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  メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2015年7月22日(Vol.130) 「傘」       ≫雑記帳トップへ

 


  「傘」


日本における傘の1年間の消費本数は約1億3千万本。
「雨よけ」「日よけ」に大活躍の傘。
特に最近は熱中症予防、強い陽射しによる皮膚へのダメージ防止等、クールビズのアイテム
の1つとして、SMAPの稲垣吾郎さんや作家の有栖川有栖さんら、男性を含めて日傘の需要
がぐんぐん伸びています。

今回はそんな「傘」についての豆知識をお届けします。


◎傘とことわざ
 ○乳母日傘(おんばひがさ)
  乳母に抱かれ、日傘をさしかけられるなどして、必要以上に大切に育てられること。
  「乳母」は、母親の代わりに乳を与え育てる女性のこと。
  「おんばひからかさ」とも読まれます。
 ○傘と提灯は戻らぬつもりで貸せ
  必要な時は大変役立つが、不必要なときはとかく忘れがちである。
 ○傘一本(からかさいっぽん)
  僧が戒律を破る罪で寺を追放されること。傘1本を持つことだけは許されたところからいう。
  厳しい中にも、わずかな救いを残していたのでしょう。
 ○八つ(やつ)晴れには傘放せ四つ晴れには傘放さず
  午後2時頃にあがる雨は、再び降り出す心配はない。
  午前10時頃にあがる雨は、また降るかも知れない。
 ○破れ傘は日和傘(やぶれがさはひよりがさ)
  暈(かさ)の中に星が見えると翌日は晴れるという意味。
  暈は太陽または月のまわりに見える輪のような光。このことわざでは当然、月の
  まわりの輪になります。

◎傘のはじまりは「雨よけ」ではなく「日よけ」だった
 アンブレラは「影」の意味をもつラテン語umbraがイタリア語に転化してombrellaとなり
 「影をつくるもの」を意味します。
 またイタリア語のパラソーレ(parasole)は「太陽から守る」の意味を持ち、日よけ用の
 傘の呼称として用いられていました。
 日々の生活の中でなにげなく使っている「傘」ですが、その原点は雨よけではなく、日光
 や紫外線をよけるものだったのです。
 環境省が2011年に行なった調査によると、夏場の歩行時に上着を脱ぐことで約10%、日傘
 を併用すると約20%も熱ストレスが軽減するそうです。(環境省『ヒートアイランド現象に
 対する適応策の効果と試算結果について』)。
 この報告では「男女を問わず日傘を活用すること」が望ましいとしています。
 私も日傘男子してみます。

◎傘にまつわる名言・格言
 ○雨の中、傘をささずに踊る人間がいてもいい。それが自由というものだ。
  ヨハン・ゲーテ(詩人、劇作家、小説家 1749-1832)
 ○人の心とは傘のようなものだ。開いたときにもっとも機能する。
  ヴァルター・グロピウス(モダニズムを代表するドイツの建築家 1883-1969)
 ○雨が降れば傘をさそう。傘がなければ、一度は濡れるのも仕方がない。
  ただ、雨があがるのを待って、二度と再び雨に濡れない用意だけは心がけたい。
  松下幸之助(実業家 1894-1989)

◎園遊会で美智子皇后陛下がお使いのビニール傘
 ビニール傘のほとんどは中国製品の輸入に頼っていますが、国内に自社工場を持つ
 ホワイトローズ社は高級路線に特化し、透明性の高い厚手ビニール材を用い、高級
 ビニール傘(商標名「カテール」「シンカテール」(「選挙で勝てる」をイメージして
 命名)(5,400円〜6,480円)等を製造しています。
 ちなみに、美智子皇后陛下が雨の日の園遊会でお使いになられた傘(商標名「緑結」)は
 8,640円。
 買い求めたくなる価格ですね。
 ただし、商品によって1〜3ヶ月待ちの状態です。

◎相合傘と川柳
 雨に濡れないようにお互いに肩を寄せあい、一つの傘をさす相合傘はしばしば二人が恋愛
 関係であることを暗示します。
 ここでは相合傘を詠んだ川柳を選んでみました。

 相傘に握りこぶしが二つ出来

 相合の傘でしっぽり濡れて出る

 右の手と左でうまい傘をさし

 相傘の中を隔てる水溜り

 なかなか情緒があります。

◎傘と俳句
 単に「傘」、「雨傘」だけでは季語になりません。
 傘を含んだ句は春には春雨(はるさめ)とか別の季語と組み合わせて詠まれています。
 「日傘」「白日傘」「絵日傘」「砂日傘」は夏の季語に、「秋日傘」はもちろん秋の
 季語になります。
 冬は雪との組み合わせで詠まれたものを選んでみました。

 ○春
  斯く翳す春雨傘か昔人(斯く翳す=かくかざす)(昔人=むかしびと)
  高浜虚子(たかはま きょし) (1874-1959)

  東山低し春雨傘のうち
  高浜年尾(たかはま としお) (1900-1979)
  (親子で詠んでいます。)

 ○夏
  青天と一つ色なり日傘(日傘=ひからかさ)
  小林一茶(こばやし いっさ) (1763-1828)

  坂の上日傘沈んでゆきにけり
  大串章(おおぐし あきら) (1937-)

 ○秋
  秋日傘女心のある限り
  稲畑汀子(いなはた ていこ) (1931-)

  夕暮の何にたたずむ秋日傘
  黛まどか(まゆずみ まどか) (1962-)

 ○冬
  市人よこの笠売らう雪の傘(市人=いちびと)
  松尾芭蕉(まつお ばしょう) (1644-1694)

  我が物と思えば軽し傘の雪
  宝井其角(たからい きかく) (1661-1707)  


私も詠んでみました。

  羽衣をビキニに替える浜日傘
  白井芳雄
      
今回は「傘」についてのいろいろをお届けしました。

全体を通じての参考文献、出典:『大辞林(第二版)』(三省堂)

               『日本大百科全書』(小学館)

                三省堂編修所編 1987年
                『実用ことわざ 慣用句辞典』 (三省堂)

                           『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)
                (飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修)

                          『角川俳句大歳時記 春・夏・秋・冬』

                           白井明大・有賀一広
                           『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)

                 向笠千恵子
                 『食べる俳句 旬の菜事記』(本阿弥書店)

         参考サイト:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)


最後までお読みいただきありがとうございました。
   
                   (株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄

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