛の寵愛を受けた白拍子の祗王と仏御前が出家のため入寺。

 ○夏の季語 竹落葉(たけおちば)
  竹は若竹の伸びるころ、新しい葉を出し、黄ばんだ古い葉を落とします。
  これが「竹落葉」で、ひらひらとかすかな音を立てて落ちるさまは風情があります。
  「落葉」だけだと冬の季語ですが「竹落葉」は夏の季語となります。

                             雨樋を叩きて吐かす竹落葉
                               長谷川櫂(はせがわ かい)
                                      (1954-)

 ○夏の季語 竹植う(たけうう)
  陰暦の五月十三日に竹を植えれば決して枯れないとされる中国の俗信があり、それが日
  本にも伝わったもの。
  『竹取物語』のかぐや姫が月に帰ったのもこの日とされています。

                             降ずとも竹植る日は蓑と笠
                       降ず=ふらず、植る=ううる、蓑=みの
                              松尾芭蕉(まつお ばしょう)
                                     (1644-1694)

 ○夏の季語 竹の皮
  筍(たけのこ)は生長するにつれて、下の方から皮を落とし若竹となります。
  昔はこの皮を用いて草履や笠を編んだり、防腐のためにおにぎり、ちまき、肉などを包
  んだりしていました。

                          脱ぎ捨ててひとふし見せよ竹の皮
                                与謝蕪村(よさ ぶそん)
                                     (1716-1784)

 ○秋の季語 竹の春
  竹は春には筍(たけのこ)を地上に出し急生長させ、親竹は衰えますが、その竹が秋にな
  って勢いを取り戻し、葉も青々としてきます。
  この状態を「竹の春」と呼びます。

                           おのが葉に月おぼろなり竹の春
                                与謝蕪村(よさ ぶそん)
                                     (1716-1784)

 ○秋の季語 竹伐る(たけきる)、伐竹(きりたけ)
  竹に関することわざのところでも触れましたが10月ごろが竹を伐る好季となります。
  伐り出されて積まれた青竹は秋の風物詩の一つ。

                           伐竹をまたぎかねたる尼と逢ふ
                              阿波野青畝(あわの せいほ)
                                     (1899-1992)

 ○冬の季語 竹馬(たけうま)
  竹馬は古くからの子供の遊び。
  どの季節でも遊べそうですが、「高足(たかあし)」「鷺足(さぎあし)」とも呼ばれるよ
  うに、もともとは川を渡る時や降雪の際に使われた生活用具であったため、冬の季語に。
  竹馬に乗って一緒に遊んだ幼い頃からの友達、幼なじみを指す「竹馬の友(ちくばのとも)」
  の言葉もあります。

                          竹馬やいろはにほへとちりぢりに
                          久保田万太郎(くぼた まんたろう)
                                     (1889-1963)

                           竹馬の青きにほひを子等知れる
                           中村草田男(なかむら くさたお)
                                     (1901-1983)
 

私も詠んでみました。

                           竹伐ってみどりの水に鹿威し
                               鹿威し=ししおどし
                                    白井芳雄
      
今回は「竹」についてのいろいろをお届けしました。

全体を通じての参考文献:日本民具学会
            『日本民具辞典』(ぎょうせい)

            笹間良彦
            『日本こどものあそび大図鑑』(遊子館)

            落合敏監修
            『食べ物と健康おもしろ雑学』(梧桐書院)

                        白井明大・有賀一広
                       『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)

            飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修
                       『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)

      参考サイト:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)

            独立行政法人森林総合研究所 ホームページ

            Bamboo Home Page

最後までお読みいただきありがとうございました。
   
                   (株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄

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