【習得知識】
講演者は鉄鋼メーカーにおいて40年にわたって鋼の水素脆化の研究や実務に関わってきた。この経験から講演において以下の事が習得できるようにしたい。
(1)水素脆化の特徴と何故水素によって脆化するのかの理解
(2)各種水素脆化試験法の特徴と留意点、問題点の把握
(3)水素ガスからの水素吸収と引張および疲労における脆化現象の理解
(4)鋼およびステンレス、高合金、アルミニウムなど各種材料の水素脆化とその違い
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【講演の概要】
水素はごく身近に存在する元素である。水という分子となって空気中にも漂っているし、私たちの体の中にも存在する。また、原子番号が1で陽子と電子からなる最もシンプルな元素である。単純すぎて物理的な分析手法がほとんど使えない。また、材料中を高速に動き回り、その位置を特定することは困難である。例えば、鉄中では室温でも1秒間に鉄原子5万から50万個分も動く。
身近にあるために、材料を水素から隔離することは至難であり、腐食反応によって水素を吸収するし、溶融した鉄が水分子を分解して水素を吸収する。鉄鋼材料では、高強度鋼ほど水素脆化しやすいので、高強度鋼の用途拡大が著しく制限されている。
本セミナーでは、鉄鋼材料の水素脆化の歴史を始め、水素脆化の基本的な特徴や事例および脆化のメカニズムについてやさしく解説する。
また、脆性を防止するための材料選定や評価における留意点などにも言及する。また最近注目されている燃料電池に関わる高圧水素ガスによるステンレス鋼や高合金、アルミニウム合金の水素脆化、さらには、トラブル事例と対策まで解説する。
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【プログラム】
1.水素脆化の基礎
(1)はじめに
@水素脆化の歴史
A水素脆化の特徴
(2)鋼への水素の固溶と拡散
@水素の固溶度が低いのはなぜか?
A強度によって水素量や拡散速度が変わるのはなぜか?
(3)水素源(水素はどのようにして鋼に侵入するのか?)
@水素源として鋼の腐食
A大気中の水分の溶鉄への侵入
B水素ガスからの侵入
(4)水素脆化のメカニズム
2.水素脆化の評価方法と留意点
(1)水素量の分析
@トータル水素量の分析方法
A拡散性水素量の分析
B水素源となる環境の評価方法
(2)水素拡散係数の測定方法
@電気化学的水素透過法
A水素放出曲線から水素拡散係数を求める方法
(3)水素脆化の評価方法(特徴や留意点)
@引張試験:SSRT(Slow Strain Rate Testing)
A定荷重試験
B定歪試験
C破壊力学試験
3.高圧水素ガス中における水素脆化と評価技術
(1)高圧水素ガス中における曝露試験
@曝露試験で評価できることは?
A評価例「一定荷重における鉄鋼材料のき裂進展におよぼす水素の影響」
(2)高圧水素ガス中における引張試験
@引張試験で評価できることは?
A評価例「各種材料の引張強度におよぼす水素の影響」
(3)高圧水素ガス中における疲労試験
@疲労試験で評価できることは?
A評価例「繰り返し荷重におけるステンレス鋼のき裂進展速度におよぼす水素の影響」
(4)水素ガスを用いない評価試験
@高圧容器の評価技術
A拡散性水素の分析
4.その他金属材料の水素脆化
〜選び方・使い方のポイントを含め〜
(1)フェライト系ステンレス、オーステナイト系ステンレス鋼の水素脆化
(2)高合金、ニッケルの水素脆化
(3)アルミニウムの水素脆化
5.トラブル事例と対策
6.質疑応答
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− 名 刺 交 換 な ど −
セミナー終了後、ご希望の方はお残りいただき、 講師とご受講者間での名刺交換ならびに講師へ個別質問をお受けいたします。
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