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  メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2015年11月18日(Vol.132) 「鍋料理」       ≫雑記帳トップへ



  「鍋料理」


世界野球WBSCプレミア12でSAMURAI JAPANが世界一まであと2勝!!
応援しています。
また、大相撲九州場所は終盤戦を迎え、盛り上がりを見せています。
さて、力士の料理といえば「ちゃんこ」。
「ちゃんこ」といえば鍋を連想しますが、実は「ちゃんこ」は力士が食べる物全般を指します。
また、ちゃんこ鍋は鶏がらを出汁に、たっぷりの野菜と魚や鶏肉を煮込んだものが一般的です。
これは相撲の社会では、鶏が二本脚で立つことから縁起を担ぎ、手を土につかない、
「四つん這い」=「手をついて負け」にならないように、牛や豚などの四足動物の肉はタブー
とされ、避けられていたことによります。
しかし、昭和40年ころからは牛肉や豚肉も次第にちゃんこ鍋の具として使われるようになりま
した。

今回はそんな「鍋料理」についての豆知識をお届けします。


◎すき焼きは農具で調理していた?
 日本における鍋料理のルーツは江戸時代で、小さな鍋を七輪にかけた「小鍋立て」が起源とさ
 れています。
 その小鍋は一人で食べるいわゆる「ぽっち鍋」が普通で、みんなで、わいわいと鍋を囲むスタ
 イルは明治以降になってから多くなったようです。
 文献によりますと、江戸時代に登場する当時の「すき焼き」は農具の鋤(すき)を使い、金属部
 分を熱し、鰤(ぶり)などの魚を焼いて食べたので鋤焼きの名がついたとされています。
 また具を調理する「鍋」の漢字も素材の変化に合わせて字が変わり、土器が主流だった時代は
 土へんの「堝」でしたが、鉄器の普及につれ「鍋」の字になりました。
 また、このすき焼き、2014年に群馬県が「すき焼き応援県」を宣言しました。
 理由はすき焼きの具材の生産量が、こんにゃく=1位、白菜=3位、春菊=4位、しいたけ=4位、
 長ネギ=5位と上位にランクしているからだそうです。

◎鍋奉行(なべぶぎょう)と彼をとりまく人々
 ○鍋奉行
  鍋料理の時、特に頼まれてもいないのに火加減や具を入れる順番を指示したり、早く食べる
  ように促したりと仕切る人がいます。
  このような人を「鍋奉行」と呼びます。
  時代劇で権力を振るう役回りである「町奉行」や「勘定奉行」のもじりで、少々迷惑な存在
  を皮肉を込めて鍋奉行と呼ぶこともあります。

 ○鍋将軍(なべしょうぐん)
  鍋奉行より権力があり、鍋料理には絶対的な自信を誇り、鍋奉行より厳しい仕切り屋で、自
  分のやり方に反する人には激怒する人を指します。

 ○アク代官(あくだいかん)
  鍋料理ではどうしても灰汁(あく)が出ますが、その灰汁をすくい取る作業をする人。
  灰汁にはうまみ成分も含まれるため、取り過ぎには注意を要します。
  もちろん「悪代官」のもじりになります。

 ○待ち奉行(まちぶぎょう)・待ち娘(まちむすめ)
  鍋料理を鍋将軍さんや鍋奉行さんにまかせ、ひたすら美味しい鍋が出来るまで待ち続け、
  食べるのを楽しむだけの人。
  「町奉行」「町娘」のもじりで、男性を「待ち奉行」、女性を「待ち娘」と呼びます。  

◎ポン酢はオランダ語?
 ちり鍋,水炊き,しゃぶしゃぶなどの鍋料理をはじめ、和食で大活躍のポン酢。
 その語源はオランダ語で橙をはじめとする柑橘系果実の絞り汁を指すpons(ポンス)が転訛し、
 「ス」に「酢」の漢字を充てた言葉説があります。
 ponsはブランデーに果実や砂糖などを加えたカクテルのような飲み物を意味し、それがフルー
 ツポンチ(Fruit punch)の原型になっています。
 また、鍋のシメといえば「雑炊」「おじや」です。
 「おじや」の語源は明らかになっていませんが、米を煮る音が「じやじや」と聞こえるからと
 いう説や、スペイン語で鍋を意味する「olla」(オジャ)が語源との説があります。
 olla(オジャ)を使った料理、オジャ・ポドリーダ(Olla podrida)は豚肉と豆から作られるスペ
 イン風のシチューで、何時間も煮込んで作られます。

◎鍋のマナーNG集
 2013年にぐるなびがOLさんを対象に実施した調査で、鍋のマナーで「これだけは許せない!!」
 というNG集を取り上げてみました。

 第1位 風邪をひいているのに直箸で鍋をつつき、食べる人。
     直箸を気にして逆さ箸にする人も嫌。
     菜箸やおたまを使うなど気を遣ってほしい。

 第2位 ちゃんと火が通ってから食べたいのに、やたらとよそいたがる人。
     生煮えでよそわれると鍋に戻せないし困ります。
     「よそい」=「よそう」 漢字で書くと「装う」。
     自然の恵みに感謝の気持ちを込めて、綺麗な言葉で表現するのでしょう。
     ちなみに関西では「よそる」と表現します。

 第3位 会社の飲み会で、加齢臭のおじさんがねぶり箸で食べる鍋は耐えられない。
     鍋は好きだけど、マナーをわきまえた、仲の良い相手と食べたい。

 第4位 鍋の火をつけたまま、しゃべってばかりでいっこうに食べない人たち。
     具が煮えすぎて、クタクタになった状態で残すのは、食べ物に失礼。

 第5位 鍋の火のすぐ近くに、瓶ビールを置く人。
     ビールがぬるくなってマズクなる。

 いかがでしたか?
 私も気を付けねば。

◎おもしろい鍋の名前と由来など
 ○ひきずり
  農林水産省のHPによりますと、名古屋ではすきやきのことを「ひきずり」と言います。
  すき焼き鍋の上で肉をひきずるようにして食べたことから「ひきずり」と呼ばれるように
  なったそうです。
  大晦日にひきずりを食べて、その年引きずってきたいらないものを、その年の内に片づけ
  てから新年を迎えるという習慣がありました。
  一般に、すき焼きは牛肉を使いますが、愛知県では名古屋コーチンなどの鶏肉が使われま
  す。

 ○「チゲ鍋」は「鍋鍋」?
  キムチや肉、魚介類、豆腐などを出汁で煮こんだ朝鮮半島風の鍋料理を「チゲ鍋」と日本
  ではいいます。
  しかし、「チゲ鍋」の「チゲ」は韓国語(朝鮮語)で「鍋料理」の意味なので、われわれは
  「鍋鍋」言ってるのです。

 ○もみじ鍋
  鹿の肉鍋のこと。
  語源は二説あり、紅葉の秋に牡鹿が牝鹿を求めて啼くことから、百人一首の「奥山にもみぢ
  踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」からの引用説と、花札の10月の絵柄「鹿に紅葉
  (もみじ)」から取ったとの説があり、紅葉は鹿の隠語(いんご)になっています。
  昔は四足動物の肉を食べることが憚(はばか)られていましたが、冬季の保温、滋養のために
  「薬喰(くすりぐ)い」と称して鹿肉や猪肉、馬肉などが食べられていました。

 ○桜鍋
  馬肉をみそ仕立て、またはすきやき風にした鍋物。
  精力増進に一番と言われます。
  都々逸(どどいつ)「咲いた桜になぜ駒繋ぐ、駒が勇めば花が散る」に由来しています。
  桜満開の木の下に馬が繋がれている。馬が身体を揺らすと桜の花がひらひらと馬にふりか
  かっていく。との意味から桜は馬の隠語になっています。
  また「馬は蹴る」ことから「けとばし」という別名もあります。

 ○牡丹鍋
  猪の肉を用いた鍋料理。
  名前の由来は諸説あり、猪肉を皿に牡丹の花のように盛り付けることから「ぼたん鍋」と
  名付けられた説が一つ。
  また、唐獅子牡丹の「シシ」と猪肉の「シシ」の意味をかけた説が有力です。
  そこから「牡丹」は猪肉の隠語になりました。
  また、昔は鯨は魚とされていたことから、猪は「山鯨」と称して、おおっぴらに食べられて
  いました。

◎鍋と俳句
 鍋料理は俳句で多く詠まれています。
 ここでは冬の季語である「○○鍋」を詠んだ句を料理ごとに選んでみました。

 ○寄鍋(よせなべ)
  寄鍋やたそがれ頃の雪もよひ
  杉田久女(すぎた ひさじょ)(1890-1946)

 ○牡丹鍋(ぼたんなべ),猪鍋(ゐのししなべ)
  ゐのししの鍋のせ炎おさへつけ
  阿波野青畝(あわの せいほ)(1899-1992)

 ○河豚鍋(ふぐなべ)
  河豚鍋や愛憎の憎煮えたぎり
  西東三鬼(さいとう さんき)(1900-1962)

 ○ちり鍋
  ちり鍋やぎんなん覗く葱の隙(葱の隙=ねぎのすき)
  石塚友二(いしづか ともじ)(1906-1984) 

 ○鮟鱇鍋(あんこうなべ)
  悪名もいまはむかしの鮟鱇鍋(悪名=あくみょう)
  鈴木真砂女(すずき まさじょ)(1906-2003)

 ○鋤焼(すきやき)
  鋤焼や和気藹藹の喧嘩箸(和気藹藹=わきあいあい)(喧嘩箸=けんかばし)
  浜 明史(はま あけし)(1928-)

 ○桜鍋(さくらなべ)
  あばずれと人がつぶやく桜鍋
  岡田史乃(おかだ しの)(1940-)

 ○湯豆腐(ゆどうふ)
  湯豆腐の小踊りするや夜の酌
  玉村豊男(たまむら とよお)(1947-)

 ○鮭鍋(さけなべ)
  炉框の数多の傷や鮭の鍋(炉框=ろかまち)(数多=あまた)
  水島直光(みずしま なおみつ)(1954-)

 ○雑炊(ぞうすい)
  雑炊や葱さくさくと降りつもれ(葱=ねぎ)
  長谷川 櫂(はせがわ かい)(1954-)


 私も詠んでみました。

  九絵鍋や昔漁師の指太し(九絵=くえ)
  白井芳雄
      
今回は「鍋料理」についてのいろいろをお届けしました。

全体を通じての参考文献、出典:『大辞林(第二版)』(三省堂)

               『日本大百科全書』(小学館)

                           『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)
                (飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修)

                          『角川俳句大歳時記 春・夏・秋・冬』

                           白井明大・有賀一広
                           『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)

                 向笠千恵子
                 『食べる俳句 旬の菜事記』(本阿弥書店)

         参考サイト:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)

               紀文 日本の鍋物の歴史
               (http://www.kibun.co.jp/enter/nabe/n-rekisi_bunrui.html)

               ニッポン列島・鍋日和〜アンモ流 おいしい鍋の囲みかた〜
               (http://ammo.jp/monthly/0401/index.html)


最後までお読みいただきありがとうございました。
   
                   (株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄

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