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  メルマガ 「いいテク・ニュース」 雑記帳 2017年7月26日(Vol.142)「焼酎」              ≫雑記帳トップへ



   「焼酎」


ネット通販で購入するには定価の約7倍!!
定価で購入するには電話申し込みのうえ抽選。
しかも、抽選結果は翌月に発表。
しかし、申し込みが絶えない商品は?
それはプレミアム焼酎と呼ばれる「森伊蔵」。
正規販売価格とあまりにも差があるプレミアム価格。
消費者として、高くて買いにくい焼酎なんか飲んでられるか!と怒る気持ちにもなります。
しかし、心のどこかでチャンスがあれば飲んでみたい気持ちも湧いてきます。
「高いアルコール度」「安酒」「労働者の酒」「強すぎる香り」とマイナスイメージだった焼酎
の印象を「森伊蔵」をはじめとするプレミアム焼酎はぐっと引き上げてくれました。
今回はいも、米、麦、蕎麦(そば)など地域に合ったさまざまな原料から作られ、庶民に愛され
てきた「焼酎」についての豆知識をお届けします。


1.お酒の種類と焼酎の語源、ことわざ

 1-1 お酒の種類
   お酒は酒税法によりアルコール度数が1%以上のものと定められています。
   種類は大別すると3つのタイプに分かれ、焼酎は蒸留酒に分類されます。

  1-1-1 醸造酒
  ・・・穀類などの原料を発酵させアルコールを生成したもの。
     清酒・ビール・ワインなど。

  1-1-2 蒸留酒
  ・・・醸造酒をさらに加熱・蒸留したもの。
     焼酎・ウイスキー・ウオッカなど。

  1-1-3 混成酒
  ・・・醸造酒や蒸留酒に果実、香辛料、砂糖などを加え、その成分を浸透させたもの。
     梅酒・みりん・リキュールなど。

 1-2 焼酎の語源
   「焼いた酎」で焼酎ですが、中国語で「焼」は強く熱することや加熱することを意味しま
   す。
   そこから、醪(もろみ)を加熱、沸騰させて作るという蒸留酒の基本操作を指し、中国語
   では蒸留酒を「焼酒(シャオジュウ)」と表現します。
   「酎」は濃度の高い「強い酒」という意味で、「焼酎」は加熱、蒸留した濃く強い酒とい
   うことになります。
   なお、ウイスキーやブランデー、ウオッカも同じ「蒸留酒」の仲間ですが、原料や製造工
   程の違いで区別されます。

 1-3 焼酎とことわざ
   鹿児島県は美味しい焼酎の宝庫でもあります。
   ここでは焼酎に関する鹿児島のことわざをあげておきます。

  1-3-1 焼酎(しゅちゅ)はヘソから下(した)い飲め。
  ・・・焼酎を飲む時には、飲んだ焼酎がへそから下にくるぐらいがちょうど良い。
     飲み過ぎは良くない。

  1-3-2 焼酎(しょちゅ)ん座は、二番小便(にばんしべん)で戻れ。
  ・・・焼酎を飲む時は、2回目の小便をもよおした時に帰りなさい。
     それ以上長居をするとろくなことはない。

2.焼酎の種類
  焼酎には製造方法によって甲類、乙類と泡盛という分類があります。
 
 2-1 甲類焼酎
   甲類は連続式蒸留機を使用した純度の高いアルコールを水で薄め、酒税法で規定する基準
   値、アルコール度数36%未満のもので、新式焼酎とも呼ばれます。
   甲類焼酎の特徴は、無色透明で焼酎独特のにおいも弱く、口当たりもサッパリしています。
   飲み方は果汁や炭酸で割ったサワーや酎ハイ、カクテルなどに用いられます。
   特に柑橘系のものと相性がいいです。

 2-2 乙類焼酎
   乙類は単式蒸留機を使用し、酒税法で規定する基準値、アルコール度数45%以下のもので、
   旧式焼酎とも呼ばれます。
   香りの高さと味わいの深さが乙類焼酎の特徴で、芋、麦、米など素材の持つ風味が焼酎に
   現われるように作られています。
   乙類焼酎のほとんどは本格焼酎と表示されています。
   これは乙類は甲類に劣っているのではなく、「乙なことを言う」、「乙な味」など「味わ
   い」が深い意味からなのですが、乙というマイナスイメージに誤解されないように「本格
   焼酎」と呼ばれます。

 2-3 泡盛
   泡盛も単式蒸留機を使用しますので、乙類焼酎の一種ですが、原料には一部の銘柄を除き、
   インディカ種のタイ米が使用されます。
   これを黒麹を使って米麹にし、それに水と酵母を加えて醪(もろみ)にし2週間ほどアル
   コール発酵させます。
   この工程は「全麹仕込み」といい、泡盛独特のものです。
   アルコール度数45%以下とされていますが、与那国島には60%の泡盛もあり、酒税法上は
   「スピリッツ類」に分類されます。
   また、泡盛には「古酒」に育つという魅力があり、ウイスキーやブランデー、ワインなど
   にもビンテージ物はありますが、泡盛はきちんと管理すれば、100年、200年の古酒に育て
   ることができます。

3.焼酎に関する小ネタ

 3-1 歌舞伎で幽霊の出る場面や狐火(きつねび)の場面の青い炎は布巾(ふきん)に浸した焼
   酎が用いられている。
   昔、灯明に使われた菜種油や安い魚油などは炎の温度が低いため、燃やすとオレンジ色に
   なります。
   青白い鬼火を表現するには燃焼温度の高いアルコールが必要です。
   そこで、燃えるほど度数が高く、安い焼酎が鬼火の演出用に選ばれました。

 3-2 江戸時代には焼酎は傷の消毒や薬としても使われていた。
   江戸後期に十返舎一九(じゅっぺんしゃいっく) (1765-1831)が著した『東海道中膝栗毛』
   には、2回ほど焼酎が登場します。
   最初の三島の宿は焼酎の売り子の声だけですが、四日市の宿場では喜多八が焼酎を買って
   足の疲れをとるため「よしよし、これで草履(ぞうり)が休まるだろう」と足にふりかけ
   て、後で足が酔っぱらったなどといって戯れる場面があります。
   このことから、当時は傷の消毒や疲労回復の薬としても焼酎が使われていたことが想像さ
   れます。

 3-3 「チンタラ」の語源は焼酎の製造工程から
   のろのろダラダラしているのを注意する際「ちんたらしてないで、さっさとしろ!」など
   と言ったりします。
   この「チンタラ」の語源は、焼酎を蒸留する際に中にある鉄釜が煮立って「チンチン」と
   いう音がし、鉄釜の中の焼酎は蒸発し、樽の方へ上昇。
   気体になった焼酎は冷めると液化して樽についた筒の中を通り、「タラタラ」と壺の中へ
   したたり落ちます。
   この蒸留時間の長いこと長いこと。
   そのさまを表しているのが「チンタラ」。
   そこからのんびりしてのろまな様子を「チンタラ」と言うようになりました。

 3-4 焼酎の「ハナタレ」は貴重な「ハナタレ」
   ハナタレとは「初垂れ」と書き、醪(もろみ)を蒸留する過程で、蒸留機の垂れ口から最
   初にとれる原酒のこと。
   「初垂れ」は焼酎製造工程の中で数%しか取れない非常に貴重なもの。
   アルコール度数が非常に高く、60度以上あり、各蔵はこれに割り水をして45度以下に調整
   しています。
   昔は市場に出回らず、製造にたずさわる蔵人が味わって飲んでいました。
   最近ではこの「初垂れ」を商品化する蔵元が増え、消費者も楽しめるようになりました。
   焼酎の旨味成分が凝縮され、口に含んだ時の刺激と、スカッとする爽快感が魅力です。

 3-5 焼酎を注ぐ時、かぽかぽと音を立てる「かっぽ酒」
   青竹の筒に焼酎や清酒をいれ、囲炉裏や焚き火で燗(かん)をつけたものが「かっぽ酒」
   です。
   お酒を注ぐ時にかぽかぽと鳴ることに由来します。
   「かっぽ酒」は宮崎県高千穂町が発祥の地とされ、もともと山仕事の合間に手近な青竹を
   切って節を抜き、水を入れて焚き火にかけ、お茶を沸かして飲んだことがはじまりです。
   「かっぽ酒」は竹が熱せられることで出る竹の油が焼酎に溶け込み、旨味や香りを更に際
   立てる飲み方として、最近では飲食店のメニューでも見かけるようになりました。

4.プレミアム焼酎ベスト3は「森伊蔵」「魔王」「村尾」の3M。
  本格焼酎ブームの際、プレミアム焼酎、幻の焼酎と呼ばれ、現在でもなかなか手を出しづら
  い価格の焼酎があります。
  ここでは伝説の「3M」と呼ばれる三銘柄をご紹介します。

  1位 森伊蔵
   鹿児島県垂水市、有限会社森伊蔵酒造
   創業は明治18年。
   福井のコシヒカリと低農薬の黄金千貫(コガネセンガン、サツマイモの品種)と鹿児島県
   垂水の名水を使用し、合掌造りの伝統蔵で、かめつぼ仕込みによってじっくりと熟成され
   た芋焼酎。
   甘みのあるまろやかな味わいが特徴。
   一升瓶(1,800ml)の希望小売価格\2,808(税込)ですが、アマゾンの販売価格は\20,300
   (2017/07/12現在)。

  2位 魔王
   鹿児島県錦江町、白玉醸造合名会社
   「天使を誘惑し、魔界の王へ最高の酒を調達、献上する悪魔たちによってもたらされた特
   別なお酒」が命名の由来。
   このインパクトのあるネーミングと芋焼酎なのにすっきりとした飲み口が特徴となって、
   その飲みやすさから女性からも支持される芋焼酎。
   一升瓶(1,800ml)の希望小売価格\3,240(税込)
   アマゾンの販売価格\8,400(2017/07/12現在)。

  3位 村尾
   鹿児島県川内市、村尾酒造合資会社
   三代目当主で、焼酎造りの天才といわれる村尾寿彦氏が原料調達から仕込み、蒸留まで一
   人で行っている。
   黄金千貫と白豊(シロユタカ、サツマイモの品種)を使用し、黒麹仕込みで、その飲み口
   は芋本来の自然な風味を感じさせてくれる焼酎。
   一升瓶(1,800ml)の希望小売価格\2,888(税込)
   アマゾンの販売価格\10,500(2017/07/12現在)。
   「森伊蔵」「魔王」と「村尾」でプレミアム焼酎の「3M」と呼ばれています。

5.個性豊かな焼酎の素材とストーリー性のある銘柄
  焼酎といえば芋、麦、米、蕎麦が主な原料として知られていますが、素材にある程度のでん
  ぷん質さえ含まれていれば、どんな素材からも焼酎を作ることができます。
  ここでは日本全国北から南まで個性豊かでストーリー性のあるご当地焼酎を紹介します。

 5-1 しそ焼酎 鍛高譚(たんたかたん)
   北海道旭川市 合同酒精(株)旭川工場
   爽やかな香りと風味は、女性を中心に人気が高い。
   名前の由来は、その昔「たんたか」という海の魚が、どんな苦しみも癒してくれる紫色の
   草(しそ)を取るため、河をつたい山に登り苦労の末持ち帰り仲間を助けたという、アイ
   ヌ民話から。
   実際にしそには、抗酸化作用、解毒作用をはじめいろいろな効用があるのをアイヌの人た
   ちは経験的に知っていたのでしょう。

 5-2 栗焼酎 ダバダ火振(ひぶり)
   高知県大正町 (株)無手無冠(むてむか)
   栗をたっぷり50%使用しているので、こってりとした味わいとふくよかな栗の香りが楽し
   めます。
   お湯割にすれば独自の香りがさらに際立ちます。
   社名の「無手無冠」は、冠におぼれず、飾らず、素朴な心を大切に、ひたすら自然を生か
   した地の酒づくりに徹していくという創業時からの酒造りの姿勢に由来しています。

 5-3 胡麻祥酎 紅乙女(べにおとめ)
   福岡県久留米市 (株)紅乙女酒造
   原料に胡麻を使用していることで、焼酎独特の臭みが消え、ほのかな胡麻の香りとまろや
   かな味わいがあります。
   胡麻のアクセントを楽しむなら、オンザロック、お湯割りがおすすめ。
   ラベルには「焼酎」ではなく、「祥酎」と書かれています。
   「祥」は「おめでたいしるし」という意味を持ち、「ヤケ酒のようにつらいことを忘れる
   ためではなく、嬉しい時やおめでたい時の幸せを運ぶお酒でありたい」との蔵元の思いが
   込められています。

 5-4 じゃがいも焼酎 じゃがたらお春
   長崎県平戸市 福田酒造(株)
   さつまいもの焼酎に比べると、クセがなくすっきりとした味わいで飲みやすい。
   オンザロックや水割りなどで楽しめ、色々な食事にも合いそうです。
   商品名の「じゃがたらお春」は江戸時代初期に長崎に実在した人物で、後にジャカルタへ
   と追放されたイタリア人と日本人の混血女性。
   ジャカルタから日本へ宛てたとされる「千はやぶる神無月とよ」からはじまり「あら日本
   恋しや、ゆかしや、見たや」と結ばれた「じゃがたら文」で悲劇のヒロインとして知られ
   ています。
   しかし、「じゃがたら文」は少女が書いたとしては流麗すぎ、また、お春の遺言書には、
   遺産の分配法や富裕層の証である奴隷も所有していたことが明らかになり、近年では偽作
   と結論づけられています。

 5-5 黒糖焼酎 れんと
   鹿児島県奄美大島 (株)奄美大島開運酒造
   まろやかで優しい飲み口でありながら、豊かな味と香りが広がり、スッキリとした後味は
   料理にも合います。
   商品名の「れんと」は、音楽用語のlento(伊)「ゆるやかに」という意味です。
   「れんと」は貯蔵タンクに一定の音響振動を与え(ベートーベン、モーツァルト、バッハ
   などのクラシック音楽を聴かせ)、熟成を促すという音響熟成製法をとっていることから
   名付けられました。

6.焼酎と俳句
  焼酎は一年を通して飲む人が多く、お湯割などから連想すると、「秋」か「冬」の季語かな
  と思われますが・・・。
  江戸時代の図解入り百科事典『和漢三才図会』には「気味はなはだ辛烈にして、つかえを消
  し、積聚(しゃくじゅ)を抑へて、よく湿を防ぐ」とあり、焼酎を飲めば夏の疲れが回復す
  ることが記され、焼酎は昔は暑気払として用いられていたことから夏の季語に。
  ここでは年代順に「焼酎」「泡盛」を詠んだ句を選んでみました。


  泡盛の香をこそめづれ小盃(小盃=こさかずき)
  田中田士英(たなか でんしえい) (1875-1943)

  焼酎を野越え山越え酌み交はす
  菅裸馬(すが らば) (1883-1971)

  焼酎や頭の中黒き蟻這へり(頭=ず)(蟻這へり=ありはえり)
  岸風三楼(きし ふうさんろう) (1910-1982)

  泡盛にちゆらさんといふ言葉よき
  後藤比奈夫(ごとう ひなお) (1917-)

  焼酎のただただ憎し父酔へば
  菖蒲あや(しょうぶ あや) (1924-2005)

  馬刺うまか肥後焼酎の冷やうまか
  鷹羽狩行(たかは しゅぎょう) (1930-)

  焼酎の強き透明夜空晴れ
  正木ゆう子(まさき ゆうこ) (1952-)


私も詠んでみました。

  ほとばしる三日月ライム芋焼酎
  白井芳雄

  焼酎に酔ひ寝ころべば星の降る
  白井芳雄


今回は「焼酎」についてのいろいろをお届けしました。

全体を通じての参考文献、出典:『新明解故事ことわざ辞典 第二版』(三省堂)、2016年4月
                ISBN978-4-385-13988-3

               『焼酎の基礎知識(食の教科書)』(エイ出版社)、2011年3月
                ISBN-13:978-4777919048

               『味も香りも百花繚乱!焼酎を楽しむ(NHKまる得マガジン)』
                (NHK出版)、2016年8月
                ISBN-13:978-4148272475

                飯田龍太・稲畑汀子・金子兜太・沢木欣一監修
               『カラー版 新日本大歳時記 愛蔵版』(講談社)
                ISBN978-4-06-128972-7

               『角川俳句大歳時記 夏』(角川学芸出版)
                ISBN4-04-621032-X C0392

                富安風生編集代表、責任編集
               『平凡社俳句歳時記 夏』(平凡社)
                ISBN978-4-582-30518-0

                           白井明大・有賀一広
                          『日本の七十二候を楽しむ−旧暦のある暮らし−』(東邦出版)
                ISBN978-4-8094-1011-6 C0076             
  
           参考サイト:フリー百科事典ウィキペディア(Wikipedia)



最後までお読みいただきありがとうございました。
   
                   (株)技術情報センター メルマガ担当 白井芳雄

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